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Bruce Russell 『Metallic OK』 Siavash Amini 『TAR』 Bill Orcutt 『Why Four Strings?』

最近話題になっている3Dプリンターでお手軽に作れる安楽死マシン、なかなか哲学的な問いを投げかけてくるなあと思っていて。
これの奇妙さは、電気椅子と並べた時に際立ってくる。
刑務所は、圧倒的に低コストで、特別な技術を必要とせず、苦しみのない死をもたらす(らしい)この機材を導入するべきだろうか?
するべきでないというなら、死刑は苦しみの為に行われる…ある種の拷問であるということだろうか?
例えばこれを導入することで「死刑になりたくてやった」タイプの犯罪が増えるというような仮定をしつつも、他方で死刑は拷問であるべきではないというなら、それの存置を支持するのはとても難しくなるように思える。

もうひとつの面白いところはこの機械への抵抗感。ボタンひとつで生命活動を終わらせることへの。
このことは我々が、たとえそれが不必要どころか非効率的だとしても、「生命を取り扱うことは訓練を積んだプロによって何重ものプロセスを経て行われるべきだ」という、宗教めいた…いや、これはもう、はっきりと儀式と言ってしまってもいい気がする。
科学が発展すればするほど、生命を扱うことはもっとプリミティヴで宗教的なものになっていく。
医者や軍人や、あるいは猟奇殺人鬼というものは、すでにぽっかりと空洞になってしまったそれに物語を充填してくれる司祭なんじゃないだろうか?
ロボットが高齢者を介護したり、ドローンでテロリストを殺害することへの抵抗感も同じことなのだろうな。
子どもはセックスによってのみつくられるべきか?同性婚は間違っていると相も変わらず主張するのだろうか?
今回の安楽死マシンはわりとはっきり見える形で現れたそういう分水嶺のひとつの形なのかもと思っている。


あとそういえば最近、2017年のホラーコンテンツを語るうえでこれに触れないのは如何なものか?というお叱りを受けまして、ようやくバイオハザード7やりました。これを機にVR環境も導入して。
いやこれは素晴らしい!悪魔のいけにえVRという体験(まずこれはホラーオタクの夢じゃないですか)を土台にしつつ、死霊のはらわた~ブレアウィッチまでのホラー名作オマージュのフルコース。
探索パートは本当に恐ろしい。VRスゴいなと思ったのが、暗闇が深いのよね。画面の中の闇ってやっぱ言っても黒ベタの平面ではあるんだけど、ちゃんと奥行きのある闇。それって、こんなにも足を踏み入れることを躊躇させるものなんだ、っていう。
それでボス戦となる殺人一家との戦いは一転して一家の振り切れた(チャーミングですらある)キャラクターとシチュエーションのハチャメチャさでメチャ楽しい。このボス戦というのは近作の4~6のバイオでも僕はかなり好きなところで。その空気を継いでるなと。
それで全体はギュッとタイトに、ひとつの邸宅の敷地内に収まっている。ホラーエンタテインメントとして究極の楽しさと怖さを同居させながら、しっかり芯が通っているのですよね。
ホント傑作だと思いますよこれは。


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そんな感じで…もう書くこと書いたなって気持ちになっているのですが…


Bruce Russell 『Metallic OK』

ジャケの解像度が低くてなんか笑ってしまうアルバム
アマゾンで物理でも買える。

グラス・リダックスから今年の秋にひっそり出ていたのはDead C デッド・Cのギタリストブルース・ラッセルのソロ二枚組。
10分~20分ある長いライヴテイク中心に7トラック入っている。
まーこのおじさんも相当困った人なんでとりあえず映像を先に

デッドCよりも更に奔放でメチャクチャなギター。
ライヴトラックに関してはこんな感じなのだが、他に入っているのもギターとアンプ利用したホワイトノイズやフィードバックなどトーンとしては一貫している。
面白いのはどのトラックもデッドCまんまのロウでゴリゴリなサウンドクオリティで録られていることかな。
好きな人向けと思うが演奏内容自体は濃い。
2枚目の最後に入っている"Excerpt from 'Motorboating'"なる21分のトラックが格別に素晴らしい。
デッドC以外の参加作など聴くと特に思わされるが、ギターノイズの制御ということにずっと取り組み続けてきた人ではあるんだよな。


Siavash Amini 『TAR』

物理はライナス屋さんで買えます

個人的にはStrotter inst.のヘヴィな二枚組LPが印象深かったハロウ・グラウンドより出ていた一枚。
このSiavash Aminiという人は今回初めて名前を聴いて、読めないしどこの人だろう?と思ったらイランの人らしい。
イランっつったらこの前観たソニータだなぁ…と思いながら聴いてみると実験音楽としてのクオリティの高さに驚愕。
やっぱわりとこういうものはボーダレスというか、ポッと出的に凄い人が出てくるという感じですかね。
12分、8分、5分、13分と聴き易い4トラック構成。
クラシックのほうをルーツに持つ音楽家とのことだけど、音は濃密で多彩な表情を見せるドローン。
弦楽隊、コーラス、もっとエスニックなアラブ系の音楽、テクノ…といったものが、形が分かる程度の大きさに切られて混ぜ合わせてある。
多様で混沌とした素材の味わいをすべて溶かさずにゴロゴロ残した音響作品という感じか。
美しいチェンバードローンをブリブリの電子低音ベースが蹂躙するようなエグい展開もあり油断できない。
ボーダレスとは書いたが自分の普段聴いてる電子音楽のところからは出てこないような、それこそ中東風なんていうとあらびきすぎるけど、今まで食べたことのない味ではある。
聴きながらゲーム『スペック・オプス:ザ・ライン』や映画の『アメリカン・スナイパー』の砂嵐のシーンを思い出していた。
そこでは砂嵐が現実と幻想を隔てるゲートの役割を果たしていたのだ。


Bill Orcutt 『Why Four Strings?』

最後は今回のチョイスからは少し浮くのだが是非紹介したいのでここで。
お馴染み僕のメチャ推しギタリストのビル・オーカットの09年から17年に至るまでのレア音源のコレクション。
たぶんバンドキャンプ限定リリース。
雑多にしてテンコ盛りの22曲入り。
アコースティックでいつものキレキレなハードコアブルーズをカマすトラックからノイズ的な実験トラックまで、サウンドクオリティ等も含めまるで統一感のない内容ではある。けど、この人だとそれは然程嫌じゃない。
冒頭のロンリー・ウーマンの激シブでクッソカッコいい演奏と、続く"Why Does Everybody Love Free Music But Nobody Loves Free People?"というトラックの激烈なノイズと絶叫のコントラスト。
彼がギターヴォーカルを務めるノイズロックバンドHurry Pussyによる"Nazi USA"のライヴテイクなど意外なチョイスもあり。
イ・オッキョンなどとのセッション音源もあり。
とにかく幅広すぎるので何と表現したらいいか…という感じではあるけど、どれも素晴らしい内容。
自分の中でのベストトラックというか、聴けて嬉しかったのはムーン・リヴァーの演奏かな。
ザ・名曲なのだが、この人の演奏しているものは初めて聴いた。
荒々しい手つきで、しかし慈しむ様にして、曲の持つ最も美しい表情を引き出して見せる、"いつも通りの"、またとない最高の音楽。



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Zach Rowden 『LIVE [SOLO]』 『BONE FOLDER』 Henry Birdsey 『G R A I N / lying to the congregation』 Bordreuil / Rowden 『Hollow』

『彼女がその名を知らない鳥たち』という映画観たのですが、とても良かった。
『凶悪』越えで白石監督作でいちばん好きな映画になったかも。
登場人物はみな人として欠けがある…というか言ってしまえばクズなのだが、どうせクズどもはこうなるでしょう…と思って見ていると意表を突かれる。こちらの意地の悪い見方よりもずっと迷いなく美しい方向へ物語は進んでいくのですよね。
人間の業というか魂というか、そういう部分までいって肯定する、みたいなところを感じる。
抑制された劇伴も心地よく、現実の時間空間を飛び越えていくような幾つかの場面には映画の喜びがあるし、何より阿部サダヲの演技が本当に素晴らしい。今まで自分の趣味と被らず全然出ている映画を観てなかったので、尚更心を奪われた。


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Zach Rowden ザック・ローデンというベーシストの音楽を最近よく聴いている。
ISSUE project roomのツイッターで知ってベースでソロやる人というので気になり調べてみたらすごく良い、かつなんか自分と同じようなことやってたのもあり幾つか音源購入したという流れ。
調べているうちに知ったのだけどマイケル・フォスターのゴーストでベース弾いたりもしているのね。



『LIVE [SOLO]』
タイトルの通りのライヴ音源で、20分ほどのものを2テイク収録している。
この人はベーシストとしては縦と横両方いけるいわゆる両刀で、今回の音源は"Electric"、"Upright"と題してそれぞれの演奏を収めている。
若干脱線するけどこのアップライトっていう言い方は普段あまりしないよな。コントラバス、ウッドベース、ダブルベース、いろんな言い方があるけど、何となくジャンルで使う言葉が違うようなものではっきりしないところではあるといえ。

このライヴ音源、今年の5月と7月に録音されているもので、この人がどんな演奏家か知るにはとりあえず手っ取り早いのではないかと。
まずアップライトのほうを聴いてみると、刻みから始まりもっと音を伸ばしたところまで少しづつ変化していくものの基本はミニマル。
特徴的なのは音のハードさ。ゴリゴリのノイジーな弓使いで生み出される音響はかなりノイズ寄りで、クラシック由来(と他の音源の説明書きにあった)とか言われても驚く。
ほぼ低音域だけ用いた演奏にライヴの空気の感じも相俟って、ダーク極まりない内容。
エレクトリックのほうはもっと即興の要素を感じさせる。何か使って弦を擦っているのだと思うが鋭い金属音のまばらなノイズ。たぶん歪みを用いていて高音が時たま微妙にハウったりバキッと鋭い音が差し込まれたりして安心できない。
中盤からは歪みを強くして音の余韻/倍音で音響を操作するドゥームな演奏。テンションが高くなるわけではないのだが音作りがかなり硬めなのもありやはりノイズ演奏という感じがする。



『BONE FOLDER』
こちらはもともとは今年の4月にカセットで出していたもののようで、中身はエレクトリックのソロ。
3、4分のトラックが3つに10分のものがひとつという構成。
やはり通常のベースギター演奏とはかけ離れたものではあるのだが、"ノイズ"として考えるならそのアプローチはプリミティヴだ。
別の言い方をすると、"演奏"らしい"演奏"で、楽器のあり方、性質を全く無視したようなものではない。
特殊なノイズエレクトロニクスを通したりとかそういうことはしていなくて、シンプルな歪みでブーストしたその音は充分にベース的だと言えると思う。
やはり"CONCRETED"と題された最後の長い演奏がメイン。
聴いてて思うけど、音の残響部分、倍音の偶発的な絡みによって生まれる揺れを意識しているのだろうな。あえてラフに叩き付けるようにピッキングすることで発音の度に異なる余韻のうねりが発生している。
コントラバスの実験的なソロ作というのはわりと出るのだけど、こういうエレクトリックベースを用いた独特のソロ演奏というのを継続的に取り組んで音源化する人って少ないのだよね。
この音源はこの人のそんな部分をよく抽出しているかと。


Henry Birdsey 『G R A I N / lying to the congregation』

この音源はHenry Birdsey(この後ろの名前なんて読むんですかね)というボルティモアのコンポーザーの楽曲をライヴ演奏したもの。
で編成が5本のコントラバス。
ここからもう想像つくようにヘヴィ極まりない地獄のようなチェンバードローン。
40分の尺が全体で6つのパートに分かれており確かに展開はあるのだが終始重くダークなところは変わらず。
バダラメンティ的なヒステリックな動きを見せる箇所などではホラー映画のサントラのようだなとも思ったり。
それまで虚無的な雰囲気だったのがクライマックスのパートでは少しづつ綺麗なハーモニーが浮かび上がってくる。
同じ低音楽器が5本という編成からこうした音響が生まれるに至るプロセスを描く様な展開を全体から読み取るなら、なかなか手の込んだ楽曲だなあとも。
今回紹介している音源の中では一番音楽的だとも言えるだろう。
でこういう重暗チェンバードローン、個人的にもかなり好きだったりする。

作曲者のヘンリーさんはこれにギターで参加もしているけどやはりEボウを用いたドローン演奏。



Bordreuil / Rowden 『Hollow』
こちらはNo Rent Recordsなるレーベルからやはり今年の春にカセットで出たものらしい。
ローデンはコントラバスを用いていて、Leila Bordreuil レイラ・ボードリュールというチェリストとのセッション作。
二人は2015年にフリージャズのコンサートで初めて会い、その際にローデンがマンイズザバスタードのTシャツを着ていたのが打ち解けるきっかけ、とかどうでもいい情報も書いてあるな。
短い5つの演奏で25分とタイトな内容。
しかしこれがムチャクチャカッコ良い。今回買った中で一番好きかも。
金切り声のようなバキバキの音のぶつかり合いから持続音、物音的なアブストラクトな演奏まで幅広いが、どれもおしなべてパンキッシュでスリリング。
ギコギコと錆びたノコギリで無理矢理弾く様な楽器に悪そうなトーン、もう大好きなやつ。
こういうストリングスの無茶な使い方している音源ってやっぱいいもんですね。


このチェロの人マイケル・フォスターとやってる映像出てきたけど素晴らしいっすな。
二人ともアンプリファイド。


やっぱベースって面白いですね
こう自分もいろいろ試しましたけど
 

John Wiese 『Escaped Language』 Sissy Spacek 『Slow Move』 White Gold 『White Gold 2』

最近いろいろ観た中で是非観てもらいたい映画は二本あって、まず『女神の見えざる手』。
アメリカで銃規制法案を通すという無茶を打つ女性ロビイストの話。
と聞くとウェットである種政治的なメッセージを含んだ内容を想像するんだけど(この前の最悪の乱射事件もあり)、実際にはきわめてソリッドかつロジカルな知的闘争の話になっている。情報の密度と速度が凄まじくはじめは圧倒されるものの、段々意識がそこにチューニングされてきて気持ちよくなってくるという映画体験。
銃規制という、今の(アメリカ)社会にあって正しい事なんだけどにもかかわらずどうしても通らないこと、それを通すためにあらゆるダーティな手段…敵の急所を容赦なく打ち、味方をすら欺き、自分自身を壊し…ということが描かれるバランス感覚。主人公がもう本当に人間としては壊れているんだけど、その為にある局面において人間離れした強さを発揮する。
ロジックで戦う女性としてジェシカ・チャスティンの磨き抜かれた鉄仮面のような美貌のマッチさも凄いし、マックス・リヒターの基本ミニマル/ドローンでありつつある一点だけに起伏を温存した音楽使いも素晴らしく。

もう一本『ソニータ』。
イランの女性監督の撮ったドキュメンタリーで、アフガンからイランへ戦火を逃れてきた難民の18歳の少女ソニータを撮っている。
ソニータはラッパーになりたいのだが、家賃もスタジオ代も払えず、女が歌を歌うなんて駄目だと言われ、挙句実の親から結納金目当てで嫁にと売りに出されそうになる。
まあそういう単に意識の高いだけの映画なら大して面白いとも思わないが、この映画の凄いところは、映画が進むにつれある種ドキュメンタリーの限界を超えていくような展開を見せるところにある。
通常、被写体の現実のありのままの姿を捉えることが、客観性が常に確保されていることが、ドキュメンタリーの条件だと考えられている。ところがこの映画の監督は、(スタッフと客観性についての議論をしながらも)ソニータのあまりの境遇にキレてしまい、積極的に彼女の人生に介入していくことになる。
掟破りだがスリリングでしかも実に痛快なものがある。つまり、映画は世界を変えられる。現実を変えられる。
ソニータのラップの切れ味も鋭く抉ってくるもののある内容ですばらしい。


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今回はJohn Wiese ジョン・ウィーズ関連新作三枚を。


個人名義新作はライヴ盤片面LP。
20分1トラック、昨年のパリでのパフォーマンスを収めたもの。
以前の来日の際にもこうしたセットで演奏していたけど、内容はアルバム『Deviate From Balance』を凝縮してひとつの流れの中に封じ込めたようなものになっている。
アンビエント~金属質なドローン~物理音っぽいコラージュ~テープをめちゃくちゃに切り刻んだようなスピードの早いノイズとかなり幅の広い展開を見せつつ、全体のトーンとしては、ああ、これはウィーズだな、と思わせる一貫性がある。
近年に至ってこの人は本当に他の誰にも似ていない自分のサウンドというものの強度を上げきるとこまで上げたよなと感じる。
最早それは単純にノイズと言い表せるものではないような、むしろその棚に収めたときにこぼれ落ちてしまうものが沢山あるような…しかし同時に通常の音楽から絶えず疎外されているようなもの、ノイズ、と表現せざるを得ないものでもあって、つまりはノイズを内側から食い破って拡張するような音。
言葉本来の意味でのノイズ、つまり外-音楽、言葉で括ろうとしたときに逃れていくもの。だからこれはエスケイプド・ランゲージと名付けられているのではないだろうか?


DSC_0016.jpg

Sissy Spacek 『Slow Move』
White Gold 『White Gold 2』
この二枚は同じもののふたつの側面と捉えていいと思う。
ホワイト・ゴールドというのはウィーズとPhil Blankenship フィル・ブランケンシップ = Cherry Point チェリー・ポイントのノイズユニットで、また今回のシシー・スペイセックの編成は近年のウィーズ/ムンマにブランケンシップが加わったものとなっているので。
シシー・スペイセックのほうはこの名義らしく毛羽立ちまくったロウな音質で荒ぶるノイズで、今回はエレクトロニクス中心に制作されているのか、洪水のような雑音と叩き付けるメタルジャンクのバキバキのサウンドをぶちまけたもの。
ホワイト・ゴールドはもっとラディカルなハーシュノイズ。ライヴ音源とスタジオ音源の2曲で構成されていて各20分ほどの長さ。
軋むような物理音を多用する硬めのノイズというのがこの二人の共通項で、このユニットもまさにそういう音になっている。様々な音が攪拌されているのが聴き取れる内容で、多層的な音作りの巧妙さはさすがといったところ。
と書いてみたものの二作ともかなりハードなノイズであることには間違いなく、ある意味こういうユニットのところでゴリゴリな表現をしているからこそ個人名義ではもっとディープで繊細な音になっているのかなという気もする。
この音の幅自体がウィーズの今のアーティストとしての充実ぶりを表していると言いますか。







 

Mats Gustafsson & Joachim Nordwall 『A Map of Guilt』 Kasper T. Toeplitz & Julien Ottavi 『Blast of Silence』 Marco Fusinato 『Spectral Arrows: Venice』

えーとまずこの前即興ロックバンドOtaku Young Teamセッションしました。

ふだんサイゼリヤで活動しています


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bandcamp見てもらうと分かる通り、ほぼグレー~ブラックのダーク系で統一されたアートワーク、出しているものも暗黒ノイズと統一感のあるラインナップが印象的なレーベル、ポーランドのBocian。
かなり好きなのだが今回また3つほど買ったので書く。


Mats Gustafsson & Joachim Nordwall 『A Map of Guilt』

お馴染みのバリトンサックス奏者(ここではオルガンもやっている)Mats Gustafsson マッツ・グスタフソンと自身のレーベルIdealでも暗黒エレクトロニクスを展開するJoachim Nordwall ヨアキム・ノルドウォールの共作。
6曲入りで2分から19分まで曲のサイズには幅がある。
が、カラーは一貫している。
ノルドウォールの色がより濃く出たような、ミニマルで荒涼殺伐とした夜の砂漠のようなドローン~ノイズをやっている。
フリーフォームなサックスのフリージャズ的要素、一定のパルスが生むテクノ的要素というのも時折前に出てくるけど、音のテンションが上がるようなことはない。
低域で蠕動するように鳴り続けるノイズが全体のムードを決めている。
やはり聴きものは19分のタイトル曲かな。不安を煽るような強迫的なビートと揺らぐオルガンの持続音がズブズブと流れ続けてなかなか落ち込んでくる曲。
セッションというにはきわめてコンセプチュアルに作られているのを感じる盤で、これぞBocianって感じでもあり。


Kasper T. Toeplitz & Julien Ottavi 『Blast of Silence』

うちでは何度も取り上げているベーシストKasper T. Toeplitz カスパー・トープリッツ。
自作の特殊ベースギターをこれまた自作の特殊なソフトに通して圧巻のノイズドローンを生成する唯一無二のベーシスト。
Julien Ottavi ジュリアン・オッタヴィははじめて音源買ったかも。普段はエレクトロニクスメインのようだがここではシンバルとボイスをそこに通して使用しているようだ。
20分×2の潔い構成だが音もやりたいことがとてもはっきりしている。
真っ黒の超重圧ノイズドローン。
無数の楽器が折り重なっているような案外複雑な響きと単純な音の重量にやられる。
たまにホワイトハウスばりのブチキレアジテーションボイスが投下されるような展開もあり。
流れとしてはゆったりしていて過剰にいろいろ詰め込んでいるような感じはないのだが、こうして聴くとやっぱト―プリッツの音って情報量多いなあと。
曲名が"Quelques éclats d'un effondrement soudain / Odblaski nagłego upadku"とかとんでもなく長いのだが、字面見ながら音聴いてると「なんかわかる…」ってなるな。


Marco Fusinato 『Spectral Arrows: Venice』

オーストラリアのギタリストMarco Fusinato マルコ・フシナトはわりと気の狂った音楽家で、ギターを自作のエレクトロニクスに通してギターの面影が欠片もない津波のようなノイズ嵐を生む。
近年はこのスペクトラル・アロウズと題されたパフォーマンスを各地で行っており、これはそのヴェニスでのものから抜粋された音源。
で、このスペクトラル・アロウズ、何かと言えば、ギターを8時間弾き続ける、これだ。
そんでもって音がコレよ。ほぼキ×ガイである。
聴いててもうホントギターの要素全くないぶっ壊れたノイズなのだが、困ってしまうのはこれがドエラくかっこいいことかな。
Sunn O)))的ドローンドゥームが下地に聴こえるような箇所もありつつ、その上にもとにかく気の狂った量のノイズをラーメン二郎ばりに盛り付けていく。これがまたとんでもない高密度で展開しており、単調さの全然ない気持ちいい音なのだ。合間にフッと訪れる静寂もナイス。
実は今回はこれ目当てで買ったのだけど、やっぱ相変わらず同じことやってるし相変わらずクソカッコいいなあ…とホッコリしてしまった。
現行の作家の中でもエレクトリックギターの限界に挑んでいる人の一人という気がする。
これの前の作品も強烈な女性器ジャケでこのレーベルから出しているが、そっちもおすすめ。





 

Francisco Meirino & Miguel A. Garcia 『Nonmenabsorbium』 Don & Camille Dietrich 『Dietrichs』

『スプリット』観たんですけど、非常に独特なトリッキーでありつつキレのある見せ方+マカヴォイの役者魂と超絶演技が生む迫力のある怪作でしたね~ところどころ一人称視点カメラも有効に使われている点などは前作ヴィジットからのフィードバックを感じたりも。
ヴィジットといえばあれは全編がそんな感じでしたけど今回も…覗き穴や扉の隙間、あるいは音だけなど、ヤバイものがちょっとだけ見えるような演出の仕方ってとてもイイなと思いました。

あと『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』観たんですけども。
劇場暗くなって予告が始まったとこで、隣の席にいつの間にかおっさんが座ってることに気づいたんですね。
それで、平日だし結構席空いてるけどなあ、まあど真ん中だしなあ…みたいに思いながら映画観ていたんですけど。
で、映画終わって、席立とうとしたら、そのおっさん、めっちゃ泣いているんですね。
おお…おお…とか言いながら泣いてるんですね。
おっさんが通路側の席に座ってたから僕は困ってしまったんですけど、実のところ上映中僕も結構泣いてしまって(何というかタイトルバックであの歌がかかる時点でもう駄目だった)、気持ちが分かってしまったせいかな。
なぜかそこで、声かけてしまったんですね。映画良かったですね、って。そしたら、良かった…良かった…っておっさん。
あいつら…家族って…なのに、おれ、こんな…っておっさん。
大丈夫っす、ヨンドゥ言ってたじゃないっすか、オマエはオレだって、ロケット言ってたじゃないっすか、クソガーディアンズオブギャラクシーにようこそって…って僕。
そしたらおっさんは僕の方を見て、そのときに分かったんですね。
いつも見てるそれより20年程も老けてくしゃくしゃだったけど、その顔は毎朝鏡で見る…
おっさんは僕だったんですね。


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nonmenabsorbium.jpg
art into life屋さんでどちらも購入できます


Francisco Meirino & Miguel A. Garcia 『Nonmenabsorbium』

当ブログではもう死ぬほど紹介してますがお馴染みFrancisco Meirino フランシスコ・メイリノのコラボシリーズ最新作。
レーベルのidiosyncraticsは他にもJean-Philippe Grossとかダークな電子系のものをリリースしているようで、この音源もそのカラー。
お相手のMiguel A. Garcia ミゲル・A・ガルシア、バンドキャンプがあったんで聴いてみたら、メイリノとコラボするのがよく分かるというか、わりと徹頭徹尾虚無的な機械作動音のモノクロ音響。

メイリノの一個前のコラボ作、エリック・アベカッシスとのものは若干辛い評価を書きましたけど、そもそも考えてみればメイリノはソロのほうが大抵いいしなぁ…みたいに思っていて…。
で、半信半疑ながらも今回のもの聴いてみたら、ウン、悪くないぞ、これ…。この、虚無感、好き。と孤独のグルメ風に独りごちてしまう満足感の高い内容だったな。
前回のコラボ作で問題に感じた、らしくなさ、いつもの音が出てないなっていう感じ…それが今回なくて、ああこれはメイリノだ、と思える音ばかりが鳴っている。
荒い感触の物理/現象音、接触不良気味なノイズ、作動音、バチバチと耳障りな切り換え。
音全体の設計、無機質な持続/ミニマル駆動音を重ねていくイビツなハーモニーの感覚。
空間的に音響を捉えてどこにどの音を配置するか?みたいな部分でも作り込みが見えて、そこもこの人のセンスの部分というところで。
二人ともわりと同じ方向を向いて音を作っているのが功を奏しているのですかね。
2年間に渡るコラボの結果の音源と書いてあるから、そういう長いスパンで作られたというのも関係しているのだろうけど。
やっぱコレだねという感じの、これはメイリノの音が好きな人なら聴いときましょうと言えるコラボ作になっている感じ。



Don & Camille Dietrich 『Dietrichs』
ラッセ・マーハウグのPica Diskから最新リリース。
Don Dietrich ドン・ディートリッヒと言えば2サックス+ギター編成の最強ノイズバンドボルビトマグースのサックスの片割れ。
もう片割れのジム・ソウターはオネイダのドラムのキッド・ミリオンズとデュオでやっているけど、こちらのドンの相方はなんと自分の娘。
このCamille カミーユちゃん、19歳とのことですが。
オイオイお嬢ちゃん大丈夫かァ~~?ノイズ、分かるの~?
とか噛ませ犬の悪漢風に言っていると脳天ブチ割られて死にさらします。
とんでもねえアルバム。

アルバムは全8曲のセッションからなり、"The Decapitator Suite"断頭鉤組曲というタイトルの通り、各パートのサブタイにプレリュード、メヌエット、カント、アレグロ…と含まれている。
因みに断頭鉤って普通は聞き覚えのない単語かと思いますけど、中絶の時に胎児の頭蓋骨を割る器具のことをこう呼んだりします。

ドン氏のトレードマークといえば過激エフェクトを通じてアンプに繋いだ極悪ノイズサックスだけど、今回はそれを封印して純粋なアコースティックのテナーだけで臨んでいる。そんなとこも、今回はおとなしめな作品?と思わせるのだが…。
再生を始めると即、この世のものとは思えないひび割れ捻じ曲がりまくったサックスが切り込んでくる。追随するチェロも神経症的ノイズをばら撒くパンキッシュな演奏。イ・オッキョンとかそっち方向の切れ味鋭いノイズチェロ。
こう言っては失礼だけど、ドンさん、こんなにサックス吹けたんだな…、という実に表情豊かな演奏…しかもそれは過激で狂った形での豊かさだ。普通の音は鳴っていないし、耳障り極まりない爆発音のような演奏だけど、そのテンションを保ったままいくらでも多彩な様相を見せてくる。
対する娘の演奏も大したもので、特に感心するのはそのレスポンスの良さ。これはやはり親子だからというのもあるのかな?相当なスピードで演奏は展開するが、テンションの上下やスピード感、音の切れ方繋ぎ方、絶妙に噛み合ったやり取りを見せる様はすでに即興演奏者としての貫禄みたいなものも感じさせる。
むしろ親父を煽るような部分すらあって末恐ろしいところだ。

クライマックスの16分間の煮えたぎるセッション"Wenis Supreme"に至って解体的交感のような雰囲気すら纏わす二人の演奏を聴いていると、ちょっとこれは親子で演奏しましたみたいなフックも全然要らん単にメチャクチャカッコいいノイズ即興のアルバムですよという感じ。
これは継続してやって欲しいし、アンプ使った演奏の音源も欲しいなあ。
カミーユちゃん、将来有望すぎるのでこれからもドンドンヤバい音楽やってって欲しいですね。


 

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