Rhys Chatham 『Guitar Trio Is My Life!』

Guitar Trio Is My LifeGuitar Trio Is My Life
(2008/03/04)
Rhys Chatham

商品詳細を見る


ノー・ウェーヴ、ノイズロックのオリジネイターの一人、実験音楽家、ニューヨークの重鎮アヴァン・ギタリストRhys Chatham。アヴァンロックのスタンダードにして彼の代表曲、"Guitar Trio"という曲がある。77年に作曲され、今に至るまで様々なアーティストに演奏されてきたこの楽曲、内容はというと…なんと、ワンコードのリフをただ延々と演奏し続けるというもの。シンプルというか、ミニマルの極み。Eコードを定型のリズムで刻み続ける、それがたっぷり3枚組で3時間分、このアルバムには収められている。

ここに収められた演奏はすべてライヴ音源で、ブルックリン、シカゴ、バッファロー、トロント、モントリオール…、とロケーションごとに違う演奏者達とセッションする様子を聴くことができる。この演奏者たちの顔ぶれたるや錚々たるなんてもんじゃなく、Sonic Youth、God Speed You! Black Emperor、Silver Mt.Zion、Alan Licht、Tortoiseなどなど…。
編成は基本的にベース&ドラムのリズム体+ギターで、ギターの本数はテイクによって異なり6本~11本(!)。この楽曲の基本は単一のコードを奏でるギターによる重層的なハーモニーで、だからどうしても多数のギターが必要になるというわけ。
更に、聴いていると楽曲のもうひとつの骨子となっているものに気付く。例えばサイケデリック・ロックで同じようなリフレインを基本にした演奏をする場合に、リードギターがソロをとり始めて…というのがよくあるパターンだと思うんだけど、この"Guitar Trio"にはそれがない。派手なソロも、エフェクトも、大きな崩しもない。リズム体に関してはある程度の自由な演奏が許されているように聴こえるけど、それはこの楽曲が(曲名の通り)ギター以外には特に演奏の指定を持たないためだと思われる。アルバム内でもジャズにかかる音楽性のアーティストが多く参加していることを考えても、これは不思議なことで…。恐らくここにRhys Chathamは何らかの制限を設けていて、この"Guitar Trio"が意図するところもそこにある。

音楽の本質、と言ってしまうと大げさなんだけど、そのときそこにしか存在し得ないもの、記譜不可能なもの、再現不可能性、音楽の剰余の部分(やっぱり僕は音楽の本質はそこに付随するノイズだと考えている…。)、そういうものに迫るアプローチって簡単に考え付くところでふたつあって…。
ひとつはフリーインプロ的なアプローチ。その場で生まれる音というのを突き詰めていって、意図した出音と意図しない出音の垣根が消えるくらいのところまで…音楽がそのどちらも内に組み込んでしまうようなところまで行ったときに、音楽は記譜不可能な(記譜したところで何ら捉えられるもののない)ものになっていく。
もうひとつは真逆の方向、制限を強めていくアプローチ。例えば多くのロックバンドにとってライヴというのは再現の行為だけれど、にも拘らずそこではしばしば「そのとき」「そこにしか」ないものが生まれる、ということは、理解し易い感覚としてあると思うんだけど…。で、それに迫るためのひとつのアプローチが、ミニマルな手法の追求にある。再現可能性が高く、余分の入る余地のないものの中に、それは浮かび上がる。Rhys Chathamは感覚的にそのことを知っていて、ロックの文脈の中でそれを抽出しようとする実験がこの"Guitar Trio"なんじゃないか。
…しかしこのふたつのアプローチって、音楽として面白いかっていうのを抜きにして突き詰めたら両方ノイズドローン的な領域に行く気がしてて、真逆のものが極端なところで重なるっていうのがちょっと不思議なような。

収められている中で特にヤベーなと思ったのはシカゴでの演奏。Pt.1と2があって、それぞれ30分と23分の長尺の演奏なんだけど、特に2のほう。同音の無数の連なり、付随する大量のノイズの中からなぜか芳醇なメロディの聴こえてくるような演奏で、ここにRhys Chathamの意図するものが確かに姿を現しているように思える。
ギタリストはTortoise(他アヴァン寄りジャズ関係の仕事も多く、Ingebright Haker Flatenのクィンテットなど)のJeff Perker、U.S.MapleのAdam Vida、90 Day ManのRobet Lowe、他にもアヴァン畑のDavid DaniellやEric Blockなど…。うーん趣味が出るな。


というわけでちょっと異様な内容のライヴアルバムの紹介でした。
続きにライヴ映像など。
スポンサーサイト
 

プロフィール

 

伊達さん

Author:伊達さん
恐怖と雑音と
カワイイだけがオレの信仰
about

拍手する

 

最新記事

 
 

カテゴリ

 
 

月別アーカイブ

 
 

検索フォーム

 

 

twitter

 

 

リンク

 
 

FC2カウンター

 

 

RSSリンクの表示

 
 

最新コメント

 
 

最新トラックバック