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Sunn O))) 『Life Metal』 Machinefabriek 『With Voices』 Klaus Lang & Golden Fur 『Beissel』

自分が幼いころ、映画にかかわる人の中で最初に覚えた名前が「ジャッキー・チェン」なのだが、そのジャッキーの「老い」がしっかりと刻まれた『ザ・フォーリナー/復讐者』、大感動してしまいました。
美しいですね。この人は。




Sunn O))) 『Life Metal』
みんな大好きSunn O))) サンの太陽がサンサンな最新作。
デスメタルに対してのライフメタルってことらしいのだが……。
出たばっかの最新作に対してこう言うとメッチャわざとらしいけど、今までの彼らの作品の中で一番好きですねこれ。
単純に、とにかくサウンドがいい。
スティーヴ・アルビニはオーガニックな方法論で最良の録音をするエンジニアだけど、そのやり方ってナマの楽器を用いたものであればどんな音楽にもフィットしちゃうなあってのを改めて。
The Thing 『Bag It !』の最高さでそのジャンルレスな手腕ってのは分かってはいたんだけど…。
ドローンって自分にとっては音の質感を堪能する音楽であって、その意味でこの、持続音でありながら濃密な情報量、という感じ。
フィードバックノイズの混じり方や、低音が延びるにつれワンワンと回ってくる感じとか、もう本当美味しいところ全部入ってる。
でもシンプルだな、ロックの音だな、って感じさせるという、なんかやはり魔法があるな。この音は。
オルガンと絡むtr.2、ボトムのズンとくる感触が鼓膜に効くtr.3は特に好き。
しかしこの、音響的に作り込んだのではないがゆえに逆説的に音響としてメチャ面白く響いてくるという感じ、なんとも痛快だよね。
つまり、ノイズを音源に刻印することの面白さってそれで、そのことがアナログなアルビニ・アプローチによって自然に(まさにオーガニックに)成し遂げられているということが本作の独特さだよなと思う。
しかしヨハン・ヨハンソン筋のヒルドゥール・グルナドッティルってちょっと意外な共演ではあって、このあたり『マンディ』つながりだったりするんだろうか?などとも思った。





Machinefabriek 『With Voices』
マシンファブリーク。
今年発売の最新作で、また不思議なコラボをやっている。
8人のヴォーカリスト/ヴォイスパフォーマーに同じトラックを送って声を入れてもらい、それを素材として解体して1曲づつ曲を作っていくという。
この人のコラボ相手ってわりと知らないパターンが多くて、今回もピーター・ブローデリックやテレンス・ハナムくらいしか分からないな。
さておき音はどれも一筋縄でいかない内容で面白い。
わりと柔らかめのトラックで統一しているけど流石の幅広さ。
美しいヴォイス&メロディでポップにも感じる"IV (with Marianne Oldenburg)"、一際実験色の強いコンクレート的な"V (with Zero Years Kid)"、声テクノ感のある中にポエトリーリーディング要素の加わる"III (with Peter Broderick)"あたり特に好み。
毎度毎度手を変え品を変えって感じで飽きないねこの人の音は。
音の心地良さってところは共通していて、意外なことしてると思いきや期待を裏切らないってとこも良いね。




Klaus Lang & Golden Fur 『Beissel』
オルガン演奏家Klaus Lang クラウス・ラングと室内楽持続音アンサンブルGolden Fur ゴールデン・ファーが一緒にやったアンビエントドローン。
編成はオルガンの他、クラリネット、ヴィオラ、チェロ、ハルモニウムとのこと。
まードロ~~~~ンて感じなんだが、この音の質感の素晴らしさよ。
教会録音ということも影響してか、かなりそういう音楽のエッセンスが入っている気がする。
ドロッドロに融けた各楽器の持続音と美しい旋律。
40分1トラックって構成も最高。もーなんも考えなくていー聴くだけ~ってなる。
徐々に緩やかにだけど全体で聴けばどんどん演奏が展開していっている感じ。
オルガンの音がうねる感じがまたよく作用するんだよね、こういう演奏内容は。
部屋真っ暗にして聴いてて脳が耳からこぼれそうなくらい良かったけど、休みの日の午後とかに聴いてもまた良いんでしょうなあ。
こういうただ綺麗な音楽は普通に好き。
というか、最近特に好きになった。

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Carlos Giffoni 『Vain』 Patrick Higgins 『Dossier』 Jonny Greenwood 『You Were Never Really Here』

みんな出たばかりの新作。

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Carlos Giffoni 『Vain』
これはメチャクチャ驚いた。
Carlos Giffoni カルロス・ジッフォーニは大好きなのだけど、ここのところ全然リリースがなくなっていたので。なんと6年ぶりのリリースとのこと。
レーベルはiDEALからというのはしっくりくる。
100時間以上の即興演奏の中から抜き出したという9トラックで構成される本作は、久方ぶりのリリースということもあってか内容に変化が窺える。
彼のトレードマークともいえる長い持続音トラックがなくなり、シンセによるミニマルなパターンのコンパクトなトラックが並んでいる。
荒々しくエッジの際立った例のノイズ寄りな音も減り、もっと澄んだ電子音が中心になったサウンド。
個々の音が抜群に美しく、またバリエーションの豊かさで飽きさせない。
"The Desert"のスモーキーな質感や"Erase The World"の織りなすシンプルで奇妙なポリリズム、"Stop Breathing"のどこか祝祭的なノスタルジックな響き、"I Can Change"での雨音のような美しいシーケンス…このあたりの曲は特に好き。
ブランクを感じさせない素晴らしい内容なのだけど、欲を言えばこの内容で一曲15分とかで聴きたい!
まあアイデアはどっと出した感じだろうからここからまた絞った内容になっていくのかもしれないけど。


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Patrick Higgins 『Dossier』
ZsのギタリストPatrick Higgins パトリック・ヒギンズのソロ作。
レーベルは意外で、ニコラス・ジャーのOther Peopleから出ている。
12分のトラック×2、6分のトラック、18分のトラックの4曲という明快な構成。
ギターと大量のエフェクター、ラップトップ、その中の自作プログラムを用いて制作されている。
きわめてミニマルなエレクトロニクス、エフェクトで電子音と区別のつかなくなったギター、中心にあるその二要素がコラージュ的なエディットで巧みに組み合わされている。
タイトルのdossierは調査記録という意味だから随分無愛想な音楽にも思えるけど、最後のトラックについた"White Lie"というタイトルにははっとする。この人がZsのメンバーなんだということを思い出させる。"Music of Modern White"、"New Slaves"、あのあたりのタイトルと地続きという感覚。そう捉えると、やはりこのジャケットは監獄だろうか。
で、この"White Lie"という曲は内容もアルバム中で特に素晴らしい。ギターのタッピングによって高速で紡がれるフレーズが延々と反復し、ヴェールのようなアンビエント/ノイズと溶け合って頭を包み込む。
やはりエレクトロニックミュージックとも聴こえるし、それを手で演奏していること自体が何かの異議申し立てのようにも思えるし、何とも位置づけに困る奇妙な音だ。
ただこの人の音だというその事ははっきり分かる、というのは、ヒギンズがいかに音楽家として卓越しているかという証明にもなっている。

本作のプロモパフォーマンス


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Jonny Greenwood 『You Were Never Really Here』
これは前にも書いたけど、レディオヘッドのギタリストJonny Greenwood ジョニー・グリーンウッドの手掛けた映画『ビューティフル・デイ』のサントラ盤。タイトルは映画の原題。
レディへの、といっても今やこの人も普通に映画サントラ作家と言ってしまって問題ないように思う。
実績も相当あるし、『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』なんかの仕事ではかなりの数の賞を取っていたはずだ。
で、本作の内容。本作以前にもリン・ラムジー監督とは『少年は残酷な弓を射る』で一緒に仕事しているから、グリーンウッド的にも攻めた内容にし易かったのではないかと見える。
予告などでもインパクトのあった"Sandy's Necklace"が特に強烈だ。
左右のパンニングとパルスのようなトレモロで破壊された不安定なコードのギターサウンド。ミュートの刻み、エスニックなパーカッション、バダラメンティ直系の揺らぐ奇妙なストリングス。最後に例の不安定なコードへと立ち戻る。様々な要素が組み合わさっているけど、見事に絡みあってひとつの世界観を成している。映画でもオープニングのシークエンスでかかるわけだけど、劇場で観た際もこれで一発で映画の世界に引きずり込まれた。
以後は意外にもギター要素は控えめで、エレクトロニクスとストリングス中心のサウンドが展開される。
が、それもかなり異様な形。
4/4と3/4の組み合わせでリズムが延々ひっくり返る"Dark Streets"、うねり旋回するシンセのシンプルなテクノかと思いきやテンポの異なるスネアが噛んでおかしくなる"Nausea"など、エレクトロニック方面ではリズムがおかしい。
あるいはストリングス、"YWNRH"の不協和音ドローンとエレクトロニックノイズ、カットアップで崩壊していく。
悪夢を流し込んだアリスの穴に迷い込むような映画の内容そのままの、ねじれまくったサウンド。
その中にあって、"Nina Through Glass"、"Tree Strings"といった、ヒロインに宛てられた曲たちの微睡むような美しさに救われるような気持ちになる。
これは正しくあの映画の、あの奇妙で美しい映画のための音楽なんだよな、とやはりそう思わされる。

The Pitch 『s/t [κασέτα]』 Phurpa 『Chod Ritual : Grotta Santarcangelo』 Taumatrop 『For John Ayrton Paris』 Neit Welch & Rutger Zuydervelt 『Tides』

暖かいを通り越して暑い日が続いていますね。
梅雨の足音も感じさせない気持ちのいい晴天ですが…
皆さん、壁、凝視してますか?
というわけで、こんな気持ちのいい季節に壁を凝視しながら聴きたい持続音をセレクトしました。
よろしくお願いします。



というわけで、まずこれ。
Grannyから出たばっかりのカセット。
打楽器奏者Morten J. Olsen モーテン・J・オルセンを中心とした不定形持続音楽団The Pitch。
タイトル、読めねえよ!って感じなんだけど、s/tって書いてあるし、あっちの言葉でThe Pitchって書いただけなのかなぁ…?
で、今回の編成は4人の小さなもの。
ビブラフォン(いわゆる鉄琴)とテープディレイを操作するオルセン中心に、アップライトベース、クラリネット、電気オルガンにエレクトロニクス。
アコースティック楽器を中心にそれを加工することで持続音を生むスタイル。
様々な楽器のアンサンブルという点、またサクッと音のピッチを切り換えてくる点などから、意外と展開のある音楽的な持続音という印象。
アンビエント寄りというか。
音のあたりも柔らかくて、壁を見つめる際だけでなく外歩き時に聴く持続音としても良さそう。


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Phurpa 『Chod Ritual : Grotta Santarcangelo』
これはデジタルないんで、各自art into life屋さんで注文してくださーーーい!
て感じでここでも何度も書いてますPhurpa。ロシアでチベット密教の儀式の再現パフォーマンスを行っているクレイジーな集団。
Old Europa Cafeってレーベル名、一見シャレオな感じだけど、その実ダークアンビエント/パワーエレクトロニクス系のエッグいのばっか出してます。
で、この盤。今回はライヴ盤。
78分間ミッシリと詰まった内容は、昨年夏、イタリアでのライヴパフォーマンス。
で、なんかこれがでかい洞窟でやっているとのこと。
そのせいなのか、まーたエグい音になっちゃってる。
声のSUNN O)))って前書いたけど、その路線で(てかこの人達はどの音源もしている事は一緒なのだが)ドゥーミーな地獄の低域持続音が延々と続く。
反響によってモアレ状になった倍音、音量を上げれば息苦しさすら感じさせる。
この人達の音源聴くときよくやるのだが、壁を見つめるだけでなく真っ暗の部屋で聴いても非常に良い!
目を閉じて想像力の羽を広げれば、その羽むしり取られて底なしの虚ろな大穴をただただ落ちていくような感覚に囚われる。
ほんと、重ね重ね…どの音源も同じなんだけど、どの音源も素晴らしい!


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Taumatrop 『For John Ayrton Paris』
はーい、これもart into life屋さんに頼んで入荷して貰ってね。
というわけで金属の缶に入ったパッケージも音のイメージとバッチリきてて素晴らしいイギリスの老舗レーベルConfrontのものを二枚紹介。
まずはこちら。
アルバムタイトルにあるJohn Ayrton Paris ジョン・エアトン・パリ、この人は誰かというと、Thaumatrope ソーマトロープというおもちゃがあって、あのグルグル回って描いてある絵がアニメのように動くやつの原型の原型みたいなものなんだけど、それを作ったのがこの人。本業は医者らしいけど。
で、このソーマトロープというのが恐らく彼らのユニット名のもとになっていると。
Ferran Fages フィラン・フェイゲスと Eduard Márquez エドゥアルド・マルケスのスペイン人デュオなのだが、マルケスはギターで、フェイゲスのほうは自作のエレクトロニックデバイスを用いている。彼のほうがリスペクトを込めてこの名前にしているということなのかも。
でこのアルバム。
まさに壁を鑑賞しながらのリスニングにぴったりな、直球の電子系持続音。
モンモンと唸る低域の上でフィードバックのような高域が何気に様々な形でサウンドを彩る。その波紋が広がっていくための余韻もたっぷり用意されている。繊細でキンと冷えたような持続音はこれからの季節に対応している感もありオススメ。
24分ワントラック。




Neit Welch & Rutger Zuydervelt 『Tides』
同じくConfontから。
Machinefabriek マシーネンファブリークことRutger Zuydervelt ルトガー・ツァイトベルト氏は電子音楽界ではかなりの有名人でゲームサントラなども幅広く手掛ける電子音楽家だけど、ドローンアーティストとしてもかなりの個性派だったりする。
例えば本名名義で出しているものに『Stay Tuned』というアルバムがあって、それはこんなもの。
楽器のチューニングの際の基準音として使われるA(ラ)の音、これの持続音を世界中の実験音楽家に出してもらい、なんと153種類集める。それらを組み合わせて作成した全一曲構成のドローンアルバム……。
まぁそんな人が今回やっているのは、アメリカのサックス奏者 Neit Welch ネイト・ウェルチの演奏をライブでリアルタイムに捉えループを作成、それに呼応してウェルチが更に演奏…という生演奏ドローンセッション。
38分一曲。
サックスの演奏をドローン化するというひたすらにそれで、かなりダークかつヘヴィな金属系持続音が鳴っている。
まずもってサウンドの質感が素晴らしく、生々しい重みと濁り、揺れを伴ったディープな響きが脳幹を揺さぶる音響に恍惚とさせられる。
ストリングス的に聴こえる箇所もあればオルガン的に聴こえる箇所もあり、このあたりはツァイトベルトの高い音響生成技術が光っている感じだろう。
睨んでいる壁がドロドロと溶解していくような妄想に苛まれる、コクのある持続音。
ぜひ。


ウェルチ氏は普段からサックスでの持続演奏をやっているっぽい


そんな感じで、皆さんも壁を凝視しながら聴くと気持ちいい音楽を探してみて下さい!

Ensemble Phoenix Basel plays ILIOS 『El anillo que sujeta el mundo de la forma al mundo de la idea』 D'incise 『Ukigusa』 牛尾憲輔 『Inner Silence』

※7/13 『Inner Silence』について書きたいこと全然書けてない気がしたので追記しました…


昨年の映画のソフト化が出そろって来たので先日何本か買ったのですけど、やはり『怒り』、すばらしい映画だなあと。
メイキングやインタビュー、キャストコメンタリ等色々入っていたのを一通り見てみて、確かにこの映画は役者たちの演技が素晴らしい映画ではあるんだけど、その言い方では一段足りない、必要な箇所にピンポイントで限りなく本物に近い感情を置いていくか?そのための作りっていうのを綿密にやっているんだなあと。


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今回は上の二作は例によってart into lifeで買えますけど。

Ensemble Phoenix Basel plays ILIOS 『El anillo que sujeta el mundo de la forma al mundo de la idea』
タイトル、長すぎる!
メイリノとの共作盤でちょっと紹介したのかな?ILIOS イリオスはちょっと正直プロフィールとかがあまりよく分からないのだけど、やっているユニットのMohammad ムハンマドでも個人名義でも音の方向性は基本的に変わらず。かなり硬質で無機的なドローン。
で、そのやっているユニットのほうのムハンマド、独特なのは編成。
3人のときと2人のときがあって、どちらもチェロやバイオリンのようなクラシカルな弦楽器とエレクトロニクスの組み合わせになっている。
そこで今回の作品。そのイリオスの作った楽曲を現音アンサンブルと一緒に演奏するというもの。
総勢11人の編成はバイオリンやコントラバス、クラリネット、フルートにエレクトリックギター、キーボードなど、そこにオシレーター/フィールドレコーディングでイリオスが加わっている形。
これ聴いていて思ったのが、拡張版のムハンマドだなということで。
一曲42分でもう全編ストイックなチェンバードローン。全体がひとつの持続音となって、楽器の輪郭は見えない。ほぼ電子音に聴こえるくらい。
ドローン系ではわりとありがちなことながら、これを作曲ってどういうことなの…ってなるのだけど、音のレイヤー的な変化は結構豊かで、最終的には相当分厚く大きなうねりを持った音に変化していく。
こう生ドローンのおいしい部分、空間の響きも込みで鳴っているものの感触そのものを楽しむという音源かなと。


Ensemble Phoenix Basel、何気にギターがマウリツィオ・グランディネッティなんですね


D'incise 『Ukigusa』
お馴染みD'incise(読み方分からない)の最新作はなぜか純和風のアートワークに大量のオマケ付き、内容はプリペアド・ビブラフォンを使った自作曲の演奏という、今までの感じとだいぶ異なるもの。
とはいえ聴いての感触は彼らしいミニマル。もともとスネアとかの物理的な音響を用いている事、加えてよく組んでやっているドラム/パーカッションのCyril Bondi シリル・ボンディも参加しているとあって、パッと見の感じに反してあっ、これはD'inciseだな、という音になっている。
スコアが付属しているのだけど、これが演奏の様子が想像できるほど具体的な内容で、プリペアリングには何を用いるか(アルミニウムや発泡スチロールなどの記述がある)、BPM、マレットや弓など演奏に用いるもの、音程までCDEと普通に書いてある。
もっと抽象的なグラフィックスコアみたいなもので半即興的に演奏するのかと思っていたので、ここまで音楽的にカッチリ作っているということに失礼ながら少し驚いた。
聴こえてくる音はプリペアドがうまく作用している感じ。様々なタッチの点描めいた物音のほか、電子的なフィードバックのような持続音(弓を用いていると思われる)、キリキリという金属音など、意外にも豊かな音がしかしシンプルに静寂の中で時を刻んでいる。
アコースティックな響きの丸みもあって…自然音、環境音のような非人格的なとこもあり…なんかアレですね。ししおどし的な感じというか。なるほどこのアートワークは結構音と結びついているのかなという。
そんな用途で流しておくのもよい気がする。


この映像がとてもD'inciseらしいなと思っている


牛尾憲輔 『Inner Silence』
これがちょっと特殊な音源。
一番最初に書いた通り昨年の映画のソフトをいくつか買っていて、その中にアニメ映画の中では最高だったなって思っている聲の形のBDもあって。
これのサントラについてはここでも何度か書いている通りで、斬新なノイズ/実験音響が作品のテーマ、手触りと深く呼応しあう、昨年のベストサントラだろうと思っている。
で、今回、BD化にあたってサントラ未収録の新規音源が収められていると。まあ聴いてみたんだけど…。
ちょっとしたオマケ、ボーナストラック的なものだろうと想像していたら、これがとんでもない。
サントラCDに収録されなかったアウトテイクではなくて、そもそもCDに収録するのが不可能な音楽作品なのだよね。
どういうことかというとこれ、サントラのパイロット版的に作成された音源をベースにしたもので、当初は映画の上映中ずっと一曲を流し続けるという構想があったらしい。で、この映画、二時間ある。つまり…二時間一曲のアンビエントドローン作品がこれ。
これが他のジャンルであれば、何枚組にでもすればいいのだけれど、ドローンというジャンルは、途切れず持続していることが所与の条件であるために、フォーマットの収録限界に敏感だ。平たく言って、80分以上のドローンの楽曲はCDフォーマットでは通常作れないということになる。
今作がそのフォーマットのおかげで二時間ものドローン楽曲を可能としていること、これだけでまず価値ある音源と言えるように思う。

トーマス・ブリンクマンの『1000 keys』はピアノの音を解体再構築して作り上げられた覚醒的なアコースティックテクノだったけど、この『Inner Silence』も似たかたちで作られている。例のピアノの機構が働くノイズを精密に捉えた演奏とアンビエント的なヴェールのような持続音が組み合わさっているのだが、その持続音の部分もピアノの音を加工して作っているとのこと。
音全体の感触はウォームでくぐもったような…多少水温の高い水中に潜っているような、独特なもの。あるいは、両耳を手で塞いだときに聴こえる音に似ていると言えるかもしれない。ここから得られるイメージはいろいろあって、例えばあの両耳を手で塞いだときの音というのは鼓動とか血流の音であって、あれは胎児が胎内で聴いている音にも似ているそうだ。この映画はある意味では生まれ直しの物語、ある瞬間に社会との繋がりがドラスティックに結び直されたことを知覚するという物語であるということ。
あるいは、オルガン、という言葉の語源は、人体の器官であるということ。ピアノをそのように捉えた音楽とも呼べるような。
もうひとつが、キャストインタビューで言っていたことのうちに気になったものがあって、劇中に花火を見るシーンがあるのだけど、そこで主人公たちがコップに飲み物を持っている。花火の振動で飲み物に波紋がたつ。それで、あ、音は分からないとしても振動は、身体で感じる振動は分かるんだ、とそのキャストの人が言っていて、たぶんこのドローンが志向するのもそういう音響であるとうこと。

この作品は映画の音声トラックとして作られているので、BDへの収録の形も本編の音声トラックとして聴くというものになっている。ここが重要なのだけど、劇伴ではなくて音声トラックだ。つまり、サイレント映画形式、しかも映像と基本的には同期しないアンビエントドローンが鳴っているのみ、という。
時折の瞬きのような音の変化に偶然的に映像が噛み合うような瞬間にはっとさせられつつも、基本的な体験としては…あれに似ているかな。ヴィルヌーヴの『メッセージ』。音が映画の中の時間間隔をも捻じ曲げるような。
『インターステラー』で同じ事をやっていたように記憶しているけど、5.1chで制作されているということも面白い。それを存分に味わうために、ステレオヘッドフォン/イヤフォンを用いてサラウンド音響を再現するという音声モードがBDに入っていて、包み込むような音響にどっぷり浸かれる。
映画的な意味でも相当に実験的でありつつ、単に音楽として聴いても素晴らしい完成度。
そしてこれで観ていて本当にいい、美しい映画だなと改めて。
というか、この音の中にあってこそ、アニメーションの美はプリミティヴに立ち上がる。すなわち、そう振る舞うこと-仕草がすべて-そう存在するということ、意味から離れて、動くこと-アニメイテッド-によって生きるということ、つまり、こう捉えることはできないか?この子供たちはドローンで踊っているのだと。そこに現れるのは生きること=踊ることという、アニメという表現そのものの孕むひとつの究極的なテーゼであるはずだ。
だから僕はこの映画のクライマックス、あの美しいノイズの溢れるクライマックスにどうしようもなく涙してしまうのだろうな。すべては音楽で、音楽はいつも鳴っている。生はもう祝福されている。
本編のあの音の感じが好きならこれは買って損しない、聴く価値のある音源。ぜひ。

Strotter Inst. 『Miszellen』 Phurpa 『Gyer Ro』 『Gyud』

映画の『メッセージ』観たのですけど、非常に感動しました。
ヴィルヌーヴ監督は前作からヨハン・ヨハンソンと一緒にやっていますけど、このためだったのね、という。
というのは、ミニマル、ドローンという音楽が、音楽本来の、時間芸術というところに疑義を呈すような音楽であるからで…。
そのことを全面に押し出して演出された本作は物語のないように沿うように映画自体も特異な時間間隔を持った作品になっていますよね。
それでオープニングとエンディングが同じ曲になっていて映画が輪っかの構造になっていますけど、その曲がマックス・リヒターのあれっていうのもまた…原作で使ってた理屈からですよねあれは。
あと大澤真幸の『革命が過去を救うと猫が言う』『恋愛不可能性について』とかを思い出して、他者を愛するっていうことの奇妙な感覚を絶妙に表現しているなとも思って。
「いつかあなたを愛するということを今までずっと忘れていた」っていう、そこにおいて本作は普遍的なラブストーリーでもあるなと感じました。

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そんな感じで異端ではあるけどドローン/ミニマル系二作。
どっちもArt Into Lifeに置いてあるので探してみてください

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Strotter Inst.ことChristoph Hess クリストフ・ヘス、以前にも一度書いてるけど、ターンテーブルを用いて演奏するアーティスト。
ただそこで用いられるターンテーブル/レコードは度を越して逸脱的な改造が施されている。

今回のLP二枚組はHallowgroundなるレーベルからリリースされたばかりの最新作で、この人がリリースがそこまで多くないのもありフルサイズの作品としては本当に久々な気がする。
今回の作品は曲ごとに元ネタが表記してあって、まぁ全部が分かるわけではないのだが、それでも中にはNurse With Wound、P16D4、Foetus、Ultraなんて表記もあって、微妙に趣味の分かるような一貫性のあるチョイスがおもしろい。
元ネタ表記があるところからも推して知るべしなんだけど、今回は元の曲を結構生かした音作り。印象的なギターフレーズが繰り返されていて何だろうなと思って調べると、そこで使われているDarsombraという人はギターとベースを一人でどんどん重ねながら音楽を作っていくアーティストだったりとか。
上の映像見てもらえば分かる通りで、今までは物理的な運動の記録にフォーカスしていたことを思うと、今回の作品は新鮮。
もちろん彼らしい無機的で歪なループ/ビート感覚が全体を支配してはいるのだが、そこに元ネタとなっているアーティスト達のこれまた歪な世界観が交わって独特なダーク&ディープミニマル音響を生み出している。
更にはピアノやチェロの奏者が加わっているトラックもあり、これがまたダークな演奏でアルバムに彩りを加える仕上がり。
彼らしい無骨でロウな響きの物理ミニマルに既成音楽の解体/再構築の要素が大きく加わったアルバムで、新しい領域に踏み出したなぁという印象。
しかしこの人のLP聴いてて思うのが、演奏風景知ってるだけに(ライブで何度か見た)、あれをレコードで聴いてるっていうのが不思議極まりない状況だよなあっていう。


密教ダークリチュアルへヴィボイスドローンPhurpaの最新リリースは二枚組『Gyer Ro』とライヴ盤『Gyud』。
例によっていつもと同じ感じのアレなのだが、それと分かっていても圧倒される凄まじい迫力の内容。
『Gyer Ro』、一枚目から78分一曲の超濃厚パフォーマンス。低域でうねる声明がほとんどを占めるところはこの人達?の音楽の核を取り出したようなトラックと言えるのではないかな。
二枚目では三曲が収められている。トーンとしてはほぼ同じながら独特なパーカッションやディジュリドゥ的な管の響きがフォーカスされる箇所があって、儀式めいた構成をより強く感じさせる。
"Hundred Syllable Mantra"なる曲の声明は無数に重なっているような途轍もなく深く潜るような響きがある。どのように録音しているのだろう。
『Gyud』は2016年のチューリッヒでのライヴを収録したもの。67分1トラック。
で、なんと録音がデイヴ・フィリップス。フィールドレコーディングの他、この手の民族音楽、儀式などのレコーディング記録作品も手掛けているので、そこからの人選なのだろう。
パフォーマンスの内容はというと、これまた例によって例によるアレなのだが、録音か会場によるものか、空間の響きを利用したような半モアレ化した低域の倍音がトリップに誘うかなりヤバい内容。
人体が生み出す彼岸のドゥームメタルであり、極北の音楽行為であり、音そのものの怪物だ。
他所じゃ聴けない凄え音楽聴きたいなら、この人達を聴いてみたらいい。



 

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