ネトフリでこのホラー観ましたか?

今日は映画館でサメ映画をハシゴという夏らしいにも程がある過ごし方をしてしまいました。
『ケージ・ダイブ』、ファウンドフッテージ形式でしかもメチャクチャ嫌な気分になれるという新鮮なサメホラーだったのでみんな観るといいと思います。

それで僕の場合普段休みの日映画館に行かない場合はネトフリでダラダラ映画観ている場合が多いのですけど、これラインナップはなかなか良い一方で面白い映画を探すのが大変なんですよね。
自分はホラーに関してはそこそこ心得があるつもりだし、夏なのでなにか皆の見逃しているかもしれない面白いホラーを紹介していければというのが今回の趣旨で。もうこれは皆観ているだろうというのは今回はスルーしていきますのでご了承ください(『残穢』、『ミスト』、『REC』『パラノーマル・アクティビティ』、どれも傑作だけど観ましたか?)。
ホラーってやっぱその性質上出来れば映画館で観てほしいのですけど、そうは言っても都内ですら2、3館でしか公開してない、タイムテーブルがほぼレイト一日一回、なんてことも珍しくないジャンルでもあるので、こうして電気を消した部屋で気軽に楽しめるようになっているのはそれはそれでいい事と思います。
めどいので画像貼ったりとかはないですけど気になったら検索してみてください

そういえば昨年書いたPOV/ファウンドフッテージ縛りの記事もあったので置いておきます(ネトフリにはまだ無いやつもあります)


ネトフリのサイト見ながら書くから新しく追加されたほうからいく


『お化け屋敷列伝/戦慄迷宮MAX』
ええとコレから始める時点でフザけてるだろ?というご意見は重々承知の上なのですけど、それでもあえて言うと、この映画は面白い。
お馴染み富士急ハイランドの日本一怖い/長い常設お化け屋敷こと戦慄迷宮。あれは怖さレベルに複数の設定があって、イベント時はそのより怖いバージョンというのをやったりするのですけど、この映画はその設定はあるけどやらないというレベルマックスのところに挑戦して貰ってその様子を撮るというドキュメンタリ的内容。あるいは90年代の過激バラエティ番組か。
日本ってお化け屋敷までガラパゴス的なところがあって、その独自の進化の極点を見られるというのがひとつ。演出・シチュエーション、これ絶対怖い/かっこいいと唸らされる場面がいくつも登場する。挑戦者にカメラを持たせてPOV形式で見せるのも楽しいひと工夫かなと。
もうひとつは、我々ホラーファンというのは、勿論怖いものを見るのが好きなんだけれど、同時に(嫌らしくも)恐怖する人を見るのもまた同じ位好きということですよね。端的に言って、怖がる人というのは面白い。その演技としてじゃなく本当に心の底から怖がっている様子というのをここまで見せてくれる映画というのもないでしょう。また逆に、挑戦者の中で一人度胸MAX人間の方がいて、この人は我々とはまったく異なる世界観の中で生きているんだなというのがはっきり見えてそれも見もの。


『アパートメント:143』
『リミット』等で個人的にも大好きな名監督ロドリゴ・コルテスが手掛けた心霊POVもの。
やはりこの人の映画が単なるジャンル的なお約束物語に終始するはずなく、みるみるうちに意外な方向に舵を切っていく。
精神分析というか統合失調とオカルトの関係の話ってよく言われるけど、それをこのスタイルで語ろうとするのが偉い。捻った物語を語るのには工夫を要するジャンルではあるので。
キャラクターがおざなりにされがちな(観終わった後登場人物の名前が全然浮かんでこないとか)ところのあるジャンルの中で、ここまではっきりとキャラ立ちが感じられて彼らへの愛着も湧くというのは、ストーリーテリングの秀逸さを証明してもいる。
この手のもの好きな人にこそおすすめしたい一品。


『パラノーマル・アクティビティ第2章 TOKYO NIGHT』
有名シリーズの全然知られていない続編。これパチモンじゃなくてちゃんとオフィシャルな続編(というかスピンオフ)なのですよ。
手掛けるのは、『放送禁止』シリーズなど日本のモキュメンタリといえばこの人、な長江監督。
勿論シリーズ特有の手法…カメラを仕掛けて、登場人物たちが寝ている間に事が起こる…をやっているのだけど、しっかりJホラー的な文脈をそこにミックスしている。
生々しいお祓いのシークエンスであったり、長い黒髪を垂らした女幽霊というイメージの変奏形態のような"それ"など。
最後の最後のシークエンスだけは蛇足と言わざるを得ないけど、その直前の、住み慣れた家が闇に落ちた途端ゴーストハウスと化すという箇所は本当にぞっとさせられるものがある。


『エビデンス-全滅-』
砂漠の真ん中のガソリンスタンドにいくつも死体が転がっており、ビデオカメラが残されている、その映像から一体何が起きたのかを読み解く…という内容。
面白いのは、ファウンドフッテージスタイルを主流にしつつ、その合間に捜査チームが映像を検証していくパートが挿入されること。
といってもどっちつかずな内容という訳ではなく、発見映像の携帯カメラで廃墟を歩いていくところなどはかなり生々しい質感ですばらしい。
そしてオチ、反則スレスレながら、こう来たか!と唸らされる。というのは、超低予算で作ったPOV/ファウンドフッテージホラーで一発当てて新人監督デビュー、というのが流行った世相を見事に反映させていて…これ以上は書けないか。
これもまた通好みというか、この手の映画好きな人こそ楽しい映画でしょう。


『武器人間』
これはかなりハチャメチャなPOVホラー。
時代設定は二次大戦中で、ソ連軍の兵士がナチスの極秘施設に潜入していくが…という、POV形式でこの話、ありだったんだ!的な驚きの内容。
時代設定の為かカメラの手ぶれ補正などはなく、劇場のスクリーンで観た時は中々(三半規管に)クるものがあった。一人称過激アクション『ハードコア』という映画がちょっと前にやったけど、あれレベルの揺れを想定して下さい。
話はタイトルでほぼ言っているというか、勿論(?)ナチスが兵士と武器を融合した改造人間を作っていたというもの。
しかしこの武器人間たちのビジュアルがどれもケレン味に溢れ素晴らしい。それ、意味あるの?的なデザインの、ショッカーの怪人をエグい方向にふた回り強化しました的なバケモノが次から次へと登場。どんどん行っちゃいけない方へいけない方へ突っ込んでいってくれる"よく分かってる"展開も好印象。
作中、ナチスの博士が戦争を終結させるための驚きのアイディアを提示するのだが、その箇所は本当に最高。あらびきだなぁ~、って。


『ラスト・エクソシズム』
これもまた玄人向けファウンドフッテージの枠かな。
悪魔祓いをする神父を追ったドキュメンタリーの撮影、というところから入っていくんだけど、最初から意表を突く仕掛けを打ってくる。
この神父のやっている悪魔祓いというのがなんとイカサマ。そもそも神父は悪魔なんて信じていない。悪魔憑きなんてのは精神疾患に過ぎないと。
そこでどうするかと言えば、様々なトリックを使って超常現象を自分で演出し、マッチポンプ的に自分で解決、それを見て憑かれている本人がああ悪魔はいなくなったという風になれば心因性の疾患も治まり解決、というわけ。
それをモキュメンタリ=虚構のドキュメンタリとして見せるというところにこの映画の面白さがある。モキュメンタリの中でモキュメンタリを撮る。
虚構を前提にした真実、という構造が二重になっているわけだ。
その中で描かれる本当の本当とは何なのか?というところがこの映画。
上で書いた『エビデンス』と同じくジャンル批評的なところに突っ込んだ語り口の面白さがある。


『パラノーマル・アクティビティ3』
『パラノーマル・アクティビティ4』
これ、続編ちゃんと見てますか?というところで。
上でも書いたが本当に優れたシリーズなのだよね。
自分は全7作映画館で観ているけど、続編の中で特に優れている、大好きなのがこの二本。
ヘンリー・ジュースト&アリエル・シュルマンは『ナーヴ』『キャットフィッシュ』など、インターネットビデオカルチャー、ドキュメンタリへの批評を深く盛り込んだ作品を手掛ける切れ者監督コンビ。
この二本では仕事をキッチリこなし、映画作家としての腕の良さを見せつける。
3は単純に恐怖映画としてシリーズ中最高の出来。クライマックス、「勝手知ったる家が闇に沈んだ途端にゴーストハウスに変貌」展開のシークエンスは圧倒的に怖い。
4は一転シンプルかつミニマルな内容で、一作目に回帰したかのような引き絞った怖さで見せてくる。
と言いつつ新機軸もあり、ウェブチャットカメラを巧みに利用した志村後ろー!的カメラワークが新鮮な怖さ。


『トライアングル』
ヨットで海に出て遭難、通りがかった大型客船に迷い込む…というゴーストシップ的なストーリー。
船内には謎の殺人鬼がいて大変なことになる。謎の?いや、あいつどこかで見たような…。
ちょっと何も書けないが驚愕の展開を見せる一品。SF的ですらある。
ある種宗教的な話でもあって、話の展開や登場するモチーフの意味であるとか、主人公の選択は正しいのであろうか?とか、観た後かなり腹に残る深みを持った内容。


『フッテージ』
スコット・デリクソンのオカルト路線最高傑作。
引っ越した家で見つけたフィルムを再生すると凄惨な内容の一家殺人ビデオ。しかもそれがいくつもある。
不穏でおぞましくしかし目を離せなくなるカッコ良い画がバンバン出てくるが、ここでは音楽に特に着目したい。
オリジナルの劇伴のサントラはノイズ/実験系ホラーサントラの傑作であるし、その他の楽曲についてもUlver筆頭に異質すぎるチョイスで映像を更に凶悪なイメージに磨き上げる。
カタストロフィックなクライマックスでかかるSunn O))) & Borisの圧殺ドローンは崇高で神々しくすらある。映画館で観た時震えたなあ(音の振動で)。


『アフリクテッド』
過去記事でまるまる一本書いたのでこれを読んでくれ。
知られざる傑作。


『ロスト・ウィークエンド』
冷めた仲を修復しようと海沿いにキャンプに向かった夫婦の顛末を描く。
何とも説明の難しい映画。
何しろ様々なことが起こるのだけど、それが結局何であったのかは分からないし、そもそもがすべて偶然と言う事もできる。
ただ、その積み重ねで人は壊れうる。そういうことを描いている。
閉塞感に満ちて嫌な空気が映画の中に充満しており、じっとりと粘つく怖さがある。
観て判断してくださいとしか言えないが観た時には手遅れという難しい作品。


『フリーキッチン』
これをホラーと言うべきかわからないけど、ジャンル的にはここに分類されてるしなあ。まあそれはそれとして是非観て頂きたく。
福満しげゆき原作のミニマルな邦画という、今回挙げている中では異色な一本かな。でも素晴らしい出来。
お父さんが知らない女の人を連れてきた。
お母さんが料理がヘタだから、この人に料理の先生になってもらうんだよ。
しばらくしてその人はうちに来なくなった。お父さんも帰ってこなくなった。
それからお母さんは、毎日僕に、お肉の料理を食べさせる。


『死の恋人ニーナ』
昨年のベストに挙げたのでそちらで。
毒と笑いと切なさの青春ホラー傑作。


そんな感じでわぁっと挙げてみましたけど、どうですかね。観たことないやつありますかね。
最初普通にネトフリで観られるマイナーないい映画っていうのをジャンル関係なく挙げようと思ったのですけど、そうするとキリがないので今回はこんな感じに。
機会があれば少しづつそういうのもいきたいですけど。

それではよろしくどうぞ
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Ex Eye 『Ex Eye』

『君が生きた証』という映画を観たのですが、これ是非観てほしいと思います。
息子を亡くした父親が遺品整理の折に息子の作った曲のデモCDを見つけて、それをバーなどで歌い始めるという内容。
なのだけど、中盤さり気なく、何でもない事のように、とんでもない情報を開示してくる。
それによって今まで見せてきたものの意味が全部変わり、重い問いが投げかけられる。
これはネタバレしてしまうともう全く意味のなくなってしまう話でもあるんで、何も情報を入れずに観てほしい。
タイトルから想像させるような真っ直ぐな感動話では全くないけど、必ず観て良かったと思うはず。
人前で演奏しようとすると吐いてしまうナイーヴなギタリストとしてアントン・イェルチェンが出ていたりして、今にして、ということで、その意味でもタイトルが刺さってくる。
おすすめ。


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exeye.jpg
このレコメンドイフユーライクのところのメンツが分かり易っ!というか、この一団聴いてる人、いるいる!って感じがしてかなりいいと思います

わりと出たばかりで、Ex Eyeというバンドのファースト。セルフタイトル。
ジャンルはエクスペリメンタル・メタルとかわりと何でもあり感のある言葉で言われているけどまぁ一筋縄でいかない内容。
それもそのはずで、このバンド、メンツが…

Colin Stetson - alto & bass saxophones
Greg Fox - drums
Shahzad Ismaily - synths
Toby Summerfield - guitar

そ、このバンド、今やスタジオ仕事などでも引っ張りだこの感のあるコリン・ステットソン、Zsのほか少し前に来日したソロでも衝撃の演奏を見せるグレッグ・フォックス、ふたりが中心になったニューバンドなのですね。
脇を固める(いやフロント楽器に対してこの表現もおかしいが)二人もプロデュースやスタジオワークのベテラン。
コリンとグレッグが同じバンドで演奏するというのは事件には違いないのだが、一方で音楽性というところから見ればよく分かる。
二人ともジャズをルーツのひとつに持ちつつあらゆるジャンルを手掛け、自身の表現としては肉体を使って全く新しいミニマルミュージックを生み出している。

アルバムは4分のイントロに続いて12分のトラック×2、8分のトラック、と、ロックと思うとかなり潔い内容。
しかし聴いてみればやはりこの人達の生み出す音楽、普通のものでは全然ない。
4つの楽器がそれぞれ複雑なフレーズでもって絡みあいながらひとつのモチーフを形作り反復と変形を繰り返していく、というのが基本かな。
ただ案の定というかとんでもない超絶技巧だ。精密機械のような各楽器の噛み合い。
サックスの生むトライバルな響きやシンセによるエレクトロな感触というのもあって、一息には説明できない音。
メタルというかロック的な明快な展開をする箇所もあればアンビエント的に各楽器のレイヤーを幾重にも折り重ねて音を作る部分もある。
たぶんこれは最初にこういう音を作ろうという設計図ありきの音ではないんだろうな。
ガッチリ作り込んだもので、この4人で技術的に/音楽性的にここまでできますけどっていう風なところを感じる。
グレッグのいるZsがそうであるようにこれもまたミニマルという方法論を取り入れた音楽の新しい展開なのではないかな。
意外と難解さはなくスルッと入って来るが強力な質量でズンとくる、そしてフィジカルな気持ち良さが一番に来る。
人間技と思えないドラミングと重厚なノイズヴェールの織り成す"Anaitis Hymnal; The Arkose Disc"が特に良い。


続きに映像を貼っておきます

Ensemble Phoenix Basel plays ILIOS 『El anillo que sujeta el mundo de la forma al mundo de la idea』 D'incise 『Ukigusa』 牛尾憲輔 『Inner Silence』

※7/13 『Inner Silence』について書きたいこと全然書けてない気がしたので追記しました…


昨年の映画のソフト化が出そろって来たので先日何本か買ったのですけど、やはり『怒り』、すばらしい映画だなあと。
メイキングやインタビュー、キャストコメンタリ等色々入っていたのを一通り見てみて、確かにこの映画は役者たちの演技が素晴らしい映画ではあるんだけど、その言い方では一段足りない、必要な箇所にピンポイントで限りなく本物に近い感情を置いていくか?そのための作りっていうのを綿密にやっているんだなあと。


HwOb8xsL.jpg


今回は上の二作は例によってart into lifeで買えますけど。

Ensemble Phoenix Basel plays ILIOS 『El anillo que sujeta el mundo de la forma al mundo de la idea』
タイトル、長すぎる!
メイリノとの共作盤でちょっと紹介したのかな?ILIOS イリオスはちょっと正直プロフィールとかがあまりよく分からないのだけど、やっているユニットのMohammad ムハンマドでも個人名義でも音の方向性は基本的に変わらず。かなり硬質で無機的なドローン。
で、そのやっているユニットのほうのムハンマド、独特なのは編成。
3人のときと2人のときがあって、どちらもチェロやバイオリンのようなクラシカルな弦楽器とエレクトロニクスの組み合わせになっている。
そこで今回の作品。そのイリオスの作った楽曲を現音アンサンブルと一緒に演奏するというもの。
総勢11人の編成はバイオリンやコントラバス、クラリネット、フルートにエレクトリックギター、キーボードなど、そこにオシレーター/フィールドレコーディングでイリオスが加わっている形。
これ聴いていて思ったのが、拡張版のムハンマドだなということで。
一曲42分でもう全編ストイックなチェンバードローン。全体がひとつの持続音となって、楽器の輪郭は見えない。ほぼ電子音に聴こえるくらい。
ドローン系ではわりとありがちなことながら、これを作曲ってどういうことなの…ってなるのだけど、音のレイヤー的な変化は結構豊かで、最終的には相当分厚く大きなうねりを持った音に変化していく。
こう生ドローンのおいしい部分、空間の響きも込みで鳴っているものの感触そのものを楽しむという音源かなと。


Ensemble Phoenix Basel、何気にギターがマウリツィオ・グランディネッティなんですね


D'incise 『Ukigusa』
お馴染みD'incise(読み方分からない)の最新作はなぜか純和風のアートワークに大量のオマケ付き、内容はプリペアド・ビブラフォンを使った自作曲の演奏という、今までの感じとだいぶ異なるもの。
とはいえ聴いての感触は彼らしいミニマル。もともとスネアとかの物理的な音響を用いている事、加えてよく組んでやっているドラム/パーカッションのCyril Bondi シリル・ボンディも参加しているとあって、パッと見の感じに反してあっ、これはD'inciseだな、という音になっている。
スコアが付属しているのだけど、これが演奏の様子が想像できるほど具体的な内容で、プリペアリングには何を用いるか(アルミニウムや発泡スチロールなどの記述がある)、BPM、マレットや弓など演奏に用いるもの、音程までCDEと普通に書いてある。
もっと抽象的なグラフィックスコアみたいなもので半即興的に演奏するのかと思っていたので、ここまで音楽的にカッチリ作っているということに失礼ながら少し驚いた。
聴こえてくる音はプリペアドがうまく作用している感じ。様々なタッチの点描めいた物音のほか、電子的なフィードバックのような持続音(弓を用いていると思われる)、キリキリという金属音など、意外にも豊かな音がしかしシンプルに静寂の中で時を刻んでいる。
アコースティックな響きの丸みもあって…自然音、環境音のような非人格的なとこもあり…なんかアレですね。ししおどし的な感じというか。なるほどこのアートワークは結構音と結びついているのかなという。
そんな用途で流しておくのもよい気がする。


この映像がとてもD'inciseらしいなと思っている


牛尾憲輔 『Inner Silence』
これがちょっと特殊な音源。
一番最初に書いた通り昨年の映画のソフトをいくつか買っていて、その中にアニメ映画の中では最高だったなって思っている聲の形のBDもあって。
これのサントラについてはここでも何度か書いている通りで、斬新なノイズ/実験音響が作品のテーマ、手触りと深く呼応しあう、昨年のベストサントラだろうと思っている。
で、今回、BD化にあたってサントラ未収録の新規音源が収められていると。まあ聴いてみたんだけど…。
ちょっとしたオマケ、ボーナストラック的なものだろうと想像していたら、これがとんでもない。
サントラCDに収録されなかったアウトテイクではなくて、そもそもCDに収録するのが不可能な音楽作品なのだよね。
どういうことかというとこれ、サントラのパイロット版的に作成された音源をベースにしたもので、当初は映画の上映中ずっと一曲を流し続けるという構想があったらしい。で、この映画、二時間ある。つまり…二時間一曲のアンビエントドローン作品がこれ。
これが他のジャンルであれば、何枚組にでもすればいいのだけれど、ドローンというジャンルは、途切れず持続していることが所与の条件であるために、フォーマットの収録限界に敏感だ。平たく言って、80分以上のドローンの楽曲はCDフォーマットでは通常作れないということになる。
今作がそのフォーマットのおかげで二時間ものドローン楽曲を可能としていること、これだけでまず価値ある音源と言えるように思う。

トーマス・ブリンクマンの『1000 keys』はピアノの音を解体再構築して作り上げられた覚醒的なアコースティックテクノだったけど、この『Inner Silence』も似たかたちで作られている。例のピアノの機構が働くノイズを精密に捉えた演奏とアンビエント的なヴェールのような持続音が組み合わさっているのだが、その持続音の部分もピアノの音を加工して作っているとのこと。
音全体の感触はウォームでくぐもったような…多少水温の高い水中に潜っているような、独特なもの。あるいは、両耳を手で塞いだときに聴こえる音に似ていると言えるかもしれない。ここから得られるイメージはいろいろあって、例えばあの両耳を手で塞いだときの音というのは鼓動とか血流の音であって、あれは胎児が胎内で聴いている音にも似ているそうだ。この映画はある意味では生まれ直しの物語、ある瞬間に社会との繋がりがドラスティックに結び直されたことを知覚するという物語であるということ。
あるいは、オルガン、という言葉の語源は、人体の器官であるということ。ピアノをそのように捉えた音楽とも呼べるような。
もうひとつが、キャストインタビューで言っていたことのうちに気になったものがあって、劇中に花火を見るシーンがあるのだけど、そこで主人公たちがコップに飲み物を持っている。花火の振動で飲み物に波紋がたつ。それで、あ、音は分からないとしても振動は、身体で感じる振動は分かるんだ、とそのキャストの人が言っていて、たぶんこのドローンが志向するのもそういう音響であるとうこと。

この作品は映画の音声トラックとして作られているので、BDへの収録の形も本編の音声トラックとして聴くというものになっている。ここが重要なのだけど、劇伴ではなくて音声トラックだ。つまり、サイレント映画形式、しかも映像と基本的には同期しないアンビエントドローンが鳴っているのみ、という。
時折の瞬きのような音の変化に偶然的に映像が噛み合うような瞬間にはっとさせられつつも、基本的な体験としては…あれに似ているかな。ヴィルヌーヴの『メッセージ』。音が映画の中の時間間隔をも捻じ曲げるような。
『インターステラー』で同じ事をやっていたように記憶しているけど、5.1chで制作されているということも面白い。それを存分に味わうために、ステレオヘッドフォン/イヤフォンを用いてサラウンド音響を再現するという音声モードがBDに入っていて、包み込むような音響にどっぷり浸かれる。
映画的な意味でも相当に実験的でありつつ、単に音楽として聴いても素晴らしい完成度。
そしてこれで観ていて本当にいい、美しい映画だなと改めて。
というか、この音の中にあってこそ、アニメーションの美はプリミティヴに立ち上がる。すなわち、そう振る舞うこと-仕草がすべて-そう存在するということ、意味から離れて、動くこと-アニメイテッド-によって生きるということ、つまり、こう捉えることはできないか?この子供たちはドローンで踊っているのだと。そこに現れるのは生きること=踊ることという、アニメという表現そのものの孕むひとつの究極的なテーゼであるはずだ。
だから僕はこの映画のクライマックス、あの美しいノイズの溢れるクライマックスにどうしようもなく涙してしまうのだろうな。すべては音楽で、音楽はいつも鳴っている。生はもう祝福されている。
本編のあの音の感じが好きならこれは買って損しない、聴く価値のある音源。ぜひ。

Michalis Moschoutis 『Nylon』

え~、ハイ!(笑)
久しぶりにここを訪れてみたら戦車を選択せよ。戦闘開始!などと書かれたバナーが下からせり上がってきたりして、あっ、なんか、自動的にそういうサイトに改造してくれるんだ!と思っておりました。
ひと月くらい空けていたのは普段通り仕事で死んでたってのもあるんですが、単純に新しい音楽をほぼ聴いてなかったからですかね?
あとsteamサマーセールもあったし笑
自分がやったやつだと…セールでなくとも300円で買えるのですけどone night standというゲームは非常におすすめです
痛飲した翌朝隣で寝てた知らない女の子と朝を過ごすという話なのですが、リンクレイターかソフィア・コッポラが超低予算で短編を撮ったらこうなるだろう、という感じ。
ロトスコープ風のアートスタイルやトレモロがかったギターのみの微睡みのサウンド等、あらゆる要素がひとつの方向を向いていて作品として完成されています。
ビターな内容ながら、ひとつの朝にさえ12もの結末があるということそれ自体に胸の締め付けられるような美しさがあります


映画もいっぱい見ていたのですけど、ローガン!パトリオットデイ!22年目の告白!ハクソーリッジ!どれも素晴らしかったのではないでしょうか。
洋画の三本はあえて僕が推さなくてもみんなが絶賛してると思いますが22年目の告白。
これは韓国のオリジナルのほうも結構好きだったのが、今回完全にいまの日本で公開して意義のある作品へとチューンされたリメイクでとても良かったなと。
震災と少年A。95年というのはやはり日本にとって特異点的な…自分もその時を生きていたからそう思うのだけど…年で、そこと今が直結している、95年に生まれた傷がいま浮かび上がる、それってすごく語るべきお話ではあるなと。
自分的にはその95年の回想シーンでテレビからシャ乱Qのシングルベッドが流れていたところでワリと満点!ってなったのですが。


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holo5-Cover-900.jpg

そんな昨月聴いた数少ない中でガツーンとやられたのがこれ。
タイトルはナイロン弦から来ているのかな?
LPちょっと手に入り難いけどデータだとブームカットで買える

音源は出たばかりで、レーベルのホロタイプ・エディションズというところもよく分からず、Michalis Moschoutisという人もこれが1枚目で全然情報が分からず(そもそも名前の読み方が分からん、ミハリス・モシャウティスで合ってます?)。ギリシャの人ということは辛うじて分かりますが。
あっ、レーベルはこれ自分でやってるとこなのか。公式サイトに載ってる。

でなんかちょっと以前のPANっぽい感じにてもう目を引き寄せられる微妙な気持ち悪さのジャケから素晴らしいこのアルバム、内容は近年の氏の実践をまとめたもの。
その実践というのは、アコースティックギター…クラシックギターの音響可能性を極限まで引き出すということ。


こう、アコースティック楽器の可能性を引き出すための特殊奏法/演奏というと例えばプリペアドピアノ的な、現代音楽の一派の実践を思い浮かべると思うけど、そういうのってある種アカデミックな、スーツキチッと着てホールで、繊細で音楽的な手つきで…みたいなイメージしますよね。
それ、そのイメージしたままで。ストップ。オーケーそのまま。
この人の演奏見てほしい。



どうですか?思ってたやつとかなり違いませんか?

バキバキとピッキングのアタックノイズのみが鳴る破壊的なピッキングはかなり衝撃的なものがあるけど、音源は全編こんなノリが続く。
聴いての印象としては、楽器の悲鳴が収められている。これに尽きる。

主たるアプローチは先のようなアタックノイズ演奏、それと複数の弓による弓弾き。
どちらも楽器への容赦のなさにまず驚く。
楽器に過剰な負荷をかけることによってノイズが生まれる、というのは、自分も演奏者として感覚的によく分かるのだけど、そこのみにフォーカスしているというのはやはり異常な…。
以前にもゴールデン・セレネーズについて同じことを書いたかな?楽器破壊というのはある面から見るとひとつの奏法アプローチに過ぎない、そしてあらゆる演奏とは緩慢に楽器を破壊していくことだ、というシンプルな一面の事実。
演奏の過程において楽器が損なわれることを厭わない時にここまで凄まじいサウンドが得られる、それを至近距離から収めたのがこのアルバムと言えるのかなと。

どれも過激きわまるサウンドで耳を拷問しアコースティックギターという言葉へのイメージを裏返すような凄まじい音。
自分としては"Braced Pair"のどう考えてもナイロン弦からこんな音は出ないだろうという弓弾きノイズが特に気に入った。

もうひとつ映像を貼っておきます


Strotter Inst. 『Miszellen』 Phurpa 『Gyer Ro』 『Gyud』

映画の『メッセージ』観たのですけど、非常に感動しました。
ヴィルヌーヴ監督は前作からヨハン・ヨハンソンと一緒にやっていますけど、このためだったのね、という。
というのは、ミニマル、ドローンという音楽が、音楽本来の、時間芸術というところに疑義を呈すような音楽であるからで…。
そのことを全面に押し出して演出された本作は物語のないように沿うように映画自体も特異な時間間隔を持った作品になっていますよね。
それでオープニングとエンディングが同じ曲になっていて映画が輪っかの構造になっていますけど、その曲がマックス・リヒターのあれっていうのもまた…原作で使ってた理屈からですよねあれは。
あと大澤真幸の『革命が過去を救うと猫が言う』『恋愛不可能性について』とかを思い出して、他者を愛するっていうことの奇妙な感覚を絶妙に表現しているなとも思って。
「いつかあなたを愛するということを今までずっと忘れていた」っていう、そこにおいて本作は普遍的なラブストーリーでもあるなと感じました。

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そんな感じで異端ではあるけどドローン/ミニマル系二作。
どっちもArt Into Lifeに置いてあるので探してみてください

strotter_2017053100014347c.jpg

Strotter Inst.ことChristoph Hess クリストフ・ヘス、以前にも一度書いてるけど、ターンテーブルを用いて演奏するアーティスト。
ただそこで用いられるターンテーブル/レコードは度を越して逸脱的な改造が施されている。

今回のLP二枚組はHallowgroundなるレーベルからリリースされたばかりの最新作で、この人がリリースがそこまで多くないのもありフルサイズの作品としては本当に久々な気がする。
今回の作品は曲ごとに元ネタが表記してあって、まぁ全部が分かるわけではないのだが、それでも中にはNurse With Wound、P16D4、Foetus、Ultraなんて表記もあって、微妙に趣味の分かるような一貫性のあるチョイスがおもしろい。
元ネタ表記があるところからも推して知るべしなんだけど、今回は元の曲を結構生かした音作り。印象的なギターフレーズが繰り返されていて何だろうなと思って調べると、そこで使われているDarsombraという人はギターとベースを一人でどんどん重ねながら音楽を作っていくアーティストだったりとか。
上の映像見てもらえば分かる通りで、今までは物理的な運動の記録にフォーカスしていたことを思うと、今回の作品は新鮮。
もちろん彼らしい無機的で歪なループ/ビート感覚が全体を支配してはいるのだが、そこに元ネタとなっているアーティスト達のこれまた歪な世界観が交わって独特なダーク&ディープミニマル音響を生み出している。
更にはピアノやチェロの奏者が加わっているトラックもあり、これがまたダークな演奏でアルバムに彩りを加える仕上がり。
彼らしい無骨でロウな響きの物理ミニマルに既成音楽の解体/再構築の要素が大きく加わったアルバムで、新しい領域に踏み出したなぁという印象。
しかしこの人のLP聴いてて思うのが、演奏風景知ってるだけに(ライブで何度か見た)、あれをレコードで聴いてるっていうのが不思議極まりない状況だよなあっていう。


密教ダークリチュアルへヴィボイスドローンPhurpaの最新リリースは二枚組『Gyer Ro』とライヴ盤『Gyud』。
例によっていつもと同じ感じのアレなのだが、それと分かっていても圧倒される凄まじい迫力の内容。
『Gyer Ro』、一枚目から78分一曲の超濃厚パフォーマンス。低域でうねる声明がほとんどを占めるところはこの人達?の音楽の核を取り出したようなトラックと言えるのではないかな。
二枚目では三曲が収められている。トーンとしてはほぼ同じながら独特なパーカッションやディジュリドゥ的な管の響きがフォーカスされる箇所があって、儀式めいた構成をより強く感じさせる。
"Hundred Syllable Mantra"なる曲の声明は無数に重なっているような途轍もなく深く潜るような響きがある。どのように録音しているのだろう。
『Gyud』は2016年のチューリッヒでのライヴを収録したもの。67分1トラック。
で、なんと録音がデイヴ・フィリップス。フィールドレコーディングの他、この手の民族音楽、儀式などのレコーディング記録作品も手掛けているので、そこからの人選なのだろう。
パフォーマンスの内容はというと、これまた例によって例によるアレなのだが、録音か会場によるものか、空間の響きを利用したような半モアレ化した低域の倍音がトリップに誘うかなりヤバい内容。
人体が生み出す彼岸のドゥームメタルであり、極北の音楽行為であり、音そのものの怪物だ。
他所じゃ聴けない凄え音楽聴きたいなら、この人達を聴いてみたらいい。



 

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