The Thing 『Again』 Lana Trio 『Live in Japan』


CDはまだ届いてないのだが、デジタルは発売日から聴けるようになったので

随分久しぶりな気がするThe Thing ザ・シング最新作。
今回は21分の長尺演奏1トラック+9分の演奏が2トラックのシンプル仕様。昨年6月に二日間で録音されたとかで、そんな内容も含めちょっとライヴ盤ぽいような感じ。
2曲目のみフランク・ロウのカバーで、あとはサックスのグスタフソンとベースのフラテンのオリジナル。

まず初っ端キツいやつをくれる"Sur Face"から問答無用にかっこいい。
混沌とした即興演奏と静かに奏でられるブルージーなテーマセクション、猛烈なドラムソロ、全く別の曲のようなリフ主体のパートと様相を変えながら展開する演奏。
合間合間に聴こえる、メンバー三人の絶叫。
傑作盤『Live at Bla』での"Awake Nu"とか思い起こさす最高さがある。
今回はラストの曲以外ベースがウッベ弾いてるのだが、それもありプリミティヴなジャズ寄りの音という感じ。
続く"Decision In Paradise"は二管聴こえるんだけどこれはどういう事?トランペットっぽいのだけど…。
と思ってライナーを読むとジョー・マクフィーが加わっているっぽい。
あともう一個ライナー読み進めて気づいたのだが、今回の盤はバリトンなし。テナーとソプラノだけでやっている。
まぁ管の違いはあれどプレイヤーとしての個性がめちゃくちゃ出ていてやっぱ「あの音」だな…みたいになるのだが。
この曲の演奏も全体が即興演奏に聴こえるようなところがあって、前トラックと地続きのフリージャズの空気。
ラストの"Vicky Di"、毛羽立ったトーンのエレべの音が聴こえてくるイントロ代わりの即興から、他二曲とは全く手触りが異なる。
猛烈な手数で打撃音をばら撒きながら疾走するドラム、ノイズと化した歪ベースソロ。
一瞬のブレイクから立ち上がる重いビートとロックンロール・リフ、キターーーー!てな具合の名曲"Red River"直系ノイズロックフリージャズ。
素晴らしい演奏だけど、やっぱこういう曲はバリトンで聴きたいなーっ!ってのがありライヴでそういう風なバージョンあったりするとまた良いなぁとか。


最新ライヴ映像
7分くらいから"Vicky Di"やってる




ジャケにカタカナで「ライブ イン ジャパン」て書いてあってもうその時点で心強さが凄いこの盤はノルウェーの脳筋系レーベルVa Fongoolから出ていたもの。
でまぁ大反省大会なのだが、タイトルの通りこの人達2014年に日本来てたのですね。千葉のキャンディでやってたようだが朦朧としててスルーしてしまったっぽい。この盤自体結構前に出たものだしなぁ。
まぁ反省ここまでで、Lana Trioはこのレーベルらしい勢いある即興演奏を繰り出すフリージャズトリオ。
編成が面白くて、ドラムにピアノとトロンボーン。
機動力のあるピアノと逆に音の重いトロンボーンのパッキリ分かれた感じが個性的なサウンド。
18分~26分の長尺トラック×3のボリュームある構成。で、ストレンジな音響で聴かせる場面も多いが、自分としてはやっぱワーッと来る感じの箇所に魅かれる。
ラストトラックの"Through Sound"はそんなところが惜し気なく出ていて特に素晴らしい。
山下トリオ的なサディスティックなピアノの耳責めが気持ちいい。
ノイズっぽいトロンボーンの濁ったトーンに、メリハリ付けてバッカンバッカンいくドラムの痛快さ。
わりと何回言ってんだよ感はありますがこういうジャズが好きですね私は。



てな感じのトリオもののジャズ二枚でした
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talibam! + Matt Nelson + Ron Stabinsky 『Hard Vibe』 Talibam! and Alan Wilkinson 『It Is Dangerous to Lean Out (E Pericoloso Sporgesrsi)』

このブログでも大昔に書いているんだけど、僕がフリージャズとかノイズとか聴き始めたときに好きで聴いてたバンドでTalibam!というニューヨークのデュオがいる。
ローファイなキーボードでミニマル&サイケデリックなフレーズを連発するMatt Mottel マット・モッテルとフリーフォームでパンキッシュなドラミングのKevin Shea ケヴィン・シーの二人で、10年以上活動を続けている。
7月にその片割れのマットが来日していて、六本木のスーパーデラックスでライヴをしていたのを見に行って。
Talibam!の初期の多分結構レアいCDRを持っていって話していたら


なぜか後日呼び出されて一緒にセッションするという面白すぎる事態になりました

わりと自分の人生の中でもトップクラスにクレイジーな出来事だったけど単純に楽しかったのでまあいいか


そんなTalibam!の最新音源二つ
DSC_0846.jpg
ってなんかいっぱい撮ってしまったけど青いカセットとその下のコラージュ調ジャケットのがそれです

『Hard Vibe』
bandcamp
ESP diskから出たLP(うちにあるのはライヴ会場で買ったCD版なんだけどfor promo use onlyと書いてある)。
サックス奏者Matt Nelson マット・ネルソンとオルガンのRon Stabinsky ロン・スタビンスキーとの四人編成での演奏。
サイドA/サイドBの二曲構成。各20分。
フュージョン風のリフを延々繰り返しながらサックスとオルガンが上で自由にソロを吹き(弾き)まくり、徐々に全体が変化していく。
マット・ネルソンのサックスの無限に湧き出すようなソロが凄まじい。途中からエフェクトも駆使して更なる別世界に突入。
両サイドとも同じリフを用いながら、即興で異なった展開に入っていくところが面白い。
こうしたミニマルベースの手法は今回見たライヴでもマット・モッテルの今取り組んでいるところなんだなぁと感じたので、それ踏まえて聴くと納得。

『It Is Dangerous to Lean Out (E Pericoloso Sporgesrsi)』
bandcamp
こちらは英国フリージャズ重鎮サックス奏者Alan Wilkinson アラン・ウィルキンソンとのトリオで2013年のライヴでの録音のカセット。Astral Spiritsというレーベルから。
この音源も同じく20分×2サイドの二曲構成と似たものだけど、内容は大分異なる。
ガッツリと聴かせるフリーフォームの即興演奏だ。
三者の演奏の卓越ぶりがよく分かる内容で、特にやはり即興をやらせるとケヴィン・シーというドラマーは他の誰にもできないドラムを叩く、モンスターだなあと。
普通なら即興であっても無意識に出てしまうようなビートや小節、タイム感覚を全く無視したドラムを叩ける稀有なドラマーだ。
演奏は全体に渡ってかなりゴリゴリの爆音仕様で、モッテルが用いているのであろうエフェクトを用いたノイズ展開もあり。
ウィルキンソンのサックスは例によって四六時中ビキビキのトーンで叫びまくっている。容赦なしだ。
これはもう自分のようなこの手のもの大好き人間には堪らない内容。


こうふたつ並べると全く違った内容だけど、シンプルな編成ゆえかどちらもしっかりとTalibam!の作品、という感じ。
僕の好きな音楽をやってくれるバンドだなと改めて思ったのだった。



 

Slobber Pup 『Pole Axe』 Yes Deer 『Get Your Glitter Jacket』

最近聴いてたやつで、これがボクの好きなジャズです!って胸張って言えるジャズド真ん中音源二本挿し、あ失礼、二本立てです。
ここのところずっと二本立てで書いてますけど、これはいろいろメリットがあって、音源に対してほど良く客観的になれるとか…まあガッツリとコミットして語りたい音源もあるんですけど…、よっし!ブログ書くぞ!みたいなのが一回で二本分効くとか…
あとやっぱチョモランマカレーとか次郎よりもラーメンカレーセットのほうが嬉しいじゃないですか?普通は。まあ基本的にメチャクチャ味の濃い料理しか出しませんけど、ウチは。


rare noise
これはその時届いた音源まとめて撮ったんでレーベルの別リリースも写ってるんだけど…
去年のベストで取り上げさせてもらったメルツバウ絡みの音源などもあって自分の中で信頼のおけるレーベルになっているイギリスのレアノイズ。
こっから出てたSlobber Pupというバンドがカッコいいの。


現編成の映像はなくて、これは1枚目のときのなんだけど、こっちがロック寄りとすると今はもっとジャズ寄りという気がする

Jamie Saft - organs, keys
Joe Morris - guitar
Mats Gustafsson - saxophones
Balazs Pandi - drums
この前50になられたそうだけど相変わらず狂った音楽聴いてりゃこの人に当たるみたいな状況のグスタフソン、メルツバウの相手役ドラマーとして多数ライヴをこなしているバラシュというだけでわりと間違いない感じではあるんだけど、バンドの中心はJamie Saft ジェイミー・ザフト、Joe Morris ジョー・モリスの二人のよう。
バンドの前作ではグスタフソンの代わりにベースでトレヴァー・ダンが参加と、楽器編成からして違ったりする。
アルバムは30分、20分、5分の三つの演奏からなるシンプルな構成。
冒頭から不穏なオルガンドローンと嵐のドラムにゴリゴリに吹きまくるバリトンで始まり、ミック・バールばりに弾き倒すメタルギターが乱入…と土砂災害のような演奏。グッと抑制されたパートではオルガンのうねる持続音を中心にダークアンビエント調。そこから捩子を巻いていくのがバラシュのドラムスなんだけど、やっぱこのドラマー面白いと思うのだよね。ここでは特に叩きまくっているからよく分かるけど。
この手の即興ものメインにやる人としては珍しく、ジャズ的でないビートというか。ヴェネチアン・スネアズのライヴでドラムを叩いたりもしているとのことだけど、かなり硬質で直線的なパルス、でもグルーヴとしては直線ではない…つまり、曲線で曲がりくねってるのではなくて、カクッカクッと鋭角で曲がっていくんだけど、その角がめっちゃ多いと。ジャズ的な繊細なダイナミクスの調整をするような演奏ではない。モロにメタルなブラストビートカマしたり、メリハリの効いたロック的な叩き、ビートを出していて、それでいて凄まじい手数、テクニックという。なんかこう書いてるとチッペンデールあたりと対決したら楽しそうだな~。
ドラムについてばかり書いてしまったけどスラッジ―でダークなアンサンブル、火が付けば黒々と渦を巻くブラックホール出現の爆音即興展開と、ジャケから想像できるような音のコンセプトをも感じさせる黒光りの金属ジャズでっせ。
ラストの"Incendiary Axe"はマンガハンマーで後頭部ぶっ叩くような重く激しい一撃。
試聴もありまっせ



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この人達はバンドキャンプで買ってね

公式サイトのタイトルからしてどうかと思わせる多国籍連合軍トリオYes Deer、見た目若いな~みんな20代半ばとかかな?
とりあえず演奏を見てくれ


映画のハンニバルで自分の脳を目の前でフライパンで調理されて食べさせられる人がいたと思うけど、その場面を思い起こさせる演奏

Karl Bjorå - guitar
Anders Vestergaard - drums
Signe Dahlgreen - saxophone
今回紹介する音源の他にも以前に一枚出しているんだけど、それはオーダーしてまだ届いておりません…
てなわけで『Get Your Glitter Jacket』、7曲35分で吹き抜ける一陣の風のような爽やかな演奏を聴かせてくれる。
曲がり角の先で待っていていきなり腰の入った長ドス打ち込んでくるような突拍子のないビキビキサックス、ゲリラ豪雨のように空の色と関係なく暴虐のドラムソロ的独断専行型演奏を捩じ込むドラムス、ファズファ×クトリ―全開にしてブチブチピーピーグチャと全くまともに演奏する素振りすら見せない崩壊したギターと、マウンドに立った瞬間から一足飛びにバットに大量の釘を突き立てているような狂った連中。
ぶっ壊れたノイズトーンでスラッジリフを叩き込み冒頭から1オクターブ高い声でボクたち、ジャズが演りたいです!と挙手宣誓してみせるタイトル曲はMorthanaの"Trakk1"を聴いたときの衝撃を思い出させるってかクリソツなのよこれ。
"楽器本来の音"をミンチ機にかけて今夜のハンバーグのタネとして冷蔵庫にしまったようなサックスのクソ壊れた演奏で台無しにして曲終了、間髪入れずドリフばりに倒れ込んでくる巨大ハリボテで背後からどつかれるような"Rice Crackers"、凄まじいスピードで意味不明な音が飛び交うが、どう考えても鼓膜に悪い音しか鳴ってないんで健康志向の人は聴かないで下さい、お願いします。
以降も"Semi Soup"蝉スープとかクスッとくるタイトルの曲を挟みつつ金太郎飴的テンションでアルバムは進行、急停止、"Frikirke"って曲では6分半の尺を使ってスケールのデカいリフを中心に演奏を組み上げ片手間的に「こんなんもできますよ」を見せてくれる。
んでこれは?後半はちゃんとしてるのか?と思わせてやって来る"Side Cut"という曲、この曲のドラム聴いたら、仕事の嫌な事とか人間関係のしがらみとか忘れて、焼き肉の食べ放題にでも繰り出したいと思いました。ここまで通して聴いてるとへ~こんなもんかあ~ってなりかけるんだけど、この曲の5分のとこで一端一時停止して深呼吸して我に返ってみてから再度再生ボタン押すと絶対爆笑できますのでお試しあれ。
あぁ~なんかもう特に言う事も無えし言葉で説明すんのも馬鹿らしい音楽なんでー、聴きながらクスッって笑えるような瞬間がいくつもあって、あっ、最近こんな気持ち忘れてたなぁ…、空ってこんなに青かったんだ…私ってこんなにちっぽけだったんだ…似顔絵かくよ…ホント似てなくて…思わずボクら…みたいな感じになって忙しい日々の合間に思い出したように空を見上げた。
明日もっといい人間になれますように。いつかきみの力になれるように。そんな気持ちにさせてくれる、今この時代の底辺にコビりついた一部のクソどものためのサウンドトラック、ジャンク、ノーウェイヴ、雑音、ジャズ、で気になる方はどうぞ。

続きにちょっとライヴ映像貼っておくね

 

川下直広カルテット 『初戀』

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初戀

完全即興じゃない、通常のジャズのフォーマットで演奏されるものを聴くときは、いわゆるスタンダード集が好きだ。
曲を演奏するタイプのフリージャズでもそうで、その意味では、ライトニングボルトとかホワイトストライプスとかを演奏するシングのアルバムもスタンダードとして聴いている。
それは自分が音楽を聴くときにアレンジの部分ばかりを聴いてしまうのと関係している気がする。
自分でバンドでジャズを演奏していたときも、ある定番の演り方というのが決まっている曲をいかにめちゃくちゃにしていくか?みたいなことが好きだった。





この曲もそのときにやったな。
で、まあこの映像、たまたま見つけて、スゲーカッコいいなと。
で調べてみたらこの編成+ピアノのカルテットで録音されたスタンダード集が今年出てるというので。買ってみた。

地底レコードより16年作。
8曲1時間。

川下直広 - tenor sax
山口コーイチ - piano
不破大輔 - bass
岡村太 - drums

演奏している面々の事全然知らない中で、奇跡的にドラム叩いてる岡村さんだけ名前知ってる&ライヴも何度か見ているのだけど、
何で見てたかっていうとこの人は現行の非常階段のドラムですねはい


川下直広のサックス、それに尽きる。
この人のサックスは何かというと、歌だ。過剰な歌だ。
口ずさみ呟いて囁いて泣き怒り叫びをあげるような、感情直結演奏、譜面に落とし込めないニュアンスだけで演奏が構成されている。
特に常識の範疇を越えて常に揺れ続けるヴィブラートっぷりは、ちょっと他では聴いたことがない。
これを聴いていると、やっぱサックスは呼吸の楽器だなぁというのを改めて感じる。

アルバムの中の半分を占めるバラードの演奏で、音符と音符の合間に様々な響きを込めていく川下の個性がよく発揮されている。
特にバカラックの"Alfie"の演奏での歌いっぷりは男臭くも清々しい。こういうバラードの多いアルバムで、演奏が全然お洒落でなく、むしろ汗臭い男臭いっていうのはめちゃくちゃいいよな。

一方で激しく熱量のある演奏もアルバム中に差し込まれるようにあって、"不屈の民"として知られる"El Pueblo Unido, Jamas Sera Vencid!"ではバンド渾然一体となってフリーフォームの絨毯爆撃めいた演奏を展開する。
演奏のテンションが頂点に達するのは13分越えの"Things Have Got To Change"で、ラテンのリズムパターンに煮えたような音を叩き込みまくり、空を割るような咆哮を轟かす川下筆頭に、各楽器、圧巻のソロを披露している。

ノスタルジックでリラックスした空気の"The End Of The World"を挟み、やはりアルバムはバラードに終わる。
その最終曲は尾崎豊の"I Love You"。
あまりにも素晴らしい。
ソロもなく、曲の形に忠実に演奏されているのだけど、それがあるべき姿として鳴っている、つまり、無数の歌い手によって歌われてきたそれと同じように、ここでも川下の独特な歌いまわしによって、必要な表現はすべて為されている。
演奏の合間の呼吸の音が特によく聴き取れる録音で、やはりここで演奏は歌と捉えられているのだと感じる。
それ以上に必要なものはもう何もない。

てかこの曲大好きなのですよね。
聴きながら口ずさんでしまって、やっぱホントいい歌だよなみたいな。
"悲しい歌に愛がしらけてしまわぬ様に"って。
 

Raoul Björkenheim eCsTaSy 『eCsTaSy』 『Out of the Blue』



ポストパンクがしたくてセッションしてました


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ecstasy.jpg
Ecstasy
Out of the Blue

Raoul Björkenheim - electric guitar
Pauli Lyytinen - saxohpones,mey,kalimba
Jori Huhtala - contrabass
Markku Ounaskari - drums

このブログを始めて最初に感想書いたCDがBoxの『Studio 1』で、そこに参加していたのがこのRaoul Björkenheim ラオル・ビヨルケンハイムだから、結構長い付き合いになる。
そんなラオルの久々のリーダーバンド作がこちらの二枚。ちょっと前にもラオル参加作を出していたレーベルcuneiformから。

以前にやっていたScorch Trioでは基本的に一瞬のフレーズ、リフのようなテーマがあってほぼ即興という印象だったから、そうしたジャズを演奏してくるのかと思いきやまた違う方向性。
ぐっとスタンダードなジャズの話法に寄せて、きっちり書かれたテーマを演奏して、パートも個々の役割をこなしている。
ラオルの変態ギターを心ゆくまで堪能できて、それがハイエナジーな筋肉系ジャズのゴリゴリな演奏に乗っているという感じ。
一枚目の『eCsTaSy』はゴリゴリな要素に、二枚目の『Out of the Blue』は変態な要素に若干寄ったような印象。
それぞれ8曲、9曲入って40分ちょいの尺、基本ラオルの作曲ながらバンド全体で作られたものもいくつか入っている。

『eCsTaSy』冒頭の"El Pueblo Unido"、シンフォニックかつカラッとして明快に歌うメロディをサックスとギターのユニゾンでやって来るので意表を突かれる。中間部のソロパートはギターに充てられていて、自由な節回しで歌いまくる。続く"Sos"はソリッドでパンキッシュなテーマ部にソロはサックスとベースがとっていて、ギターはサポート的な立ち位置。真逆のやり方を見せることで「ここでは色々手広くやりますよ」というのを聴かせているわけだ。

ラオル以外のメンバーは名前聞いたことがなくて、Scorch Trioはおなじみのシングのリズム体だったことからもまた意外な部分なんだよね。しかしこの人達、単なる無名ジシャンというわけでなく、ラオルが背中を任せるも納得の、と言うべきか、パッと聴きだけでかなりの腕利きと分かる。
それぞれがラオル相手に一歩も引かずソロをとっていくし、後ろに回ってもかなり主張する演奏をしている。なんというかみんな暴れん坊。行儀悪くも吼えて打ち付けるような演奏でゴリゴリに煽っていくスタイル。やっぱベースが非常によくて、野太い音色かつ強めのアタックでバッチンバッチンいっている。"As Luck Would Have It"という曲がいきなりベースソロで始まり、曲中ウッベに似つかわしくないようなマッシヴなリフを弾きまくり、煽られたラオルのギターも脳天にくるえげつないソロをカマすというサイコーな化学反応になっている。

"Subterrancan Samba"では原型を留めぬまでに変調された電子音ギターと強迫系不協和ベースの変態的な仕上がりだけど、全体としてはストレートにプログレ~フリーロックな要素含みつつバキバキ進んでいくフリー気味ジャズで聴けるのがこの一枚目かな。
クライマックスの"The Sky is Ruby"はUMOというビックバンドともに録ったその名も『The Sky Is Ruby』という作品にも収められてい
た曲で、これがやたらめったらカッコいい。ここで小編成で再び聴くことができたのも、ラオルのファンとして嬉しく。


『Out of the Blue』でまた異なった内容と思わせてくるのが冒頭の"Heads & Tales"。音数を絞ってダークなメロディをギターが担うテーマ部、ソロパートにおいてはほぼインプロ的な内容のリズムを持たないバッキング。ここではサックスがキレまくっており、引っ張られるようにリズム体もかなり熱の入った演奏を見せてくれる。
"A Fly in the House of Love"がまたそれまでになかったタイプの演奏で興味深い。弓弾きのベース、持続音を継いでいくような管とギターのフレーズ交換に始まり、ノイズ的な音色、調を感じさせないモチーフ、全体が冷めたテンションで展開するディープな音響ジャズ。

"Quintrille"、"Uptown"と純粋にカルテットの演奏を楽しめる曲もあるけど、全体のトーンとしてはやはりダークなアルバムという感じがする。前衛的な面の強く出た曲の中でも、"You Never Know"あたりはかなり崩した演奏と高いテンションがひとつになっていて特に良いな。

ラスト二曲がまた面白くて、"Roller Coaster"はハイスピード&ハイテクニックなテーマ部とムチャクチャやってる即興パートのコントラストで楽しませてくれる。ベース~サックス~ギターとソロを回していく展開が短い中に凝集されていて、アルバムから一曲聴かすならこれという感じもある。
"Zebra Dreams"は10分の長尺にわたる曲なのだけど、ミュートした弦のアタックだけのミニマルな演奏が延々続く箇所とか、現音的な演奏がところどころあって、全体がかなり細かく書かれた曲なのかなと想像させる。こういう曲をラストに持ってきているあたりも前作と違ったコンセプトを匂わせるな。

一枚目はフリー要素の混じったハイエナジーなプログレジャズとして、二枚目はよりフリー強まるダークなアヴァンギャルドジャズとして、違った内容で楽しめる二枚かなと。ラオル先生の変態ギターは変わらない、というか、これがこの音楽の同一性を保っているというか…。民族音楽のバンドと一緒にやってたこともあったと思うけど、トライバルな、かつ無国籍な、奇妙な音使いであり、ジャズにそれやるか?というメタリックな音作りであり、電子音的な変態エフェクトであり、ビブラートみたいな揺らし方の妙味であり、この他にはちょっとないような…うーんやっぱこの人には変態というのがしっくり来るのですね。一般にこう変態演奏者みたいに言われる人ってそうかあ?みたいなのも多いけど、この人は自信を持って送り出せる変態といいますか。
アルバム単位でみるとやってること自体は様変わりしてるがラオル先生のギター好きな人にはご褒美でしかないバンドでしょう。良い。


続きにライヴ映像など

 

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