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Siraph 『past & current』 MOROHA 『MOROHA IV』

随分立ってしまいましたが、何をしていたかというと、山を登っていました。
何言ってんだって感じですが…






山は、良いっすな~~~!(爆笑)

https://yamap.com/users/1003665
5月は週イチペースで登ってまして
私の山行の記録はここで見ることが出来ます


そんなこんなで



Siraph 『past & current』
は、こうしてリリースのライブにも行ってきたのですが…

あっ、このバンドについてはこの記事でも書いています

今回のアルバムはライブ限定販売のシングルシリーズをまとめたものなのだが、そのシリーズはアイディアをパッパッと早いペースでまとめて出すような感じだったらしく、そう思って聴くと確かにミニアルバムと曲の感触が違う。
もっとロック的というか、音楽としてシンプルな響きに聴こえる。
確かにリズムやサウンドの組成は奇妙で複雑なところが多いけど、ミニアルバムでの、そのレイヤーが神経症的に重なって音響っぽい領域まで行ってしまうところとはまた違うというか。
ざっくり言うと、ちゃんとポップミュージックに聴こえる。ポストロックでもない。
"風琴と朝"という曲が一番好きなんだけど、この曲はA→B→Cで4/4→7/8→6/8と拍子が変わっていく。だけどちゃんとサビに向かっていくというポップスとしてのベクトルが感じられるし、心地良い解放感があるんだよね。
続く"hyos"の5拍子にしても、そのリズムを使うためにやってるって感じはしない。ちゃんとメロディがメインになっていて。
"ニュースモーカー"などで聴かれる明快なギターソロも、あ、こういう事もやるんだ、って思ったし。
65daysofstatic的なインストの"so far"なんかも引っ張りすぎず良い刺激として加わってる。
相変わらずヴォーカルというか、ヴォイスというか、声はかなり楽器のサウンドに混ぜて聴かせてるよなって思うんだけど。
だから楽器陣の刺激的極まるサウンドを抑えるでもなく押し出すでもなく、「それでも調和する」ぐらいの落としどころ。そういうバランス感覚が抜群のバンドだなと思うのだが。
しっかし相変わらず素晴らしすぎるベース。
ライブで見て更に好きになった。




MOROHA 『MOROHA IV』
この二人についてはここで少し書いた
今回のアルバムからメジャーなんですね。
な~んかシャンッ!って整った綺麗な音になっちゃうんだろ~な~いろいろ余計な音が足されちゃうんだろうな~変なゲストが入るんだろうな~~残念残念!
って思ってたら、頬張り飛ばされたような衝撃。
いや、これ目茶苦茶スゲーよ。
こんな過剰にエモーショナルでパンキッシュでライブアルバムみたいな、そして何ひとつ足してない剥き出しの音を普通に流通に乗せていいのか。
歌詞カードが付いてるけど、紙に落としたら端からもう魔法が解けてくっていうか、やっぱ音楽なので。ラップは言葉の音楽なので。
だからただ部屋真っ暗にして大きいボリュームで集中して聴き取る。それでちゃんとした形で音と言葉が入ってくる感じがする。
だから歌詞の引用とかはここでは全くしないんですけど。

しかし録音はやっぱ良い。洗練とかじゃなくて、生々しいっていう、メジャーの方とは逆に向かう意味で良い。
ギターのスラミングの音がバシッと入ってて、だから"ストロンガー"、"スタミナ太郎"みたいなビート強調した曲がキマってる。
声の、合間の息づかい、それからMCアフロ、歌うときに本気すぎて普通に息切れしてるんだけど、それがそのまんま入ってるのが素晴らしい。
これの前に出した再録ベストで"三文銭"が圧倒的に良くて、何でかっていうと、何を思ったかこの曲での歌唱はあらゆるところで上擦って掠れて裏返ってあげくハーハー息を吐いちゃってて。あ、こんなリアリティあるんだな、でも本当のことを歌うならこれだよな、って思って。
その感じがちょっと今回のアルバム全体にある感じ。

ギター。
映画『アイスと雨音』の"遠郷タワー"が彼らの曲の中でもトップクラスに好きなのだが、この曲でギターについての意識が明確に変わってるよなって思ってて。
パターンというか、ラップを載せるためのリフじゃなくて、インストとして成立するような物語性のある旋律を奏でてる。
それって今回のアルバムでは更に進んだところに来ていて、"スタミナ太郎"、"夜に数えて"の、ラップのテンションと触発しあうように有機的にサウンドを変えていくギター、ほんとにこれはもう単独な「曲」だな、ってところに来てる。

全編本当に素晴らしくて、特にアグレッシヴな方向性の曲は聴いてて震えるほどだけど、やっぱ"米"って曲。
これはちょっと、アルバム全体からしても浮いちゃってる、桁違いの曲だと思う。
前進する細かなリズムの攻めの感じと美しいメロディの組み合わさったギターがまずアルバム中でも飛び抜けた素晴らしさ。
それで、歌ってる内容。
これはもう何も言えない。
ただ聴いてくれよって思う。歌詞カードなんか読まないで集中して言葉を聴きとってくれよと思う。
身も蓋もないリアルだけど、このことをこれだけの熱量で歌えるってスゲーよ。
ただやっぱ、ラップってこれだよなって思うんだよ。
あの『ショート・ターム』で歌ってた少年のような。
ここまで本音を出せよってことだよな。
でも同時に、今回のアルバムが凄く良いなと思ったところで、やっぱ(暗かったり苦しんでるかもしれないけど)希望に向かってるって大事かなって思ってる。
マーベル映画とかよく出来たファンタジー、フィクションが溢れてるけど、そういうフィクションが何をどう描くべきか?ってことについて、自分の考えはわりとシンプルで。
ひとつは、現実を見据えろよってことで、それがなきゃ空虚だよやっぱり。
ただ、皮肉屋になって冷笑して希望ねー現実終わってるなオレらみたいなとこが落とし所になるなら意味はなくて。
だから、現実を見据えて理想を語れよ、ってことなんじゃないか。
それが語れたら創作って意味があるんじゃないか。
それってMOROHAが何とかかんとかして歌おうとしてきたことで、それが今回のアルバムでは相当に形になって歌われてると思うよ。

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The Yellow Monkey 『9999』




ミスチルの『重力と呼吸』について以前書いたけど、ここでも同じことを思った。
あれが活動25周年のアルバムで、こちらは再結成後最初の、というマイルストーン的なタイミングでのリリースなんだけど、にもかかわらずバンドの「らしさ」と離れたことをやっているのが面白い。

ただ、再結成後の流れで見たらすごく必然性のある音にも感じる。
サウンド的には17年の新録ベスト『THE YELLOW MONKEY IS HERE. NEW BEST』と連続しているから。
バンドアンサンブルの核だけ抽出したようなシンプルな音。
ドラムスがあってベースがあってギターが乗って歌を歌って。
プロダクションとしてもドライでタイトな録音で、音の輪郭は明瞭。
イエモンらしさって以前にはもっとウェットなものだったと思うけど、ただこの音は自分には嬉しいのだ。
ロックバンドとしての必然性、全ての要素が必要だし余計な要素が一個もないという、"間違いねえな"って感じの。
これくらいスッキリしていると、ポップであることとロックであることって充分両立するというのも重要。

もうひとつイエモンが「変わった」ってことについて書こうとすると、やはり歌詞は避けて通れない。
これに関しては、それくらいはっきりと変わった。
このアルバムのテーマはまさにこれ、というくらい、言葉を変えて繰り返し、同じことが歌われる。

「錆び付いたエンドロールが流れていく
またひとつ僕たちの映画が終わる」、
「さぁ ダメ元で やってみよう
泣いても 笑っても 残された
時間は 長くはないぜ」

「DEAR MY ROCKSTAR
またあなたに呼ばれた
人生半ばで 大事なこと見つけた」

「ドアを開けたら 見たような見たことない景色が
キレイな色で塗り直されて見えた」、
「帰ることのない街 戻ることのない道
走り出したら次のゲームを始めよう」

「野原を駆け出す子供みたいに
未来だけ見て進んでいたよ
花びらみたいな君の匂いで
あと少しだけ ここにいさせてよ」

「アルバムの中の未来図はとても輝いて
ベゼルの中の鼓動は戻せやしないけれど
打ち上げ花火の向こうでは皆が待っている」

そして"ALRIGHT"、この曲本当に名曲だと思うんだけど、これの歌詞の世界観が拡張されているのが結局今回のアルバムというか。
「強い絆が絡み合って 生まれ変わる蛹
ドロドロに溶けて口ずさむ 蒼い夢の続き」

一度終わったこと、それでもまた始まること、解けたから強く結び直すということ、そういうことが歌われていると思うけど、ここまでストレートにバンドの状況を歌詞にして歌うって普通はない。
言葉選びこそ相変わらず独特のものがあるけど、歌われている内容はこれ以上ないほどポジティヴでストレートだと思う。
こういうのって今までのイエモンではほとんどなかった部分で。


そんな形で大胆に変わってはいるけれど、ああ、イエモンのアルバムだ、と思わせる一曲目で始まるというのが、巧いつくり。
"この恋のかけら"の頭のサイケデリックなギターって、『Four Seasons』における"Four Seasons"、『SICKS』における"Rainbow Man"みたいな。
こういうちょっと気怠い感じで始まるのが「あ、イエモンのアルバムだ」ってなりつつ、聴いてくうちに「あ、変わってるな」って。
"天道虫"、"Love Homme"、"Breaking The Hide"、"Balloon Balloon"のようなガレージロック調の曲が中心になっていることはアルバムのカラーを決定づけているよに思う。
"Stars"、"砂の塔"、"Horizon"といった煌びやかなアレンジの「大きい」曲は一旦活動を終える直前の感じ…"バラ色の日々"、"聖なる海とサンシャイン"、"Brilliant World"とかあのへんの空気があるのかな。
あと"Changes Far Away"で思い出すのが"真珠色の革命時代"、"So Young"とか。この二曲は『NEW BEST』で大きく印象が変わっていた曲で、これもその感じが反映されてる。程よくドライな。
こうして聴いてみると"ロザーナ"の強い洗練味のあるサウンドってアルバムの中でも特別な意志を感じる音だなと思う。
やっぱりこの曲からこのアルバムに至る道が始まったようなところがあって、その意味でバンドにとっても特別な曲ではと想像する。
それとラスト、"I don't know"のボリボリいっているベースの音聴いて思ったけど、やっぱこのバンドのベースの音やフレーズの感じって大好きで。ってか、自分がベースに取り組むにあたって…もう15年以上前になるんだけど…最初に練習したのがこのバンドなんで。そう思うのは当然なんだけど。
改めて良いなって。あんま下にいる感じじゃなくて、音の芯になっているベース、で、しかもそれがやんちゃっていう。


「特別なアルバム」ではあるんだけど、聴き終えると不思議と「普通にイエモンのアルバムだな」って思うとこもあるんだよね。良い意味でだけど。
途切れず続いていたような。
どれだけアップデートされてるかってことが、耳では分かってるんだけど。
それは結局、このバンドがいかにして一体か、ってことでもあるんでしょう。

「あなたと別れて 激しく求めて
ひとつに生まれて 無数に別れて
夜空を見上げて もう一度運命の
タイマーを回して」

そう、だから、このアルバムのサウンドのシンプルさ、タイトさを、あの言葉で表現したいと思ったんだよね。
このバンドが居ない間ロックでは死んでたように思える言葉だけど。
グラマラス、と。
 

奥多摩 日原鍾乳洞 フィールドレコーディング



先日、日原鍾乳洞というところに行きました。
関東でも最大級の鍾乳洞らしい。
奥多摩ってほんと不思議の国というか、東京都内にこんな物が存在してるって最高すぎませんか?



https://www.dropbox.com/sh/l2blh8jwr4kz9mm/AAByx9B2f60FM9vlPKVw8jeGa?dl=0
というわけで音を録ってきました。
フォルダの中に写真も入っています。

この周辺には洞窟以外にも巨岩や巨樹、高所スポット(都内で一番高い橋とか)徒歩圏内に点在していて、一日がかりでも飽きないっす。
たぶん山に入れる靴とかあるともっと楽しめるとこもあって、この時普通に街を歩くのと同じ格好で行ったのは失敗。
まあスゲー楽しかったのでみんな行ってみるといいと思います。
 

Mr.children 『重力と呼吸』




ハイハットとワン、ツー、という肉声のカウントに合わせて、光をぶち撒けるようなギターサウンドで本作は始まる。
鐘のような音色を折り重ねたギター、シンプルなロックビートを叩き出すドラムス、サビ全体を使って独立したメロディとして振る舞うようなベースライン…このバンドはアルバムにイントロ的なものを配して立ち上がりはゆったりとしているときが多いけれど、今回は一曲目からハイライトになっている。

『重力と呼吸』。重力と呼吸、足と心肺と言い換えてみれば分かり易いんだけど、本作のタイトルは、単純にビートって意味であろうと解釈している。
"箱庭"、"addiction"、"秋がくれた切符"あたりを除くと、全体を貫くようにひとつのシンプルなビート、ロックのためのエイトビートが鳴っていることに気づく。
単純にロックアルバムだ。
楽曲の幅ということでいうと、これまでで一番狭いんじゃないか。
ただ、逆説的に、エイトビートのロックってフォーマットはなんて豊かなものなんだろう、と感じる。
アレンジ的にもきわめてシンプルで、ギター、ベース、ドラムス、そしてヴォーカルという4つの要素がはっきりと中心にあって大きなスペースを与えられている。
そのことで、この4要素のアンサンブルという形態の研ぎ澄まされた美しさに思い至る。


"海にて、心は裸になりたがる"のパンキッシュなイントロにも意表を突かれる。シンプルなんだけど、このシンプルなことを今までやってなかった、しかもそれが痛快なほど気持ちよく鳴っている。
ちょっとゴリッと歪んだベースの音の感じとかたまらないものがある。ベースといえば最後のサビ頭のヴォーカルとユニゾンするようなダブルストップがまた良い。

"SINGLES"のコードとメロディの感じとか、こう来たか!というフックがまた異様に気持ち良いわけで、美しいメロディだけで構成されてる、それを活かすためのシンプルなビートがある。Bメロでのリズムを引っ掛ける感じはアルバム中でも"himawari"とか幾つかあって、こういうシンプルな仕掛けもサウンドがこうなってるから最大限の効果を上げてる。

"here comes my love"もやはりギター・ドラム・ベースのバランスがデカいからこそのロック的なダイナミズムが楽曲の全てと言っても過言ではなくて、こういうのってロックバンドというものの美しさだよなって思う。ギターソロのなんか笑っちゃう感じも例えばM2のノリとかと繋がってて、今回はこれがアリっていうアルバムだったんだろうな。それが本当に良かったなと思う。

"箱庭"~"addiction"はファンク調の、アルバムの中では異色の曲になっている。ちょっと『Atomic Heart』とかの昔の感じ、あるいは"こんな風にひどく蒸し暑い日"とかあの辺りの曲も思い出すんだけど、バンドのスキルの向上に伴って、グルーヴが格段に磨き上げられてる。"Addiction"のリズム体のノリ、サウンドのイカツさも含めて、これがロックバンドのアルバムなんだよってことが、この曲調だからむしろ強調されてる。

"day by day"は"靴ひも"とかのバンド全体で刻むアレンジの発展形なんだけど、合間合間に挟まるギターのフレーズのキャラクターの濃さ、それからやっぱりベースの音、本アルバム用にチューンされたエッジな響き。曲自体はめちゃくちゃポップであるということによって、そんな響きがより際立つ。

"秋がくれた切符"は『DISCOVERY』における"Simple"のような役割で配されていると思しきアコースティックナンバーで、ただ何かもうめちゃくちゃに良い曲であるということしか言いようがない。やはりこういうミドルテンポの繊細なポップソングを書かせるとこのバンドは圧倒的なところがある。

"himawari"は先行シングルだけあって、従来のミスチルのらしさを一番感じるような曲ではあるんだけど、本作以前にやっていたこの手の曲、"sign"とかに比べると各楽器のサウンドが格段にエッジー。この時からもうロック的な方向性を見ていたのが分かる。

"皮膚呼吸"、最初のトラックと同じく、アルバムの最後って今までだとやっぱりグッとトーンを変えてきて、終わりますよという感じになってたんだけど、これは珍しくアルバム全体のノリと地続きになっている。
チャイミーな美しいサウンドのギター筆頭にM1"Your Song"に立ち戻るかのようでもある。
いや、更に的が絞られているような。ギター、ベース、ドラムスのアンサンブルが発する眩いような響き。
やっぱこのアルバム、ベースが全体に素晴らしくて、2コーラス目のストリングスのようなベースライン、間奏部のベースソロ的な箇所など、サウンドがシンプルな分スキル的なところで多くの役割をカバーしてる。
そして最高のメロディ。シンプルなバンドアンサンブルと響き合って互いを際限なく高め合うような、そういうロックバンドの魔法が、何にも遠慮することの無いようにそこら中で起きている。
この曲では"出力が小さな ただただ古いだけのギターの"、"サステインは不十分で今にも消えそう"な音こそ"特別"、と歌われる。音楽の選択肢の中でも最早かつてのようなイニシアチブを失って久しい、そのギターという楽器は、なんて美しい音をさせるんだろう?というそのこと、それはロックという言葉の意味で、このアルバムが見せる景色にひとつの形を与えてもいるんじゃないか。


前に記事にしたばかりだけどアルバムなら『DISCOVERY』、あるいは曲だったら"youthful days"、"and I love you"、"Worlds End"あたりを思い出すような…つまり、生々しくてロックであるということなんだけど、そのどれよりも地面を強く踏みしめていて、そして高い地点に行っている。何かこれは軽々しく使う言葉ではないっていうのを重々承知した上で、今その言葉を使おうと思ってるんだけど、つまりこれはこのバンドの最高傑作だということ。
ひとつのバンドを25年もやって、そういうものを作るのがいかに難しいか、しかもそれを今までにやっていなかった、しかしあまりにも愚直で真っ直ぐな単純な方法で成し遂げるということ、なにかポップミュージックの奇跡が収まった箱が今目の前にあるようでくらくらする。
バンドがアルバム作るならセルフプロデュースが最善説がまた強化されてしまったなぁとかまだ言いたい事もあるけど、このアルバムを聴いてすぐに思った印象を一言でいうとこういう言葉で。別のバンドの曲名を引用するような感じになっちゃって申し訳ないけど。
光のようなロック。
光のようなロックアルバムだと思う。

 

Mr.children 『DISCOVERY』





ミスチルことMr.childrenの中で一番好きなアルバム。
生まれて初めて手に入れたCDアルバムでもある(それまでもレンタルはあったけど)。
どこかに家族旅行に行った帰りのサービスエリアの売店で親に買い与えられたという謎のシチュエーションだったので、よく覚えている。
世の中にはなんて素晴らしい音楽があるんだろうと思って、毎日毎日飽きもせず聴いた。
それからラジオを聴くようになって、カセットに吹き込んではいろいろ聴き漁った。
中学を卒業して高校に入学する間の春休みで、ベースギターを買った。ほぼ衝動買いみたいな感じだった。
地元の駅前にあった楽器屋で、ベース入門セットという、ひとしきりのものが揃ったセットがあって、3万円だった。
映画の『マトリックス』で赤のピルを飲むか青のピルを飲むか選ばされるシーンのように、赤と青のジャズベースのどちらかを選べと言われた。
赤を選んだのは、『DISCOVERY』のツアーパンフで見た写真でベースの中川が同じ色のジャズベースを使っていたから。
最初の教則本はうまく飲み込めなかったんだけど(小中学とも音楽の成績が「がんばりましょう」「1」だった自分には何が書いてあるのか分からず…というかなんでそれで楽器始めようと思ったのだろう)、当時好きなバンドのひとつだったイエモンの廣瀬が書いた教則本が抜群に分かり易くて、何とか演奏できるようになった。
その流れでイエモンのシングル集のバンドスコアをそこそこ攻略し、次に買ったのが『DISCOVERY』のバンドスコア。
全部コピーした。


改めて聴いてみると、自分の好みの根元にあるようなアルバムなのかなと思う。
単一のメロディを反復しながら、何本ものエレクトリックギターが折り重なるように進行する"DISCOVERY"から、ガコンとバンドサウンドという感じで始まっている。それは本作のマニフェストのようでもあって、全体に渡ってバンドサウンドを中心としながら、ミスチルのアルバムの中でもとりわけシンプル・タイトかつパワフルな音作りが為されている。いや、この一曲目よりもっと前、モノクロのジャケットのところからそれが始まっていると言ってもいいかもしれない。
"光の射す方へ"もまた、グシャッと潰れたギターの強烈な音色で始まる。シングル曲にも関わらず7分近い尺のあるこの曲は、ハードな冒頭からポップで推進力のあるサビ、そしてポストロック的な後半部へと展開していく。この曲に限らず曲の長いアルバムという印象なのだけど、同時に「曲が長いと感じないアルバム」でもあるのは、やっぱシンプルなアレンジとサウンドによるところが大きいのか。
"ニシエヒガシエ"の入りのドラムフィルには今でも震える。バッキバキのサウンドはライヴアルバム『1/42』では更にビルドアップされていて度肝を抜かれた。しかしこれもよく聴くとガチャガチャと騒がしい訳でなく、実はアコギが軸にあるサウンドで、例によってシンプルアレンジで構成要素それぞれのヴォリュームを大きく見せること、メリハリをつけた展開で作るダイナミクス、そんな工夫でラウドに聴かせていると分かる。
先に話に出したツアーパンフの中でもインタビューに答えて「ネガとポジ」だとか「白と黒」だとか言っていて、二面性というあり方にこだわっていたのが窺えるのだが、本作の内容もふたつに分けられると思っている。ロック寄りなサウンドの楽曲とアコースティックなものを中心にしたサウンドの楽曲。ミスチルのアルバムにしては全体の統一感が強く感じられるのって、それが大きいんじゃないかな。
柔らかなアコースティック中心のサウンドの"simple"、"I'll be"、それから二面の間を蝶番のようにつなぐ"Prism"のような楽曲においても、共通して各マテリアルの感触が生々しく、それからメロディにはブルージーなものが深く滲んでいるように思える。要するにスタンダードなポップスのように綺麗に整えられたサウンドでなくて、またカラッと明るい楽曲というのもない。
このへんの、全体の感触というものを考えると、勿論本作はギターのサウンドが主役になっているアルバムではあるんだけど、それ以上にベースの音が全体のサウンドの印象に作用しているんじゃないか。
中域をゴッソリと使って常に強い存在感があり、そんな音でフレーズ的には音符のヌキが絶妙で、ベースが鳴っている/鳴っていないという場面ごとの区分がはっきりと分かれている。この辺りの音作りはこれ以前のミスチルではあまりなくて、それがアルバム全体で貫かれているのもまたこれが特別なアルバムと感じさせる要因でもあるのかな。"アンダーシャツ"のオートワウみたいなベースが主役になっているところも少なからずあるし。
独特なトレモロの使い方筆頭に、記憶の中にあるより数倍ド派手なギターが鳴っている"#2601"を聴きながらロックとしてのミスチルというものに少し思いを巡らしてみる。
"Atomic Heart"あたりまでは丸っこく軽やかなポップバンドという感じだったのが、"深海"、"BOLERO"になるとかなりロックな音になっていたという印象を持っている。ただそのロックは厭世としてのロックというか、アイロニカルなムードが強く出たもので、対時代的ではあるけれどどこかぎこちないところも感じさせた。明るく振る舞うこと、ポップであることに対して"ただ面倒くさかっただけ"、"形だけに目を奪われてただスマートに収まってようとした"ような。それを大きく感じるのは桜井のヴォーカルスタイルで、独特の嗄れ声はこの時期大げさな程までに強調されている。ただ、シングル曲の"名もなき詩"、"Everything (It's you)"あたりは、この時のヴォーカルスタイルあってこその名曲だと思うけれど。
それで改めて戻ると、"#2601"で特に気付くのだが、アルバム全般に渡ってヴォーカルに大きな説得力がある。丸くも尖ってもない、何より曲によって作り分けていない、ナチュラルなスタイルで、しかもそれがアルバム全体をうまくカバーできている…というところで、再三「アルバム全体のまとまり」というところに思い至る。
"終わりなき旅"では7分に渡ってシンプルなエイトビートが続いていく、にも関わらず転調を繰り返していくので、コピーしていた当時にこれは覚え難くてかなり難儀した記憶がある。これをシングル曲にしたのもまた勇気あるなあという感じ、ただそれは曲のタイトル、テーマに沿った決断としてのアレンジなのだろうというのは今は理解できる。1分間のアウトロ部がなんとも贅沢な尺の使い方。
アルバム中において配置されていた各要素の間を激しく旅していくような"Image"はかなりプログレッシヴな印象を与えるけれど、美しいメロディが全体をしっかり繋いでいる。60分を超える長いアルバム(ミスチルのアルバムとしてはこれが初だったようだ)の終幕としてこれ以上ないと思えるこの曲が実はアルバム中一番短いというのもちょっと面白い。


アルバムとしてここから先の『Q』はブルージーなところを多少引き継ぎつつも本来の彼ららしい華やかでカラフルなポップサウンドに、『IT'S A WONDERFUL WORLD』はもっと明快にカラッと開放感があり、『シフクノオト』は完全にポップサイドという感じでわりと華美過剰気味のサウンドに移っている。
『I ♥ U』がわりと『DISCOVERY』と近いように思っていて、それはこの流れの中で見るとシンプルかつ生々しいサウンド、パリッと二面に(アナログ←→デジタルという形で)分かれたような内容による。
勿論それぞれに好きなところがあるけれど、でも自分にとっては『DISCOVERY』が特別なアルバムなのだと、改めて聴いてみてなお強く感じた。



しかしなぜこのアルバムについて書いているんだろう?
なんか最近長いインターバルを経て再び?ポップスが好きになるに伴って、音楽の区分とかが本当にどうでもよくなりつつあり、そのせいなのかな?
最近よくあるやつで、音楽の趣味が○○歳で固定されるとか〇〇歳から進歩しなくなるとか、そういうことを聞いたときに、普通にいいことじゃん、みたいに思うのもあるのかな。
最近といえば思うのが、ここのところ昔あったこととか思ってたことみたいなのをよく思い出すんだよ。
で、その昔のことを参照しながらこうして昔聴いてた音楽を聴いて今の感覚で発見というか気付くことが沢山あって、それが面白かったりもする。
誰かが言ってた、音楽を聴くという行為の過去を参照しながら未来に期待する性質というのも、たぶんそういうことなのだろう。
てか、さっき「今の感覚で発見」って書いたけど、これ明らかに記事終わるタイミングなんだよね。
DISCOVERYって発見って意味だから。
なんかそういう上手い感じの締めをすれば良かったな。
まあとにかくさ、ポップスが新鮮に聴こえたり普通だったら多分そこまで行けなかったような気付きがあるって、まわり道したんだとしても、いろんなもの聴いてきたの結構良かったかな、ってなんか思ったね。
 

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伊達さん

Author:伊達さん
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