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君が君で君だ、志乃ちゃんは自分の名前が言えない、キリング・ガンサー、インサイド、クレイジー・フォー・マウンテン、カメラを止めるな!



昨年に続いて夏のコンテストがある為、怪談書きマンになったり、あと映画観てました、はい

『君が君で君だ』
『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』

『君が君で君だ』は『アイスと雨音』の松井監督の新作で、またかなり異様な青春映画。
アパートの一室で暮らす三人の男が、向かいのマンションに住む女性をストーキングしている。
で、この男たちが彼女の好きだという「ブラッド・ピット」、「尾崎豊」、「坂本龍馬」のコスプレをして、本来の名前も捨てている、という話で。

『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』はどもりで自分の言いたいことが(本当に文字通り、直接的な身体的な意味で)言えない女の子の話。
ギターが好きだけど音痴な女の子と出会って、「歌ならどもらない」と気付き、一緒に演奏し始める。

前者で思っていたのが、すごく間違ってる話だなって。間違ってるし正しくない。やってる事、めちゃくちゃ犯罪的だし、描き方だってはっきりと共感を拒むようなやつをちょいちょい入れてくるんで。ただ、その、間違ってるとか正しくない、適切じゃないってことって、映画館の中では一旦括弧に入れて放り出されていいっていうか。その社会的な一般常識的な判断はひとまずいいよ、君がどう思ったか聴かせて、っていうのを思ってて。
後者で思い出してたのが、最近『アスペル・カノジョ』というマンガを読んだことで、まあタイトル通りの内容の話なんだけど、そこでその主人公の女の子が「マンガ読んでいると自分みたいな(ASの)人間が排除された世界の話って感じのしかなくてみんな嫌い」みたいなこと言ってて。それ読んで結構悲しいなっていうか、音楽やマンガや映画はそういう「排除された、いないことにされた人たち」が普通に居られる世界であってほしいなって思って。
そういうわけでこの二本を映画館で観られたのって良かったし、そこで実はメチャクチャ普遍的なことが真っ直ぐに叫ばれてたのが嬉しかったな。
『君が君で君だ』の中でここぞというポイントで使われる尾崎の名曲や、『志乃ちゃん』の中でカバーされる楽曲(ミッシェル・ガン・エレファント"世界の終わり"!など)、それぞれ非常にうまく物語に貢献していて、音楽も素晴らしかった。


『キリング・ガンサー』
主人公は暗殺者で、名を上げるために業界の伝説と化している引退した元・最強殺し屋の首を狙うのですね。
ただその元・最強殺し屋というのがシュワちゃんなのですね。
という設定からして相当に面白いコメディ。主人公が映像証拠のドキュメンタリーを作るということで、ファウンドフッテージ調になってるのも楽しいポイント。
現実的なカメラワークの中であり得ない出来事がポンポン起きていくという。
肝心のシュワちゃんが中盤まで出てこないという引っ張り方もそれ自体笑いになっていて、出てきてからの自己言及ぶりは突き抜けてる。
故郷のオーストリアに帰って農場経営するシュワちゃんの姿とか。
やっぱファウンドフッテージ×コメディってハマるととても楽しいのだな。


『インサイド』
僕のオールタイムベスト映画挙げるなら必ず入る『スペイン一家監禁事件』のミゲル・アンヘル・ビバスと『REC』のジャウマ・パラゲロが組んで『屋敷女』をリメイク!という最高に最高を重ねた作品。
これが期待に違わず素晴らしい。
オリジナルの血みどろさを一時間半ブッ通しの緊張が持続する綱渡りムービーへと変換する試みが成功してる。
静寂のサウンド、豊かな予兆と余韻が響く重厚なテンポ感、大胆な手前-奥移動で作る画面の奥行き、限定視界、どろりと重く深い色の血糊と白い壁の強烈なコントラスト。鏡を使ったトリッキーな構図や長回し人物追従ショットといった得意技も炸裂。
しかしながら本作を際立たせるのはやはり、一切のコケ脅しを用いない、純粋な狂気と殺意のみが脅かすというつくりかな。
誠実だし、これゆえに本作はどこまでもホラー映画なのではないだろうか。


『クレイジー・フォー・マウンテン』
複数の楽器が持続音を重ね、ピアノはタブレットに表示されたチューナーを睨みながら鍵盤を叩く。
オーケストラのコンサート前の準備風景を繊細に捉えた映像から始まる本作は、意表を突いてそこから一気に狂気の世界へと突き進むドキュメンタリー。
オーストラリア室内管弦楽団からのオファーで、映像と同期して演奏する形式のコンサートを行うので映像が欲しい、というオファーから始まった本作。素材に選ばれたのは、山。
天から大地に突き立てられた巨大な岩の剣。あるいは、神が一匙思いきりゴッソリと削り取ったかき氷。神話時代の津波の名残り。
そんな狂った形状の山を、一本の縄で、命綱なしの素手で、自転車で、ベースジャンプで、狂った方法で登り、降りる人々。
高所恐怖症の人が観に行くと絶対に後悔する正にクレイジーな映像のオンパレード。
「その瞬間に辛うじて死んでないだけ」というレベルにまで矮小化された命が、しかし「これこそが生だよ!」と歓喜の叫びをあげる。
「生の実感」って本当に不思議で、死から遠ざかるほど強くなるのかと思うと逆、死が鼻先まで迫ったところにこそ濃密に現れる。
映像に同期して奏でられるオーケストラのライヴ演奏、重なるウィレム・デフォーのナレーションも一体となって斬新でしかし荘厳な映像体験を織り成す。
ことあるごとに言及してるけど、はいネトフリで見られるフリークライミングのドキュメンタリー『Valley Uprising バレー・アップライジング』と一緒に、ぜひ。


『カメラを止めるな!』
最初のカットがまるまる1カット37分のゾンビ映画になっていて、残る1時間でその舞台裏を描くというかなり特殊な構造のコメディ。でもこれが映画を撮るとはどういうことか?ものを創るとは?というところまで描く胸熱な内容。
映画を語る時に自分がよく使ってしまう言葉で「本物らしい(に近い)感情」ってのがあって、これはあくまでそこで現れる感情は演技であるという一線を差しているのだけど、この映画観るとやっぱ創作においては、本物しかない領域、嘘がない領域、ってのもあるのかもなぁ、と思わされる。
そこには、本気で作っている人たちがやはりいるわけなので。
爆笑できるし、それも当然素晴らしいことだけど、一方で、誰かが本気で作った映画なら本気で観たいな…って襟を正される鑑賞体験でもあって。
エンドロールにはまぁ当然これやるよなっていうアレがあるのだが、そこもこの映画だとまた違う意味になってくる。つまり、映画本編で描かれた舞台裏もまた「映画内」の話じゃん、って言うところにこれが突き付けられる。本気でホントにやってんだよ、って。
それ見たら、やっぱ映画って奇跡なんだなって思ったよ。人の手で作れる、にも関わらず、そう呼びうるもんなんだなと。
なんか平日昼間から満席だったりとか、池袋のシネマ・ロサっていう場所もまたメチャ合ってたりとか、幸せな鑑賞体験だった。
これから拡大公開して全国の東宝とかでも観られるようになるらしく、これはぜひのおすすめ。


そんな感じです、最近は
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The End 『Svamod Och Vemod ar Vadesinnen』 Merzbow, Gustafsson, Moore, Pandi 『Cuts Up, Cuts Out』 A Place To Bury Strangers 『Pinned』

以下無理矢理括ってます


まずレア・ノイズから出ていたMats Gustafsson マッツ・グスタフソン関連最新二作!
The End 『Svamod Och Vemod ar Vadesinnen』

The End ジ・エンド。中二病ここに極まれり感のあるバンド名が最高すぎますが。
メンバーは以下の通り。
SOFIA JERNBERG : VOICE
MATS GUSTAFSSON : BARITONE AND TENOR SAX, LIVE ELECTRONICS
KJETIL MØSTER : BARITONE AND TENOR SAX, ELECTRONICS
ANDERS HANA : BARITONE GUITAR
GREG SAUNIER : DRUMS AND VOICE
まあ所謂スーパーバンドというか、超スーパーバンド。
グスタフソン&メステル(で合ってますか?)の言わずもがな最強コンビがバリサク二本という凶悪仕様。
ハナはギターガッツリ弾いてるのは久しぶりでは?最近はグラインドコア的なバンドでドラム叩いてるのばっか見ていた気がする。
グレッグ・ソーニアはディアフーフのドラマー、だけど最近はインプロのセッションを数こなす他なんとブライアン・チッペンデールとガチンコタイマンライブしたりしている。
ボイスの人だけ初めて名前を拝見したかな。
アルバムの構成としては、15分近い長さの二曲が真ん中にあり、それを囲むように1/4/6分の曲が4曲の計6曲入り。
デジパックの内側にビッシリ歌詞が書いてあって、あ、ロック?と思って聴くと最初の二曲は確かにロック。
バリサク二本とバリトンギターのへヴィ・リフを中心に構成されている。
しかしここで既にギターが各所でエッグいノイズカマしており、普通のロックでないことは伝わって来る。
長尺の二曲でガラッと様子が変わり、"Translated Slaughter"は音響系インプロ、"Don't Wait"は00年代初頭の香りのするモード的なリフ軸のフリーキーなジャズロック。ただこの二曲に関しては楽曲のスタイルよりボイス、いやヴォーカルに耳が行く。ポエトリーリーディング的なスタイルから中心を担うメロディ、他楽器とのユニゾンまで、ロックから前衛までかなり自由に行き来している。
1分のインタールード"Rich and Poor"を挟んでラストの"Both Sides Out"挟んでドゥーム調からインプロへと雪崩れる展開。
各人やりたい放題感ありつつバンドとして"曲を演奏してる"感も外枠にちゃんと残っていて、それゆえのジャンルレス感もカッコ良い一枚。
しかしもっと大胆にロック寄りな、Two Bands and a Legend的なことやってる音源も聴きたいっすなぁ。あの感じとかちょっと最近ないよね。

ライヴ


イカれたメンバーを紹介するぜ



Merzbow, Gustafsson, Moore, Pandi 『Cuts Up, Cuts Out』


もうツイッターから貼らせて…
コレめっちゃ楽なんで…。

で、この音源。ここでも感想書いたけど同じメンツでの二作目ですか。
一人いない版とかでシリーズみたいな感じで似たタイトルのはいくつか出してるけど。
このLP、なんかレコードストアデイ限定とかいってビビらせてくれたけどまぁ普通にユニオンで買えました。
LPなんで20分ちょい×2セットの構成で教会でのライヴを収録している。
独特のリヴァーヴ感はあるものの、音の方向性としては前の感じと良い意味で同じ。
エクストリームなノイズインプロ。
津波と化したエレクトロニックノイズとワウワウ雄叫びまくるファズギター、絶叫サックス、ブラストビート。
…なんて思って聴いてると、教会という場がそうさせるのか、アンビエントなドローンの上で朗々としたサックスのソロが始まったりな展開もあり。
しかし何か今回思ったのは、サーストン・ムーアめちゃくちゃイイね!という。
前回よりイキイキ轟音フィードバックノイズ垂れ流してるよ。

何がなんなのか



続いてロックンロールノイズキ×ガイNYC代表・僕らのAPTBS新作!
A Place To Bury Strangers 『Pinned』

バンドキャンプの方にもB面集的なのがアップされてるけど僕はCDで買ったら初回盤みたいなので二枚組になってました。
てなわけで白眼剥いて行きましょう!APTBS!
毎度のことながらドラム変わってるけど、ビートが変わるとやっぱ印象変わる。
生々しくライヴ感あるロックアルバム!てな感じだった前作と比べて、いや全作品の中でも、これはとりわけテクノ/トランス感ある一枚。
執拗な4つ打ちとチキチキハイハット。パッキリクッキリな音の分離は今までで一番分かれてる感じ。
新ドラマーが女性な事もあって代わる代わるに歌ってるヴォーカルも新鮮。
一方ギターは前作でノイズ寄りなカラーを強めに出してたのが更に進んで、コードを担うというよりも楽曲にアクセントを加えるパーツのように振る舞う箇所が多数。
自然楽曲の骨の部分を一身に引き受けるのがベースなわけで、和音的にはシンプルに聴こえるのもちょっとミニマルテクノ的な印象に寄与してる。
今までのアルバムの中でも一番クールな印象を与える一枚という気がするけど、やっぱトレードマークの破壊的なギターノイズは要所々々でドッカンドッカンいっててそこはAPTBS、ハズしてない感ある。
聴けばやっぱAPTBSはAPTBSでしかないな!と思うんだけど、同時に前作と時代が30~40年変わってるような印象も与えてくる。
摩訶不思議なバンドだな~。

サイコ~~~~~


意味不明



上半期ベスト映画




こんにちは!
ツイッターネタの供養に来ました。
ちゃんと↑のやつ見えていますか?
ツイッターといえばPHP文庫の企画で毎日一行怪談をツイートしてるのでそちらもよろしくお願いします。







なんかもう延々映画観ているというのが今年。
まとまった感想はそれぞれタイトルでブログ内検索して貰えれば出てくるかなと。
『デトロイト』『15時17分、パリ行き』は年の初めにポンポンと連発で来た実録もの。でありながら、その実録ってとこ無しでも一本の映画として驚異的なところをいくつも持っているなと。
『マザー!』は劇場公開中止をこの日本含むいくつもの国で喰らって話題になったけど、アマゾンビデオですぐ配信されたので鑑賞。いやここまでぶっ壊れた映画はそうそう無いでしょ。狂ってるとしか言いようがない。そしてカメラワークのところなど、ソツなく映画としてもスゴいと言えるポイントを持ってる。
『フロリダ・プロジェクト』はまず、構図・カット割・編集・それから勿論独特過ぎる色調とこのあたりで極上の映像作品として軽々K点超えているわけです。それでもうベスト入るなってところに、あのラストカット。掛け値なしの、本物の映画の魔法、奇跡を起こしてしまった。驚異的な作品だと思う。
『ビューティフル・デイ』はサントラについて少し前にここで書いたけど、音響賞。キレキレの前衛スコアと、それを劇中のサウンドと境目がなくなる所までミックスしていく音響設計。そして"愛はかげろうのように"!ラストシーンについてもブログ記事一個使って書いた通りで、寡黙ながら目で語るものが多すぎるような、そんな独特の文法を持った傑作。

旧作の『ギフテッド』もここで書いたけど。
色調の美しさ、しかもそれがかなり綿密に設計された跡が窺えること。そんな磨き上げれられた宝石のような映像の、骨董品屋の奥のガラスケースに鎮座しているような佇まい。そういう映像作品としての強度に加え、いくつかの本物の美としか形容のしようがないシークエンスをものにしていること。『フロリダ・プロジェクト』と並べたい傑作。

あとそう。
ついでなんでここでしか書けないようなことも書きますけど。
ベストについての自分の考え方、というか、今回のに即して具体的に言うなら、なぜ『万引き家族』、『リズと青い鳥』がベストに入ってないのかという話。
幾つかの明確な理由があって。
ひとつは自分の場合、こういうベストを年一回か二回挙げるわけだけど、これはどんどん新陳代謝させていきたいと思ってる。まあこの人の作品なら自動的に入るでしょう、みたいなことは無しでいきたいし、それまで取り上げたことのある人と、全く触れたことのない人が同率で並んでたら、迷うことなく後者を取る。
それでも同じ人を幾度も取り上げるというのは、その意味がちゃんとある、って場合のみで。単純に言えば、以前の作品をすべて超えている、ないし新たな地平を切り開いている、ということ。『万引き家族』も『リズと青い鳥』も素晴らしい映画であることは疑い様がない。ただそれ踏まえた上で、『万引き家族』は『そして父になる』を超えてたか?『三度目の殺人』みたいなフィルモグラフィー上での新たなものを提示していたか?『リズと青い鳥』は『映画 聲の形』の更に上を行く作品か?
自分の主観ではそういうところ。
あともうひとつ、自分が取り上げる意味があるか?っていう。
いやオレの影響力があるとかそういうことでは全然ないんだけど、どういうことかというと、皆が当たり前のように取り上げる作品について書くのって、読む側からしたらつまらんというか、意味ないよねと思ってて。
「それが良いのはもう知ってるよ」と。
自分だったら、自分のまだ知らない良いものをどんどん知っていきたい、それがこういうネットで他人のベスト眺める事の良さだと思ってるんで。

あと『リズと青い鳥』入れるなら当然『あさがおと加瀬さん。』も入って来るから裾野が無限に広がっちゃう。



あとついでで軽くではあるけどいつものごとくマンガと同人音声作品も選んでみた


自分は映画もマンガもコンパクトに詰めて終わるのが美徳だと思ってるのですけど、久々にもっとこの世界に浸りたい!と思ったのが『キャッチャー・イン・ザ・ライム』という作品で。
本当に直球の、怖いくらいに真っ直ぐな青春マンガだと思っていて、でもそこに描かれている痛みや辛さや、打算もなしにそんな誰かを救ってあげたいと思う事、世界に残った美しさに期待する事、そういうものに嘘が無いと思う。それがラップを通してなら自分の本当の心を吐き出せる、という形で描かれていて、時折マンガの表現の限界を超えていくような表現の妙ともマッチしているし、とても美しい作品だと思う。



えー、はい。
はい!(笑)

怪奇蒐集者

最近、怪奇蒐集者というビデオシリーズにハマっておりました。
Amazonビデオでみんな見られるようになっておるのですが。
タイトルから分かる通り、ホラーのシリーズで、ただこの手のものの中心にある心霊映像とか再現ビデオとかに比べるととても地味な内容。
何かというと、怪談を語るプロである怪談師や怪談作家が怖い話を持ち寄ってただ語るだけ、というもの。
しかしこれが滅法御白い。いや、怖い。マジで。

で、今24本出てる中の13本ほど見た。
ベストコンピ的なものも2本あるから、それ除くとかなりの部分見たことになる。
それで、非常に良かった5本についてここで書こうと。
やっぱこうバーッと大量に並べられても最初どうすればいいのか、困っちゃうと思うんで。


それでまずこれ…

このアマゾンのやつちゃんと出てますかね。いつも不安になるんですが。
で、そう、この怪談社という人たち。
本なんかも出しててそれも非常に面白いんだけど、怪談のライヴを中心に活動している団体。
自分も何度も生で見ているけど、とにかく語りが巧み。
硬軟緩急直球変化球織り交ぜてグイグイ引き込んでくれる。
パフォーマンスとしての怪談語りを確立させているような感じ。
語りの巧みさを楽しむならこれでしょう、バリエーション豊かという意味で最初の一本としてもおすすめ。



村上ロックさん。
恥ずかしながらこれで初めて知った。
六本木に夜な夜な怪談語りのショーをやっているスリラーナイトというバーがあるのだが、そこの怪談師の方。
叩き上げで怪談語りの経験も豊かということで磨き上げたものがあるのだろう、これまた見事な語り。
そしてネタもいい。
そこまで奇を衒ったタイプではないと思うけど、実話怪談ならではの中心が虚(うろ)になっている感じが底冷えする怖さを呼ぶ。
大仰なところのない、親しみやすい調子の語りに、いつの間にか暗がりの奥まで手を引かれている。目の前の相手の顔も見えないほど暗いところまで。
そこで、パッと手を放される。



BBゴロ―。
ご存知、あの稲川さんのモノマネ芸人の方。
稲川怪談調でレストランを紹介するとか、お馴染みですね。
いや、怖いの紹介するんじゃないんかい!って思われてるかもしれないけど、いやね。
この人の怪談語りが、ガチで怖いんですよ。
まさに稲川直系の、様々なオノマトペを独特の調子で組み入れその場に環境を展開していく語り。
気付かぬうちに崖の縁に立たされていたような、唐突にやって来る陰惨な結末の味。
勿論ユーモアも織り交ぜ、絶妙にスピードコントロールしながらドライヴしていく語りに魅せられる。



朱雀門出さん。
大学教員をやりつつ、二本ホラー小説大賞も受賞している実力派の怪談作家。
この人はフラットな語りのスタイルで、抑揚も小さく演出めいたこともないのだが、とにかく話の内容が異様。
この人がよその怪談アンソロジーに書いていた話で、ずっと脳裏にこびりついて離れずにいるのがあって、ちょっとそれについて書く。
オーレンジャーという、95年頃やっていた戦隊ヒーロー番組があるのだが、これを子どもの頃見ていた体験者の話がそれだ。
いつものようにテレビの前で座って待っていると、番組が始まった。
と、いつもと様子が違う。普段ならオープニングテーマが始まるところ、いきなり本編。
しかも、戦隊メンバーの一人のオーグリーンが異様な数の敵に囲まれている。
オーグリーンはもみくちゃにされながら敵の中をかき分け進んでいく。
と、その前にマダラ模様の不気味な姿の怪人が現れる。姿も異様だが、何よりもそれが手に持っていた武器に目が引き付けられる。
包丁だ。普通、怪人が持っているのは、巨大な槍や剣など、異世界めいた武器のはずなのに。
多勢に無勢のオーグリーンは、最後には包丁で刺されてしまう。
と、ここで、画面が暗転。黒い画面に白字でテロップ。
「オーグリーンは死にました」。
体験者が翌朝学校で他の子に聞くと、他にも同じものを見た子が何人かいる…。
それから朱雀門さんがイベント出演した際にこの話をすると、「自分もそれを見た」という人がいたそうだ。
てな話なのだが、どうだろう。
普通「怪談」と聞いてイメージする話とは大分違うのではないだろうか?
そんな感じの、デヴィッド・リンチの世界にでも迷い込んだような怖い話が唯一無二の怖さをもたらす。
こういうの大好き。



クレイジージャーニーのオカルト担当、アースダイバー的な怪談アプローチの著書、公共の電波では絶対流せないキレまくったポッドキャスト配信も最高な"吉田会長"こと吉田悠軌。
この人の怖い話は、とにかく気持ち悪い。ディスってるように聴こえるかもだけど、そうではないです多分。
想像可能な、足の届きそうな距離のリアルに属していて、なのにどこか歪んでいて不条理で、飲み下そうとしても喉に絡んで後味が口の中にずっと残る。
自分はいつもこのシリーズを寝る前に見ていたけど、この人の見たあとは本当に参った。半端なく嫌な気持ちになるから。
それは情念とか怨みつらみみたいな嫌さじゃなくて、やはり実話怪談ならではの、一番大事な話の核だけがごっそりと抜けている、穴の底を覗き込んでからそれに気づく、そんな嫌さだ。
解消してくれない、解決してくれない。
今回挙げた作品群はどれも素晴らしい内容なのを保証するけど、それ踏まえた上で、「とにかく怖いのが見たい・聴きたい」ってんなら、自分が一番怖かったのはこれ。


そんなわけで夜も蒸す季節になってきたのもあるし、部屋の電気消したら寝る前の1時間ばかし怪談聴くなんてのはいかがでしょう。

Carlos Giffoni 『Vain』 Patrick Higgins 『Dossier』 Jonny Greenwood 『You Were Never Really Here』

みんな出たばかりの新作。

vain.jpg
Carlos Giffoni 『Vain』
これはメチャクチャ驚いた。
Carlos Giffoni カルロス・ジッフォーニは大好きなのだけど、ここのところ全然リリースがなくなっていたので。なんと6年ぶりのリリースとのこと。
レーベルはiDEALからというのはしっくりくる。
100時間以上の即興演奏の中から抜き出したという9トラックで構成される本作は、久方ぶりのリリースということもあってか内容に変化が窺える。
彼のトレードマークともいえる長い持続音トラックがなくなり、シンセによるミニマルなパターンのコンパクトなトラックが並んでいる。
荒々しくエッジの際立った例のノイズ寄りな音も減り、もっと澄んだ電子音が中心になったサウンド。
個々の音が抜群に美しく、またバリエーションの豊かさで飽きさせない。
"The Desert"のスモーキーな質感や"Erase The World"の織りなすシンプルで奇妙なポリリズム、"Stop Breathing"のどこか祝祭的なノスタルジックな響き、"I Can Change"での雨音のような美しいシーケンス…このあたりの曲は特に好き。
ブランクを感じさせない素晴らしい内容なのだけど、欲を言えばこの内容で一曲15分とかで聴きたい!
まあアイデアはどっと出した感じだろうからここからまた絞った内容になっていくのかもしれないけど。


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Patrick Higgins 『Dossier』
ZsのギタリストPatrick Higgins パトリック・ヒギンズのソロ作。
レーベルは意外で、ニコラス・ジャーのOther Peopleから出ている。
12分のトラック×2、6分のトラック、18分のトラックの4曲という明快な構成。
ギターと大量のエフェクター、ラップトップ、その中の自作プログラムを用いて制作されている。
きわめてミニマルなエレクトロニクス、エフェクトで電子音と区別のつかなくなったギター、中心にあるその二要素がコラージュ的なエディットで巧みに組み合わされている。
タイトルのdossierは調査記録という意味だから随分無愛想な音楽にも思えるけど、最後のトラックについた"White Lie"というタイトルにははっとする。この人がZsのメンバーなんだということを思い出させる。"Music of Modern White"、"New Slaves"、あのあたりのタイトルと地続きという感覚。そう捉えると、やはりこのジャケットは監獄だろうか。
で、この"White Lie"という曲は内容もアルバム中で特に素晴らしい。ギターのタッピングによって高速で紡がれるフレーズが延々と反復し、ヴェールのようなアンビエント/ノイズと溶け合って頭を包み込む。
やはりエレクトロニックミュージックとも聴こえるし、それを手で演奏していること自体が何かの異議申し立てのようにも思えるし、何とも位置づけに困る奇妙な音だ。
ただこの人の音だというその事ははっきり分かる、というのは、ヒギンズがいかに音楽家として卓越しているかという証明にもなっている。

本作のプロモパフォーマンス


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Jonny Greenwood 『You Were Never Really Here』
これは前にも書いたけど、レディオヘッドのギタリストJonny Greenwood ジョニー・グリーンウッドの手掛けた映画『ビューティフル・デイ』のサントラ盤。タイトルは映画の原題。
レディへの、といっても今やこの人も普通に映画サントラ作家と言ってしまって問題ないように思う。
実績も相当あるし、『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』なんかの仕事ではかなりの数の賞を取っていたはずだ。
で、本作の内容。本作以前にもリン・ラムジー監督とは『少年は残酷な弓を射る』で一緒に仕事しているから、グリーンウッド的にも攻めた内容にし易かったのではないかと見える。
予告などでもインパクトのあった"Sandy's Necklace"が特に強烈だ。
左右のパンニングとパルスのようなトレモロで破壊された不安定なコードのギターサウンド。ミュートの刻み、エスニックなパーカッション、バダラメンティ直系の揺らぐ奇妙なストリングス。最後に例の不安定なコードへと立ち戻る。様々な要素が組み合わさっているけど、見事に絡みあってひとつの世界観を成している。映画でもオープニングのシークエンスでかかるわけだけど、劇場で観た際もこれで一発で映画の世界に引きずり込まれた。
以後は意外にもギター要素は控えめで、エレクトロニクスとストリングス中心のサウンドが展開される。
が、それもかなり異様な形。
4/4と3/4の組み合わせでリズムが延々ひっくり返る"Dark Streets"、うねり旋回するシンセのシンプルなテクノかと思いきやテンポの異なるスネアが噛んでおかしくなる"Nausea"など、エレクトロニック方面ではリズムがおかしい。
あるいはストリングス、"YWNRH"の不協和音ドローンとエレクトロニックノイズ、カットアップで崩壊していく。
悪夢を流し込んだアリスの穴に迷い込むような映画の内容そのままの、ねじれまくったサウンド。
その中にあって、"Nina Through Glass"、"Tree Strings"といった、ヒロインに宛てられた曲たちの微睡むような美しさに救われるような気持ちになる。
これは正しくあの映画の、あの奇妙で美しい映画のための音楽なんだよな、とやはりそう思わされる。

 

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