Olivia Block 『』 Henning Schmiedt 『Schöneweide』

というわけでここ数年のいいと言われている邦画を少しづつ観ていっているのですがこれも素晴らしかった、『永い言い訳』。
奥さんが事故に遭って死んだ時に浮気相手と逢ってた人気作家の話。葬儀とかテレビ出演とか色々するんだけど全然悲しみがやって来なくて困るという。
『雨の日は会えない、晴れの日は君を想う』は同じ状況…悼み忘れ…に関するアメリカ映画で見比べると面白いほか、『そして父になる』とも近いとこがあるな…と思ったらこの映画の監督さんは是枝監督のお弟子さんらしいですね。
どうりで、役者の良い表情を引き出す手腕が共通しているなと。
1年近くかけて撮影されているというのも邦画では珍しく、また方法論としてハマっていて、やっぱそういう時間っていうのは、特に人が関わり合う話描こうとすると画面に出てくるものだよなと思いますね。
それと観てて思ったのが、子どもが大人になる時っていうのは周囲や社会が「ココ!」と(成人式とかで)言ってくれるんだけど、大人がおじさんになる時ってそういうのがなくて。なりそびれてしまう人も多い。
法事とかで親戚の子供と会うと、オレ、いつ「お兄さん」から「おじさん」になるんだろう?とか思ったり。この映画は、主人公が40代半ばにしてやっと「おじさん」になるプロセスを描いているとも言えるような。


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そんな感じで出たばかりのピアノソロ作品二本立て
この季節の朝などやはりこういったものが身に沁みる
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Olivia Block 『』
art into lifeで買える
静音実験系のおなじみレーベルAnother Timbreより、サウンドアーティストOlivia Block オリビア・ブロックの無題作品。
この人はフィールドレコーディングしか聴いたことなかったのだが、これ聴くと演奏者としてもとても面白いというのが分かる。
13分~8分~13分の3パートに分かれていて、最初はまあこのレーベルらしいというか。
空気、空間ごと録音しているようなホワイトノイズと反響の中で、散発的にポツポツと置くように互いに関係のない音が放られていく。
不協和なような奇妙な響きで、メロディも構成せず、現音系のピアノってこういうのだなぁという音。
徐々に倍音の揺らぎを狙ったような演奏に変化するも、ピアノ演奏の枠を出ない、まぁこの手の王道といえば王道な。
続く2トラックめはいきなり弦を掻く音から始まり、内部奏法かと思っていると、後ろにジリジリというゼンマイのような音が聴こえる。
と思いきやかなりのスピードでパチパチと鳴るパーカッシヴな金属音。
恐らくこの辺りはモーター仕込みの機械か何かを使っていると思われ、ここに来て急激にピアノ演奏の想像の枠から外れた音になっていく。
途中ほぼ機械の作動音だけの箇所、ゴトゴトと重い金属の転がる音が溢れるような箇所すらあり、もう何の演奏なんだこれはってところまでいく。
3トラックめは、これもピアノに何らかの仕掛けを施していると思うが、低域のドローンと無音が交錯する虚無の境地。
なんちゅうか空間含み、無音の水面に近いところでいろんなものが踊っているような録音でもあるので静かな環境で聴くのがいいかなと。



Henning Schmiedt 『 Schöneweide』
ライナスレコードで買える
おなじみヘニング・シュミートおじさん最新作。
例によって本作も彼らしく普遍的な美しさをもったメロディがそこかしこに散りばめられているのだが、その一方で意外な仕掛けも施してある。
全15曲中の1-7をサイドA、8-15をサイドBと分けて裏ジャケに表記してある。
このうちサイドAの部分はまさに彼の音楽そのもの。空間の響きと演奏に際に楽器が生む軋みまで掬い取ったような繊細な録音で捉えられた"美しい音楽"。
驚いたのはサイドB。
冒頭の"Blauer Wind"からエレクトロニクスの冷たい響きとダブ風な音響加工が施された演奏。
音が反射して増殖するようなエフェクトをされた"barfuß laufe ich"はもっと電子的なアンビエントのような、今までにない響きだ。
パーカッション的な内部奏法にピアノ自体が生むノイズを加工した装飾も加わる"kann dich schon sehen"に至っては本来的なピアノ演奏のサウンドははもはや主軸でないようにも思える。
ラスト3曲はピアノ音源を用いたエレクトロニカのように聴こえる箇所も増えてきて、ここでも、今までひたすらにピアノにこだわってきたように思えるこの作家の意外な表情が窺える。
長いキャリアをぶれずに同じスタイルを貫いて捜索活動を続けてきた人だから、ここにきて新しいところに行こうとしているのが実に新鮮。
とはいえ、何がと言われても困るけどやっぱこの人の音楽だよなぁという感想。
聴き終われば不思議な統一感を感じるし、ちょっと冒険をしてきても全然空気を邪魔しない音楽っていう。冬の朝が楽しみになる。
ぜひ。
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Zach Rowden 『LIVE [SOLO]』 『BONE FOLDER』 Henry Birdsey 『G R A I N / lying to the congregation』 Bordreuil / Rowden 『Hollow』

『彼女がその名を知らない鳥たち』という映画観たのですが、とても良かった。
『凶悪』越えで白石監督作でいちばん好きな映画になったかも。
登場人物はみな人として欠けがある…というか言ってしまえばクズなのだが、どうせクズどもはこうなるでしょう…と思って見ていると意表を突かれる。こちらの意地の悪い見方よりもずっと迷いなく美しい方向へ物語は進んでいくのですよね。
人間の業というか魂というか、そういう部分までいって肯定する、みたいなところを感じる。
抑制された劇伴も心地よく、現実の時間空間を飛び越えていくような幾つかの場面には映画の喜びがあるし、何より阿部サダヲの演技が本当に素晴らしい。今まで自分の趣味と被らず全然出ている映画を観てなかったので、尚更心を奪われた。


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Zach Rowden ザック・ローデンというベーシストの音楽を最近よく聴いている。
ISSUE project roomのツイッターで知ってベースでソロやる人というので気になり調べてみたらすごく良い、かつなんか自分と同じようなことやってたのもあり幾つか音源購入したという流れ。
調べているうちに知ったのだけどマイケル・フォスターのゴーストでベース弾いたりもしているのね。



『LIVE [SOLO]』
タイトルの通りのライヴ音源で、20分ほどのものを2テイク収録している。
この人はベーシストとしては縦と横両方いけるいわゆる両刀で、今回の音源は"Electric"、"Upright"と題してそれぞれの演奏を収めている。
若干脱線するけどこのアップライトっていう言い方は普段あまりしないよな。コントラバス、ウッドベース、ダブルベース、いろんな言い方があるけど、何となくジャンルで使う言葉が違うようなものではっきりしないところではあるといえ。

このライヴ音源、今年の5月と7月に録音されているもので、この人がどんな演奏家か知るにはとりあえず手っ取り早いのではないかと。
まずアップライトのほうを聴いてみると、刻みから始まりもっと音を伸ばしたところまで少しづつ変化していくものの基本はミニマル。
特徴的なのは音のハードさ。ゴリゴリのノイジーな弓使いで生み出される音響はかなりノイズ寄りで、クラシック由来(と他の音源の説明書きにあった)とか言われても驚く。
ほぼ低音域だけ用いた演奏にライヴの空気の感じも相俟って、ダーク極まりない内容。
エレクトリックのほうはもっと即興の要素を感じさせる。何か使って弦を擦っているのだと思うが鋭い金属音のまばらなノイズ。たぶん歪みを用いていて高音が時たま微妙にハウったりバキッと鋭い音が差し込まれたりして安心できない。
中盤からは歪みを強くして音の余韻/倍音で音響を操作するドゥームな演奏。テンションが高くなるわけではないのだが音作りがかなり硬めなのもありやはりノイズ演奏という感じがする。



『BONE FOLDER』
こちらはもともとは今年の4月にカセットで出していたもののようで、中身はエレクトリックのソロ。
3、4分のトラックが3つに10分のものがひとつという構成。
やはり通常のベースギター演奏とはかけ離れたものではあるのだが、"ノイズ"として考えるならそのアプローチはプリミティヴだ。
別の言い方をすると、"演奏"らしい"演奏"で、楽器のあり方、性質を全く無視したようなものではない。
特殊なノイズエレクトロニクスを通したりとかそういうことはしていなくて、シンプルな歪みでブーストしたその音は充分にベース的だと言えると思う。
やはり"CONCRETED"と題された最後の長い演奏がメイン。
聴いてて思うけど、音の残響部分、倍音の偶発的な絡みによって生まれる揺れを意識しているのだろうな。あえてラフに叩き付けるようにピッキングすることで発音の度に異なる余韻のうねりが発生している。
コントラバスの実験的なソロ作というのはわりと出るのだけど、こういうエレクトリックベースを用いた独特のソロ演奏というのを継続的に取り組んで音源化する人って少ないのだよね。
この音源はこの人のそんな部分をよく抽出しているかと。


Henry Birdsey 『G R A I N / lying to the congregation』

この音源はHenry Birdsey(この後ろの名前なんて読むんですかね)というボルティモアのコンポーザーの楽曲をライヴ演奏したもの。
で編成が5本のコントラバス。
ここからもう想像つくようにヘヴィ極まりない地獄のようなチェンバードローン。
40分の尺が全体で6つのパートに分かれており確かに展開はあるのだが終始重くダークなところは変わらず。
バダラメンティ的なヒステリックな動きを見せる箇所などではホラー映画のサントラのようだなとも思ったり。
それまで虚無的な雰囲気だったのがクライマックスのパートでは少しづつ綺麗なハーモニーが浮かび上がってくる。
同じ低音楽器が5本という編成からこうした音響が生まれるに至るプロセスを描く様な展開を全体から読み取るなら、なかなか手の込んだ楽曲だなあとも。
今回紹介している音源の中では一番音楽的だとも言えるだろう。
でこういう重暗チェンバードローン、個人的にもかなり好きだったりする。

作曲者のヘンリーさんはこれにギターで参加もしているけどやはりEボウを用いたドローン演奏。



Bordreuil / Rowden 『Hollow』
こちらはNo Rent Recordsなるレーベルからやはり今年の春にカセットで出たものらしい。
ローデンはコントラバスを用いていて、Leila Bordreuil レイラ・ボードリュールというチェリストとのセッション作。
二人は2015年にフリージャズのコンサートで初めて会い、その際にローデンがマンイズザバスタードのTシャツを着ていたのが打ち解けるきっかけ、とかどうでもいい情報も書いてあるな。
短い5つの演奏で25分とタイトな内容。
しかしこれがムチャクチャカッコ良い。今回買った中で一番好きかも。
金切り声のようなバキバキの音のぶつかり合いから持続音、物音的なアブストラクトな演奏まで幅広いが、どれもおしなべてパンキッシュでスリリング。
ギコギコと錆びたノコギリで無理矢理弾く様な楽器に悪そうなトーン、もう大好きなやつ。
こういうストリングスの無茶な使い方している音源ってやっぱいいもんですね。


このチェロの人マイケル・フォスターとやってる映像出てきたけど素晴らしいっすな。
二人ともアンプリファイド。


やっぱベースって面白いですね
こう自分もいろいろ試しましたけど
 

John Wiese 『Escaped Language』 Sissy Spacek 『Slow Move』 White Gold 『White Gold 2』

最近いろいろ観た中で是非観てもらいたい映画は二本あって、まず『女神の見えざる手』。
アメリカで銃規制法案を通すという無茶を打つ女性ロビイストの話。
と聞くとウェットである種政治的なメッセージを含んだ内容を想像するんだけど(この前の最悪の乱射事件もあり)、実際にはきわめてソリッドかつロジカルな知的闘争の話になっている。情報の密度と速度が凄まじくはじめは圧倒されるものの、段々意識がそこにチューニングされてきて気持ちよくなってくるという映画体験。
銃規制という、今の(アメリカ)社会にあって正しい事なんだけどにもかかわらずどうしても通らないこと、それを通すためにあらゆるダーティな手段…敵の急所を容赦なく打ち、味方をすら欺き、自分自身を壊し…ということが描かれるバランス感覚。主人公がもう本当に人間としては壊れているんだけど、その為にある局面において人間離れした強さを発揮する。
ロジックで戦う女性としてジェシカ・チャスティンの磨き抜かれた鉄仮面のような美貌のマッチさも凄いし、マックス・リヒターの基本ミニマル/ドローンでありつつある一点だけに起伏を温存した音楽使いも素晴らしく。

もう一本『ソニータ』。
イランの女性監督の撮ったドキュメンタリーで、アフガンからイランへ戦火を逃れてきた難民の18歳の少女ソニータを撮っている。
ソニータはラッパーになりたいのだが、家賃もスタジオ代も払えず、女が歌を歌うなんて駄目だと言われ、挙句実の親から結納金目当てで嫁にと売りに出されそうになる。
まあそういう単に意識の高いだけの映画なら大して面白いとも思わないが、この映画の凄いところは、映画が進むにつれある種ドキュメンタリーの限界を超えていくような展開を見せるところにある。
通常、被写体の現実のありのままの姿を捉えることが、客観性が常に確保されていることが、ドキュメンタリーの条件だと考えられている。ところがこの映画の監督は、(スタッフと客観性についての議論をしながらも)ソニータのあまりの境遇にキレてしまい、積極的に彼女の人生に介入していくことになる。
掟破りだがスリリングでしかも実に痛快なものがある。つまり、映画は世界を変えられる。現実を変えられる。
ソニータのラップの切れ味も鋭く抉ってくるもののある内容ですばらしい。


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今回はJohn Wiese ジョン・ウィーズ関連新作三枚を。


個人名義新作はライヴ盤片面LP。
20分1トラック、昨年のパリでのパフォーマンスを収めたもの。
以前の来日の際にもこうしたセットで演奏していたけど、内容はアルバム『Deviate From Balance』を凝縮してひとつの流れの中に封じ込めたようなものになっている。
アンビエント~金属質なドローン~物理音っぽいコラージュ~テープをめちゃくちゃに切り刻んだようなスピードの早いノイズとかなり幅の広い展開を見せつつ、全体のトーンとしては、ああ、これはウィーズだな、と思わせる一貫性がある。
近年に至ってこの人は本当に他の誰にも似ていない自分のサウンドというものの強度を上げきるとこまで上げたよなと感じる。
最早それは単純にノイズと言い表せるものではないような、むしろその棚に収めたときにこぼれ落ちてしまうものが沢山あるような…しかし同時に通常の音楽から絶えず疎外されているようなもの、ノイズ、と表現せざるを得ないものでもあって、つまりはノイズを内側から食い破って拡張するような音。
言葉本来の意味でのノイズ、つまり外-音楽、言葉で括ろうとしたときに逃れていくもの。だからこれはエスケイプド・ランゲージと名付けられているのではないだろうか?


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Sissy Spacek 『Slow Move』
White Gold 『White Gold 2』
この二枚は同じもののふたつの側面と捉えていいと思う。
ホワイト・ゴールドというのはウィーズとPhil Blankenship フィル・ブランケンシップ = Cherry Point チェリー・ポイントのノイズユニットで、また今回のシシー・スペイセックの編成は近年のウィーズ/ムンマにブランケンシップが加わったものとなっているので。
シシー・スペイセックのほうはこの名義らしく毛羽立ちまくったロウな音質で荒ぶるノイズで、今回はエレクトロニクス中心に制作されているのか、洪水のような雑音と叩き付けるメタルジャンクのバキバキのサウンドをぶちまけたもの。
ホワイト・ゴールドはもっとラディカルなハーシュノイズ。ライヴ音源とスタジオ音源の2曲で構成されていて各20分ほどの長さ。
軋むような物理音を多用する硬めのノイズというのがこの二人の共通項で、このユニットもまさにそういう音になっている。様々な音が攪拌されているのが聴き取れる内容で、多層的な音作りの巧妙さはさすがといったところ。
と書いてみたものの二作ともかなりハードなノイズであることには間違いなく、ある意味こういうユニットのところでゴリゴリな表現をしているからこそ個人名義ではもっとディープで繊細な音になっているのかなという気もする。
この音の幅自体がウィーズの今のアーティストとしての充実ぶりを表していると言いますか。







 

Mats Gustafsson & Joachim Nordwall 『A Map of Guilt』 Kasper T. Toeplitz & Julien Ottavi 『Blast of Silence』 Marco Fusinato 『Spectral Arrows: Venice』

えーとまずこの前即興ロックバンドOtaku Young Teamセッションしました。

ふだんサイゼリヤで活動しています


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bandcamp見てもらうと分かる通り、ほぼグレー~ブラックのダーク系で統一されたアートワーク、出しているものも暗黒ノイズと統一感のあるラインナップが印象的なレーベル、ポーランドのBocian。
かなり好きなのだが今回また3つほど買ったので書く。


Mats Gustafsson & Joachim Nordwall 『A Map of Guilt』

お馴染みのバリトンサックス奏者(ここではオルガンもやっている)Mats Gustafsson マッツ・グスタフソンと自身のレーベルIdealでも暗黒エレクトロニクスを展開するJoachim Nordwall ヨアキム・ノルドウォールの共作。
6曲入りで2分から19分まで曲のサイズには幅がある。
が、カラーは一貫している。
ノルドウォールの色がより濃く出たような、ミニマルで荒涼殺伐とした夜の砂漠のようなドローン~ノイズをやっている。
フリーフォームなサックスのフリージャズ的要素、一定のパルスが生むテクノ的要素というのも時折前に出てくるけど、音のテンションが上がるようなことはない。
低域で蠕動するように鳴り続けるノイズが全体のムードを決めている。
やはり聴きものは19分のタイトル曲かな。不安を煽るような強迫的なビートと揺らぐオルガンの持続音がズブズブと流れ続けてなかなか落ち込んでくる曲。
セッションというにはきわめてコンセプチュアルに作られているのを感じる盤で、これぞBocianって感じでもあり。


Kasper T. Toeplitz & Julien Ottavi 『Blast of Silence』

うちでは何度も取り上げているベーシストKasper T. Toeplitz カスパー・トープリッツ。
自作の特殊ベースギターをこれまた自作の特殊なソフトに通して圧巻のノイズドローンを生成する唯一無二のベーシスト。
Julien Ottavi ジュリアン・オッタヴィははじめて音源買ったかも。普段はエレクトロニクスメインのようだがここではシンバルとボイスをそこに通して使用しているようだ。
20分×2の潔い構成だが音もやりたいことがとてもはっきりしている。
真っ黒の超重圧ノイズドローン。
無数の楽器が折り重なっているような案外複雑な響きと単純な音の重量にやられる。
たまにホワイトハウスばりのブチキレアジテーションボイスが投下されるような展開もあり。
流れとしてはゆったりしていて過剰にいろいろ詰め込んでいるような感じはないのだが、こうして聴くとやっぱト―プリッツの音って情報量多いなあと。
曲名が"Quelques éclats d'un effondrement soudain / Odblaski nagłego upadku"とかとんでもなく長いのだが、字面見ながら音聴いてると「なんかわかる…」ってなるな。


Marco Fusinato 『Spectral Arrows: Venice』

オーストラリアのギタリストMarco Fusinato マルコ・フシナトはわりと気の狂った音楽家で、ギターを自作のエレクトロニクスに通してギターの面影が欠片もない津波のようなノイズ嵐を生む。
近年はこのスペクトラル・アロウズと題されたパフォーマンスを各地で行っており、これはそのヴェニスでのものから抜粋された音源。
で、このスペクトラル・アロウズ、何かと言えば、ギターを8時間弾き続ける、これだ。
そんでもって音がコレよ。ほぼキ×ガイである。
聴いててもうホントギターの要素全くないぶっ壊れたノイズなのだが、困ってしまうのはこれがドエラくかっこいいことかな。
Sunn O)))的ドローンドゥームが下地に聴こえるような箇所もありつつ、その上にもとにかく気の狂った量のノイズをラーメン二郎ばりに盛り付けていく。これがまたとんでもない高密度で展開しており、単調さの全然ない気持ちいい音なのだ。合間にフッと訪れる静寂もナイス。
実は今回はこれ目当てで買ったのだけど、やっぱ相変わらず同じことやってるし相変わらずクソカッコいいなあ…とホッコリしてしまった。
現行の作家の中でもエレクトリックギターの限界に挑んでいる人の一人という気がする。
これの前の作品も強烈な女性器ジャケでこのレーベルから出しているが、そっちもおすすめ。





te_ri 『kasugai low gravity』 Meysson/Loubatière Duo 『Sédition』

今更ワン公などで泣かされるものかよ…と思いながら『僕のワンダフル・ライフ』観に行って、まんまと劇場で嗚咽。
生まれ変わる犬の50年史であると同時に、アメリカの、アメリカ人の50年史でもあるということが泣きの罠というか。
やっぱね、美しいアメリカをフィルムに焼き付けるということは、映画がずっとやってきたことのひとつではあるんですよ。

韓国傑作ゾンビ映画『新感染』前日譚アニメ映画の『ソウル・ステーション/パンデミック』も素晴らしく。
誰も手を差し伸べない底辺と壊れた社会の姿が苛烈に描かれており、クライマックスの強烈なツイストでやって来る胸が潰れるような絶望に打ちのめされる。

旧作ではネトフリで観た『そして父になる』、傑作でしたね~
『三度目の殺人』もなのですが、是枝監督は福山雅治の良さ、というか、言っちゃえば福山をかっこ悪く、ある種ダメに描くことを通して、その役者としての良さというのを深いところから掬い上げることができているなという感じ。


あとエフェクター買った
voyager I
spaceman effects voyager I
ここ最近はトレモロの別の使い方みたいなのをいろいろ試しているのですが結構楽しい

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ギター/ドラムデュオ二本立て
ロックンロールの最小単位として…まあいろいろ例外はあるにせよ…このかたちを最初に想像する


te_ri 『kasugai low gravity』
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kasugai low gravity
バンドキャンプもあるでよ


te_riは前作『far east debug』についてだいぶ前に書いたけど、ギターとドラムのデュオバンドで、ものすごく雑にくくるならマスロックということになるのかな?
雑に、って言ったけど、この人達の作曲は発想の最初の時点で通常のそれとは全く異なっている。
インタビューで親切なことに譜面とか使って解説してくれているけど、単純化すると、譜面作成ソフトに無理な入力をして吐き出させた、言ってみれば壊れた譜面をあえて演奏してみる、ということ。
そうして作られた音楽は…これを何と表現すればいいのだろう?
予知能力者の即興演奏というものをイメージしてみる。語義矛盾のようだけど。
フリーインプロ然とした、混沌のように感じられる瞬間がつらなっているのだが、ポイントポイントで不思議に辻褄が合っていく。先に何が起こるのかがところどころ分かっているような。
あるいはその方法論から単純に、エラー・ロックという言い方をしてみる。
間違いや失敗というものが別の面白さにすり替わるということはアート表現ではよくあるけど、それがハプニングとしてでなく最初から織り込まれているというのは、これまた語義矛盾的な奇妙なところがある。

しかしここまでムチャクチャやっておいて、表面の音の響きとしては甘く柔らかいようなアンサンブルというのがまた面白いよな。
もちろんそうしてなんとなく聴くのを許さないようなエッジがそこかしこに立っている、集中して聴き始めれば刺激的この上ない音楽なのだけど。
前作よりも客観的な?二人の演奏を客席から見ているような距離感の録音もクールで良いな。
全然別のジグソーパズルを混ぜてムリヤリ組み立てたようなラスト2曲が特にお気に入り。





Meysson/Loubatière Duo 『Sédition』

バンドキャンプのほかLPもありますぞ

フランスのレーベルDegeliteより出ていたギターとドラムのフランス人デュオ。
面構えが素晴らしすぎますがいきなり出てきた感のあるこのCyril Meysson シリル・メイソンというギタリスト、音源聴いて一発で魅了された。
ソロ音源でドローンなども作っているようだけど、今回のデュオ作品から感じられるのはシンプルなひとつのルーツだ。
映像見たらジャズマスを振り回していてやっぱりなぁと思ったのだが、ソニック・ユースや即興やっているときのサーストン・ムーアを即座に想起させるザクザクで時に甘く痺れるようなオルタナノイズギター。
この手の前衛系ギタリストとしては珍しいくらい、ジャズのにおいがしないように感じる。
そう感じさせるもうひとつの要素。
これはドラムのRodolphe Loubatière ロドルフ・ルバティエが強く引っ張っている感じもするのだが、ムードを醸成するようなランダムな散り散りのノイズから徐々に締め上げて強烈に弾けさす展開、最早ソニックユースのアウトロという感じの長く長く引きずるフィードバックノイズ、こうした明快な…ロック・ソングのような…ストーリーを語りおろす。
どのテイクも18分半の明確なストーリーがあって、かなり計画的にやっているのだろうという感じがする。

わっと盛り上がる箇所でも単に弾き/叩きまくるというよりは音の広がりを演出するような。空間系エフェクトでシューゲイザー的に聴かせるなど。といっても根のところが鋭い感じの鋭角ギターという絶妙なバランス感覚は一貫してあるのだが。
特にBサイドのチタニウム・エクスポーズを綿菓子機で掻きまわしたような演奏が好きだ。
キャンディの瓶にダイナマイト花火を突っ込んで思いきし気持ち良くなっちゃおうぜそう一緒にさ……


どうですべらぼうにカッコいいでしょう



しかしここ数年で同編成でアート・リンゼイやビル・オーカット、サーストン・ムーアといった人々が一様にシンプルなノイズロック形式の即興演奏に取り組んでいて、タシ・ドルジみたいな新しい人も出てきて、というのがなにか即興演奏のプリミティヴがえりみたいな感じがして面白い状況だなと
 

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