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最近読んで面白かった本

最近ってか昨年末くらいからの感じだが…


『人はなぜ宇宙人に誘拐されるのか?』 エリエザー・J・スタンバーグ
こんなタイトルだけどオカルトでなく脳研究・神経科学の本。
専門的なところはなく、根気があれば読める。
タイトル通りのアブダクションの話からイメージトレーニングのメカニズム、先天的に盲目の人はどんな夢を見るのか…?等、幅広いトピックに触れながら、意識と無意識、虚偽記憶、脳の奇妙な機能について書いている。
例えば金縛りにあったときに部屋の隅にうずくまる人影が…みたいな話があるけど、そこでなぜ脳が幽霊を要請してくるかっていうことだよね。
この本で述べられているのはある意味不合理で奇妙としか言いようがない理屈なんだけど、結局その合理/非合理みたいな価値判断が実は恣意的なんじゃないか、ってことも考える。
脳について考える本は、迂回しつつもある面で哲学書にならざるを得ないような気がしている。



『第三脳釘怪談』 朱雀門出
ここでは怪談本には触れずにいこうと思っていたけど(キリがなくなるので)、これは書いておこう。
応援したい本だから。
「第三」とある通りシリーズの三冊目になる。前の二冊は紙の本で出ていて、これは著者の自費出版、電子のみ。
300円という破格。
この人は、現代怪談の書き手の頂点の一角だと思っている。
自分の中で、我妻俊樹さんや黒史郎さんに並んで好きな作家さん。
なにか怪談大好きというとおばけ好きなのかと思われるけど、自分の場合、おばけ、幽霊というものに特別な興味はなくて。
説明のつかないこと、世界の歪んだ断面、あるいは、「おばけ」「幽霊」みたいな言葉で切り取られているものの属する全体を想像したときに、その「おばけ好き」の人によって「切り捨てられている部分」のほう、名前のついていない煮凝りのような、茫としたものの中にこそ面白いものがあると信じる。
上で挙げた三名の作家の描いてきているのって、まさにそういうものたちで。
「おばけ」を扱うという話になっても、その枠のない視点から話を掬いあげることで、独特の手触りになっている。
この本に収録されている怪談のタイトルは、"変態するヒトの話"、"ジムル波"、"俺の地獄"、などなど。
内容に触れるなら、「子どもの頃エレベーターの中に身体を折り曲げたサイが詰まっていたのを見た話」とか「まわりに何もない寂れた道路の脇に設置されている、タツノオトシゴを販売している自販機の話」とか。
どうですか?読みたくなりませんか?

同著者の『忌田の枝足』は短編連作の小説で、こちらも生物学的アプローチで語る怪談という実に面白い試み。おすすめ。


『ぽつん風俗に行ってきた!』 子門仁
タイトルの通りで、ベテランライターの著者が「なぜこんな場所に?」という立地の風俗店を訪れていく。
アマゾンレビューにあったけど「風俗版 孤独のグ〇メ」というのが一番簡潔な説明になるように思う。
この手のものってあまり文章が良くないような偏見があるけど、これは実に端正で読みやすい。
アプローチも独特で、風俗店というものを多面的に捉える視点が面白い。
なぜそこに風俗があるか、という点は、地史学的な、アースダイバー的な視線から見えてくるものがあったり。
そうして歴史を知れば、一見突拍子のないように見える奇妙なロケーションの風俗店が、どこか奥行きを持って見えてくる。
必然、僻地のようなところも多く訪れることになり、不思議な旅情もあったり。
ちょっと、いや、かなり変わった旅ルポエッセイとしても実に趣深い一冊。



『昼休み、またピンクサロンに走り出していた』 素童
一見青春小説のように見えるタイトルだけど、よく読むと違うと分かる。よく読まなくても分かる。
いわゆる風俗レポだけど、この著者の文章力には目を見張るものがある。
読んでる間中笑いのツボを痛打され、胸が苦しくなった。
デリヘル店のホームページの嬢の紹介文を自然言語解析ソフトで研究し、その成果をサイトで発表したところタモリ倶楽部に呼ばれて今回の本へと繋がった…っていう著者の経歴に何か感じ入るものがあれば読んでみると良いかと。



『社会学史』 大澤真幸
タイトルから想像する内容だと、たんに教科書的なそれというか、年表があって、順に説明…みたいな。
この本は全くそうなっていなくて、思想と理論を系譜立てて説明する。つまり、この思想とこの思想はこのように繋がっている、という、有機的な接続で思考を刺激するような構成を取っている。
そこに著者の近年の関心、偶有性、資本主義、歴史記述の恣意性、など…を大胆に絡ませた読解を展開する、独特の内容になっている。
ある種、主観的な歴史の捉え方ともいえるけど、だからこそ自分は面白く読めたし、スルスルと入ってくるように感じた。
全体を読み通してみると大きく輪を描くような歴史観を構成しているというのも面白いところで、それって何かヴィルヌーヴの『メッセージ』みたいなんだけど、思えば『革命が過去を救うと猫が言う』のような著者の別著作ではまさにそのような歴史観について述べていた。



『「最前線の映画」を読む』 町山智浩
みんな大好き町山さんの最新映画評集。
2010年代の映画を幅広く取り上げて時代を切り取る、まさに今ここの映画批評集となっている。
特殊なのは、「映画の紹介本」ではないということ。
基本的に、その映画を観たこと前提の解説的批評を集めたものとなっている。
あの描写は、この謎は、どう解釈するのか。
扱っている作品はどれも話題になったものだから、映画館に通い詰めるアクティブな映画好きなら大半は観たことあるはず。
しかしこの人の映画評は読み物として抜群に面白いよな、と改めて思う。
『沈黙 サイレンス』、『イット・フォローズ』の評なんか実にエモーショナル、抒情的でもあって、とくに前者のほうは読んでいて思わず泣いてしまった。



『辺境メシ ヤバそうだから食べてみた』 高野 秀行
さっきまでテレビで「ウルトラハイパーハードボイルドグルメリポート」見ていたんだけど、やっぱ食って面白いね。
つまるところ、生活のかなりの部分ってここから見えてくる。
というわけで本書は、世界中をまわってあらゆるゲテモノを食べてきた著者による「珍食・奇食リポート」。
たとえば、こんな一言が登場する。「脳は、もう飽きた」。
最初のエピソードのタイトルは「ゴリラを食った話」。
虫食系のエピソードはどれも鉄板の面白さ。イタリアのレストランで5年働いたというタイのシェフが作る「虫イタリアン」とか。何してくれるんだよ、っていう。
ソマリ人の大好きな「噛むほど気持ちよくなる草」カートをとにかく食いまくる話など、ヤバいエピソードも次から次へと登場する。
ただただ、ムチャクチャ面白い。
そういえばオレも今までの人生で何度か虫食の経験がある。
カイコ=蛾とか、シロアリ=ゴキブリとかそんな感じ。



『未来のセックス年表 2019-2050年』 坂爪真吾
タイトル通りの思考実験の本。
書いているのは性風俗産業周辺の社会課題解決に取り組むNPOの代表をやっている方。
常に今この社会で起きている問題を出発点にしつつ、テクノロジーや制度がこれからの性愛をどのように変えていくか?ということについて、多様なトピックから検討する。
「パパ活」の行く末、後妻業スレスレの「ジジ活」…だとか、日本で夫婦別姓や同性婚は可能になるか?だとか、VR、ブロックチェーン婚、AIによるマッチングアプリ…。
読んでいて思うのが、性愛という切り口から考えると残酷なほどはっきりするけど、結局いまこの社会って「終わりゆく社会」であって。
よほどの革命が起きない限り、少子高齢化・出生率低下で社会は終わるだろうと。
でもたぶんそれは、性愛が生物機能としてじゃなくて、(もしかしたら「本当に人間らしい」?)完全に快楽のためのそれになるということかもしれなくて。
黄昏ってやつで、たぶんその時間は短いんだけど、なかなか面白い時代になりそうという気もしている。



『ゆるく考える』 東浩紀
おなじみ哲学者のあずまんのエッセイ集。
いくつかのパートに分かれているけど、様々なトピックについて短い文章で綴っている序盤、福島の原発を訪れた際のレポートの終盤が特に面白い。
例えば、育児についてこんなことを書いている。
普段われわれは、「今回ダメなら次の機会に」というような感覚で生きている。
夏に休暇を取れなければ冬に取るし、今年花見に行けなければ来年に行く。
あらゆることに反復可能性…次の機会…があるという前提で生きている。
でも子供は、それは欺瞞だと気付かせる。
三歳の海と四歳の海は違う。小学校の入学式には一度しか出席できない。
人生は短くあらゆる瞬間が唯一のものだということを、子供は思い出させる。
それが子育ての喜びであり辛さでもある、と。



『執念深い貧乏性』 栗原康
これもエッセイ集…ということになるのかな?
著者の栗原さんは政治学者で、専門はアナーキズム。
それだけあって、文章もとにかく破壊的。
酩酊したような独特のグルーヴ感があって、笑うしかないイカれたエピソードもふんだんに仕込まれているのだが、全体通して、権力と自由、支配と被支配、主体性といったことについて、うまいこと思索へ導かれる。
特に好きなのは韓国の大学へシンポジウムで呼ばれた際のエピソード。
友人のDという人が現地にいて、この人もアナーキストなのだが、久しぶりに会ったので、何の仕事で暮らしているのかという意味で"What are you doing?"と訊いた。するとDは答える。
"Nothing."。
ナッシング。すげえ。
このDという人は徴兵制のあとそのまましばらく軍隊に残って特殊部隊に所属していたことがあり、そのおかげでサバイバル能力が異様に高くなったらしい。
家も空き地に勝手に作ったとのこと。
で、この人が今度、山形に映画祭で来るという。手伝ったドキュメンタリー映画が出展されるからと。
で、どこに泊まるのか訊いてみた。
そしたら、こう答えたそうだ。
「土」。


…そんで今は、この本を読んでいる。


『忌み地 怪談社奇聞録』 福澤徹三、糸柳寿昭
お馴染み実話怪談の名手で小説家でもある福澤徹三さんと、実話怪談を題材に怪談ライブを頻繁に行っている「怪談社」の糸柳寿昭さんの本。
怪談社のライブは自分も何度か見ているけど、実に見事な語り。いわゆる稲川的な語りとは異なる、もっと現代的なアプローチの怪談語りというか。
で、この本、面白いのが、実話怪談の取材、というのを題材にしている。
どこに行って・どのような人から・どのように怖い話・不思議な話を聞きだすか。
その取材の過程で、ダークツーリズム×アースダイバーとでもいうのか、土地の暗い・普段語られることのない側面、みたいなものが見えてくる。
怪談を土地というアプローチから考察する、吉田悠軌『怪談現場』シリーズや小野不由美『残穢』あたりと繋げて語れそうな一冊。
めっちゃ面白いっす。


しかしこうしてみると自分は読書に占める小説の割合がかなり少ないというのが分かる。
そっちを掘って良い本を探してみるのもいいかもですね(雑なまとめ)。
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2019上半期 良かった映画・マンガについて

今年の上半期観た映画は96本で、昨年からだいぶ減ったけど、これは5~6月は使える時間をほぼ山を登ることとその準備に使っていたため。
暑さ寒さが本格化する時期は山登りは休むので、そのへんでまた増えたりするんじゃないか。
内訳で劇場新作53本(微妙に配信オンリーの新作もあり)、配信で見た旧作43本。


新作ベスト
『希望の灯り』 🏆️
『ギルティ』
『コンジアム』
『バンブルビー』
『シャザム!』

旧作ベスト
『追想』 🏆️
『ブルー・マインド』
『ぼくの名前はズッキーニ』
『きみはいい子』
『さよなら、僕のマンハッタン』


『希望の灯り』、これほんとに地味な話で。でもあらゆる意味で琴線に触れた。触れまくった。
その理由っていうのは書けることも書けないこともあるけど、ひとつ書くと、『ノッキン・オン・ヘヴンズドア』という同じくドイツの98年の映画がある。これ、自分のオールタイムベストのうちの一本なんだけど。
これが死病に冒された男ふたりがギャングから盗んだ車で海を目指して旅をするロードムービーで。
片方の男が、海見たことないんだよね、と言い、もう片方が、え、それマジやばくね、オマエ駄目だってそれは、と。え、なんで。なんでってオマエ。「天国じゃ、みんなが海の話をするんだぜ」。
人生最後の願いで、一生に一度、海を見たいと願う、これって我々からすると理解しにくいんだけど、地図を調べればわりと理解できる。ドイツってぜんぜん海がないんだね。それで、ハネケの『セブンス・コンチネント』とかもそうだけど、海を望むと。
『希望の灯り』はベルリンの壁が崩れた直後の旧東側の人たちの話で。分断は終わったけど格差はあるし、古い人たちは資本主義マナーに馴染めなかったりする。みんな自由、自由って言うんだけど、実際にはそれは自分の手元まで行き届いてはいない。
いわばスケールダウンした自由や平等を分かち合うような描写というのが多数出てくる。
そこで海がすごく大きな意味を持ってくる。
悲しいけど悲しいだけでもなく、優しいけど優しいだけでもなく、平熱の世界にわずかなお伽話を添えてくるというか。

『ギルティ』はソリッドシチュエーション系の大当たり来たなっていう。音でのアプローチという斬新さに終わらない、想像させる背景のドラマ。それから自分の大好きな映画で『リミット』が優れていた点がまさにここなんだけど、映画の中に完結した話じゃなく、いまこの世界の現実へと開かれていること。極限の閉鎖空間から。
『コンジアム』は大好きなジャンルPOV/ファウンドフッテージで驚かされた一作。ここでちょっと書いた。
『バンブルビー』、『シャザム!』は大作系から。
『バンブルビー』は本当にパーソナルな理由というか、まさにドンズバというところで、あっ、映画の中にオレがいる、っていう。オレが苦しんで、オレが笑って泣いて、オレが救われてたっていう。音楽の位置づけも素晴らしい。
『シャザム!』、これヒーローコメディと思って観に行ったら少年少女のための『万引き家族』見せられたという一作。


ツイッターでアツく語ったのでこのツイートから続くツリーを見て下さい。
「僕たちは里親だよ!
きみのスーパー・パワーはなに?」。

旧作で、『追想』ね。
昨年のイギリス映画。邦題からして、地味だな~って思ってチェックしてなかったんだけど、これがもう本当に良かった。
結婚式挙げたカップルがそっから6時間で別れるっちゅう話。
構成がトリッキーで、その1962年の6時間を軸に何度か時間軸がジャンプする。
60年代に激しく変わっていったもの、音楽を参照しながら物語が語られる。
ステレオ形式のオーディオの普及。ロックンロールの誕生など。
今日ちょうど観てきた『COLD WAR』もそういう映画だったな。
『追想』も移りゆく時代をワーッと駆け抜けていく。そうして思い出してた歌があって。
「恐いモノ知らずで 時代ははしゃぎまわり
僕と君のすごしたページは 破り去られ
歴史には価値のない 化石の一つになるのさ」
ああ、それでも、
「君と出会えて良かったな」。

『ブルー・マインド』、昨年末にベストを出した直後に見た映画で、そのタイミングでメチャ良いの来ちゃったっていう。
昨年は百合映画が多数公開されて、その中で百合ホラーというのもあって例えば『テルマ』とか。
まあそういう状況の中で、ユリデミー賞決めるとしたらこの一作。
なにか殺菌消毒されたような、きれいなだけの百合ってあまり好きではなくて。それってオタクの信仰の中にだけ存在する世界ですよねっていう。
そういうとこで、美しいファンタジーとしての百合を描くならこういうことなんじゃないか、って思った。
『ぼくの名前はズッキーニ』、『きみはいい子』、洋邦の子ども映画。『シャザム!』に通ずる孤児映画でもある。
『きみはいい子』の中盤での驚きのシーン、忘れ難い。『フロリダ・プロジェクト』なんか思い出すのと、西川美和監督が『永い言い訳』のときに言ってたことで「子どもの演技を演出するのは恐いし罪悪感がある」と。やっぱ子どもをスクリーンに一番美しい姿で映す方法ってこれなんかなっていう。
『さよなら、僕のマンハッタン』。『ギフテッド』に続いてマーク・ウェブ監督の小規模映画。やっぱ画作り、特に色彩センスがあまりにも良すぎて。すべてのカットが絵画みたいになってる。この世界はいつもままならなくて愛おしいというような、苦く甘いストーリーも最高。



マンガのベストも何となく選んでみた。
年間ベストと同じく、基本的にその年に始まったもの・終わったものをその年のマンガと位置付けている。
今回はみんな始まったほうの作品になった。
ただ、旧作枠みたいな感じで今年初めて知って読んで「なんでこんな最高のものを知らなかったの…」って後悔したやつもひとつ入れている。
あと最後のが昨年末に一巻出てるんだけど気付かなくて年明けてから読んだやつ。

三門ジャクソン 『スカイフォール 消し尽くせぬ夏の光』 🏆️
谷口菜津子 『彼女と彼氏の明るい未来』
神崎タタミ 『モノノケソウルフード』
樫木祐人 『ハクメイとミコチ』
菅原亮きん 『猫で人魚を釣る話』

『スカイフォール』は広島平和記念資料館、いわゆる原爆記念館を修学旅行で見学していた高校生が、原爆投下の日の朝に跳んでしまうというタイムリープもの。
タイムリープでも、異世界転生でも、読むときのふたつの軸があって。ひとつは、何が違うのか。デジタルとアスファルトの現代から剣と魔法の世界に跳ぶ、みたいな言い方がそれ。もうひとつは、何が同じなのか。これってあまり意識されないところなんだけど、より重要なポイントなんじゃないかと思っている。
この話ではそのことをこう表現する。
「3.11のときと同じだ」。
王道としてのひと夏のボーイミーツガールでありながら、間接的な被災者の主人公が震災を自分のうちに引き受け直すという話にもなっている。
大澤真幸の『憎悪と愛の哲学』でも3.11と原爆を重ねて論じていたので、何か自分の中で検討したい主題というのもあり、興味深く読んだ。
夏が薫るような絵柄や個々のエピソードの問いかけてくるものの重みも読みごたえとして返ってくる感じ。

『彼女と彼氏の明るい未来』、これも変化球のタイムリープものか。
「今 目の前にあることが真実じゃだめなの?」。ってそれはお題目としては分かるけど…分かるんだけど。
セリフまわしがことごとく良くて印象に残る。
『モノノケソウルフード』、いわゆるメシ食うタイプのマンガってもういいよっていう、メシだけに食傷気味になってたけど、美味いことの表現が巧みで、またチャンポンにするネタが良い化学反応を起こしてて、ついでにこのマンガならギャグセンも最高で、っていうそこちゃんとしてるとまだ面白いものは出てくるという。
「ミッシェルのキャンディハウスの初回盤みたいなアー写」って絶妙な送球。
『ハクメイとミコチ』、アニメは見ててスゲー良かったんだけど、恥ずかしながら原作は今年初めて読んだ。読んで、一瞬で全七巻揃えた。何といっても徹底して作り込まれた世界観と異様なまでの情報密度の作画。手前-奥軸の移動、位置関係というのがここまで強調されているマンガもそうそうないように思う。それって常に細かな背景が存在してなければ成り立たないので。そのことで独特の立体感を持ったマンガになってる。
世界観の作り込みは意味の面での奥行きになっていて、ぜんぜん異なる文化を持った社会や人々の営みを覗き見るような面白さがある。
『猫で人魚を釣る話』、昨年末に一巻は出てたんだけど、今年になってから知った。
トリッキーで独創的なマンガ表現を次々投入してきて、最後の最後までページをめくるのが楽しい作品。それだけでなく、ここぞというところではっとするような美しい瞬間を見開きに捉えてみせる。例えばミシェル・ゴンドリーの映画が「マンガっぽい」なんて言われたりするけど、その「マンガっぽさ」をドラマを語るツールとして徹底的に突き詰めればこういう作品になるのかもしれない。


あと文字の本のベストも書こうかと思ったけど、これ思ったより絞れなくて、アレだから最近読んだ良かった本みたいな感じでいずれ記事作ろうと思う。

とりあえず最近はなぜかジムのプラモ作ってます。
ではまたいずれ

Tania Chen with Thurston Moore, David Toop, Jon Leidecker 『Electronic Music for Piano (John Cage) 』

https://yamap.com/users/1003665




あのー、これ何だろう?
自分、何なんだろう?
って思いながら、ひたすら山登ってますね笑





Tania Chen with Thurston Moore, David Toop, Jon Leidecker 『Electronic Music for Piano (John Cage) 』

2016年の録音で最近出たやつ。
ジョン・ケージの1964年のスコア、"electronic music for piano (john cage)" ピアノのための電子音楽は、ケージによる数多のピアノ曲のスコアの中からピアニストが部品を選び出して、他の演奏者に電子機器を用いた演奏を指示していく…というものなのだが…。
ピアノを担当するタニア・チェンはケージの楽曲を独自に解釈して演奏した作品を数多くリリースするアーティスト。
この人が集めたのが、おなじみギターのサーストン・ムーア、フライング・リザーズのデヴィッド・トゥープ、何だかよく分からん人ジョン・レイデッカー。
レイデッカーはミキサー等を扱っていて、トゥープは一人別録りで例によってさまざまな楽器や非楽器を用いて参加している。

これが蓋を開けると70分1トラックというシロモノなのだが、聴いてみるとちょっとそういう感じでもない。
なんかブツ切り的に、いきなり演奏が切断され、前触れなくノイズの暴風が吹き荒れ、文脈というものがないかのようにプリペアドピアノの物音がトンと置かれる、ような感じで、しかも無音部分が多い。
いきなりバツッと音が切れて、そのまま数分鳴らなかったりする。
たぶんこの辺りは、ミキサーの裁量が大きいんだろうな。
終わりも何となく聴いてると分からず、あれ、ずっと演奏始まらないな、あ、終わったんだ、という感じ。
で、最初ひとつなぎの演奏をバラバラにカットアップ的編集したものなのかな、と思ったのだが、リアルタイムのライブ演奏かもと思わせるところが端々にあったり。
静かなところで聴いていると演奏者の息づかいや椅子の軋み、アンプのノイズが聴き取れるとか。
ピアノ中心だからサウンドの手触りとして統一感はあるけど、まるっきり曲という感じがしない演奏。
まったくの無よりも、スコアというかルールというか、秩序から無秩序を出力しようみたいなことは、こういう現代音楽のひとつのベクトルではあるんじゃないか。
なんかヘッドホンでなくオープンなスピーカーで部屋で流してると良い感じになるアルバム。
カッコいいと思います。


 

Siraph 『past & current』 MOROHA 『MOROHA IV』

随分立ってしまいましたが、何をしていたかというと、山を登っていました。
何言ってんだって感じですが…






山は、良いっすな~~~!(爆笑)

https://yamap.com/users/1003665
5月は週イチペースで登ってまして
私の山行の記録はここで見ることが出来ます


そんなこんなで



Siraph 『past & current』
は、こうしてリリースのライブにも行ってきたのですが…

あっ、このバンドについてはこの記事でも書いています

今回のアルバムはライブ限定販売のシングルシリーズをまとめたものなのだが、そのシリーズはアイディアをパッパッと早いペースでまとめて出すような感じだったらしく、そう思って聴くと確かにミニアルバムと曲の感触が違う。
もっとロック的というか、音楽としてシンプルな響きに聴こえる。
確かにリズムやサウンドの組成は奇妙で複雑なところが多いけど、ミニアルバムでの、そのレイヤーが神経症的に重なって音響っぽい領域まで行ってしまうところとはまた違うというか。
ざっくり言うと、ちゃんとポップミュージックに聴こえる。ポストロックでもない。
"風琴と朝"という曲が一番好きなんだけど、この曲はA→B→Cで4/4→7/8→6/8と拍子が変わっていく。だけどちゃんとサビに向かっていくというポップスとしてのベクトルが感じられるし、心地良い解放感があるんだよね。
続く"hyos"の5拍子にしても、そのリズムを使うためにやってるって感じはしない。ちゃんとメロディがメインになっていて。
"ニュースモーカー"などで聴かれる明快なギターソロも、あ、こういう事もやるんだ、って思ったし。
65daysofstatic的なインストの"so far"なんかも引っ張りすぎず良い刺激として加わってる。
相変わらずヴォーカルというか、ヴォイスというか、声はかなり楽器のサウンドに混ぜて聴かせてるよなって思うんだけど。
だから楽器陣の刺激的極まるサウンドを抑えるでもなく押し出すでもなく、「それでも調和する」ぐらいの落としどころ。そういうバランス感覚が抜群のバンドだなと思うのだが。
しっかし相変わらず素晴らしすぎるベース。
ライブで見て更に好きになった。




MOROHA 『MOROHA IV』
この二人についてはここで少し書いた
今回のアルバムからメジャーなんですね。
な~んかシャンッ!って整った綺麗な音になっちゃうんだろ~な~いろいろ余計な音が足されちゃうんだろうな~変なゲストが入るんだろうな~~残念残念!
って思ってたら、頬張り飛ばされたような衝撃。
いや、これ目茶苦茶スゲーよ。
こんな過剰にエモーショナルでパンキッシュでライブアルバムみたいな、そして何ひとつ足してない剥き出しの音を普通に流通に乗せていいのか。
歌詞カードが付いてるけど、紙に落としたら端からもう魔法が解けてくっていうか、やっぱ音楽なので。ラップは言葉の音楽なので。
だからただ部屋真っ暗にして大きいボリュームで集中して聴き取る。それでちゃんとした形で音と言葉が入ってくる感じがする。
だから歌詞の引用とかはここでは全くしないんですけど。

しかし録音はやっぱ良い。洗練とかじゃなくて、生々しいっていう、メジャーの方とは逆に向かう意味で良い。
ギターのスラミングの音がバシッと入ってて、だから"ストロンガー"、"スタミナ太郎"みたいなビート強調した曲がキマってる。
声の、合間の息づかい、それからMCアフロ、歌うときに本気すぎて普通に息切れしてるんだけど、それがそのまんま入ってるのが素晴らしい。
これの前に出した再録ベストで"三文銭"が圧倒的に良くて、何でかっていうと、何を思ったかこの曲での歌唱はあらゆるところで上擦って掠れて裏返ってあげくハーハー息を吐いちゃってて。あ、こんなリアリティあるんだな、でも本当のことを歌うならこれだよな、って思って。
その感じがちょっと今回のアルバム全体にある感じ。

ギター。
映画『アイスと雨音』の"遠郷タワー"が彼らの曲の中でもトップクラスに好きなのだが、この曲でギターについての意識が明確に変わってるよなって思ってて。
パターンというか、ラップを載せるためのリフじゃなくて、インストとして成立するような物語性のある旋律を奏でてる。
それって今回のアルバムでは更に進んだところに来ていて、"スタミナ太郎"、"夜に数えて"の、ラップのテンションと触発しあうように有機的にサウンドを変えていくギター、ほんとにこれはもう単独な「曲」だな、ってところに来てる。

全編本当に素晴らしくて、特にアグレッシヴな方向性の曲は聴いてて震えるほどだけど、やっぱ"米"って曲。
これはちょっと、アルバム全体からしても浮いちゃってる、桁違いの曲だと思う。
前進する細かなリズムの攻めの感じと美しいメロディの組み合わさったギターがまずアルバム中でも飛び抜けた素晴らしさ。
それで、歌ってる内容。
これはもう何も言えない。
ただ聴いてくれよって思う。歌詞カードなんか読まないで集中して言葉を聴きとってくれよと思う。
身も蓋もないリアルだけど、このことをこれだけの熱量で歌えるってスゲーよ。
ただやっぱ、ラップってこれだよなって思うんだよ。
あの『ショート・ターム』で歌ってた少年のような。
ここまで本音を出せよってことだよな。
でも同時に、今回のアルバムが凄く良いなと思ったところで、やっぱ(暗かったり苦しんでるかもしれないけど)希望に向かってるって大事かなって思ってる。
マーベル映画とかよく出来たファンタジー、フィクションが溢れてるけど、そういうフィクションが何をどう描くべきか?ってことについて、自分の考えはわりとシンプルで。
ひとつは、現実を見据えろよってことで、それがなきゃ空虚だよやっぱり。
ただ、皮肉屋になって冷笑して希望ねー現実終わってるなオレらみたいなとこが落とし所になるなら意味はなくて。
だから、現実を見据えて理想を語れよ、ってことなんじゃないか。
それが語れたら創作って意味があるんじゃないか。
それってMOROHAが何とかかんとかして歌おうとしてきたことで、それが今回のアルバムでは相当に形になって歌われてると思うよ。

Sunn O))) 『Life Metal』 Machinefabriek 『With Voices』 Klaus Lang & Golden Fur 『Beissel』

自分が幼いころ、映画にかかわる人の中で最初に覚えた名前が「ジャッキー・チェン」なのだが、そのジャッキーの「老い」がしっかりと刻まれた『ザ・フォーリナー/復讐者』、大感動してしまいました。
美しいですね。この人は。




Sunn O))) 『Life Metal』
みんな大好きSunn O))) サンの太陽がサンサンな最新作。
デスメタルに対してのライフメタルってことらしいのだが……。
出たばっかの最新作に対してこう言うとメッチャわざとらしいけど、今までの彼らの作品の中で一番好きですねこれ。
単純に、とにかくサウンドがいい。
スティーヴ・アルビニはオーガニックな方法論で最良の録音をするエンジニアだけど、そのやり方ってナマの楽器を用いたものであればどんな音楽にもフィットしちゃうなあってのを改めて。
The Thing 『Bag It !』の最高さでそのジャンルレスな手腕ってのは分かってはいたんだけど…。
ドローンって自分にとっては音の質感を堪能する音楽であって、その意味でこの、持続音でありながら濃密な情報量、という感じ。
フィードバックノイズの混じり方や、低音が延びるにつれワンワンと回ってくる感じとか、もう本当美味しいところ全部入ってる。
でもシンプルだな、ロックの音だな、って感じさせるという、なんかやはり魔法があるな。この音は。
オルガンと絡むtr.2、ボトムのズンとくる感触が鼓膜に効くtr.3は特に好き。
しかしこの、音響的に作り込んだのではないがゆえに逆説的に音響としてメチャ面白く響いてくるという感じ、なんとも痛快だよね。
つまり、ノイズを音源に刻印することの面白さってそれで、そのことがアナログなアルビニ・アプローチによって自然に(まさにオーガニックに)成し遂げられているということが本作の独特さだよなと思う。
しかしヨハン・ヨハンソン筋のヒルドゥール・グルナドッティルってちょっと意外な共演ではあって、このあたり『マンディ』つながりだったりするんだろうか?などとも思った。





Machinefabriek 『With Voices』
マシンファブリーク。
今年発売の最新作で、また不思議なコラボをやっている。
8人のヴォーカリスト/ヴォイスパフォーマーに同じトラックを送って声を入れてもらい、それを素材として解体して1曲づつ曲を作っていくという。
この人のコラボ相手ってわりと知らないパターンが多くて、今回もピーター・ブローデリックやテレンス・ハナムくらいしか分からないな。
さておき音はどれも一筋縄でいかない内容で面白い。
わりと柔らかめのトラックで統一しているけど流石の幅広さ。
美しいヴォイス&メロディでポップにも感じる"IV (with Marianne Oldenburg)"、一際実験色の強いコンクレート的な"V (with Zero Years Kid)"、声テクノ感のある中にポエトリーリーディング要素の加わる"III (with Peter Broderick)"あたり特に好み。
毎度毎度手を変え品を変えって感じで飽きないねこの人の音は。
音の心地良さってところは共通していて、意外なことしてると思いきや期待を裏切らないってとこも良いね。




Klaus Lang & Golden Fur 『Beissel』
オルガン演奏家Klaus Lang クラウス・ラングと室内楽持続音アンサンブルGolden Fur ゴールデン・ファーが一緒にやったアンビエントドローン。
編成はオルガンの他、クラリネット、ヴィオラ、チェロ、ハルモニウムとのこと。
まードロ~~~~ンて感じなんだが、この音の質感の素晴らしさよ。
教会録音ということも影響してか、かなりそういう音楽のエッセンスが入っている気がする。
ドロッドロに融けた各楽器の持続音と美しい旋律。
40分1トラックって構成も最高。もーなんも考えなくていー聴くだけ~ってなる。
徐々に緩やかにだけど全体で聴けばどんどん演奏が展開していっている感じ。
オルガンの音がうねる感じがまたよく作用するんだよね、こういう演奏内容は。
部屋真っ暗にして聴いてて脳が耳からこぼれそうなくらい良かったけど、休みの日の午後とかに聴いてもまた良いんでしょうなあ。
こういうただ綺麗な音楽は普通に好き。
というか、最近特に好きになった。

 

プロフィール

 

伊達さん

Author:伊達さん
恐怖と雑音と
カワイイだけがオレの信仰
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