Dave Phillips 『A Collection Of Hair』


Collection of HairCollection of Hair
(2013/04/02)
Dave Phillips

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Amazon、あるのかよ!って思わずびっくりして貼ってしまいましたけど、Art Into Life屋さんのほうが安いのでこっちで買ったほうがいいです。
まぁ気持ち悪いジャケですけど、安心して下さい。中身はもっと比較にならないほど気持ち悪いですから。


Dave Phillips デイヴ・フィリップスというアーティストは、80年代にスイスの伝説的グラインドコアバンドFear Of Godのベースプレイヤーとしてキャリアをスタートしている。そこでの活動と並行して個人名義で実験音楽の制作を始め、90年代に実験パフォーマーRudolf Eb.er ルドルフ・エバー、Joke Lanz ジョーク・ランツ率いるグループSchimpfluchシンプフルクに合流、本格的に実験音楽家としての活動をスタートすることになる。

Shimpfluchとはどんなグループなのか?
例えば代表的なパフォーマンスに次のようなものがある。



ちょっと何をやっているかが理解の難しいところがあると思うんだけど、これは4人の人間の脳波をノイズに変換するというパフォーマンス。
身体と直結したノイズ、このことから彼らは"スイス・アクショニズム"なんて呼ばれる。アクショニズムという言葉は、60年代に前衛芸術家Hermann Nitsch ヘルマン・ニッチらが展開したウィーン・アクショニズムに由来する。彼らが行ったのは動物の解体や自傷といった過激な内容を含むパフォーマンスで、やはり身体と直結した表現を最大の特徴としている。"スイス・アクショニズム"は、これの音楽的実践と言ってもいいかもしれない(より詳しく知りたい人はここで。パフォーマンスの様子を見たい人はRudolf Eb.erでyoutube検索かけてみるのがいいかもしれません)。


とここまで前説をしたところでやっと音源の話に入れると。
というわけでこの『A Collection Of Hair』はDave Phillipsの1995年から2011年の音源をアーカイヴした二枚組。150分32トラックに渡って濃密に収められた彼の音楽世界を充分に堪能できる内容。

トラック1"Devil Disease / for the Tasmanian Devils 1"が彼の描き出すものを端的に表現している。その中で聴こえてくるのは、動物の鳴き声と何かを打ち付けるような短い破裂音、引き伸ばされたストリングスらしき低音ドローン、フィールド・レコーディング。各音声は整然とコラージュされているけれど、音はどれも耳障りで生々しい。
ここで登場する動物/人間や生命のイメージ、暴力と不安のイメージは常に彼の表現の中心になっていて、音源中に繰り返し繰り返し現れる。
順に聴いていくと、例えば"The Possibility Of Life's Destruction"というトラックでは、止むことのない人間の悲鳴とピアノの暗澹としたロングトーンが中心になっている。"Untitled (For Extrapool)"、"Wright Rong"で強迫的に反復されるヴォイスサンプルにも密やかな暴力のイメージが見え隠れする。"From Upstairs With Love"では、大人の怒鳴る声と子供の泣き叫ぶ声がただそこにあるように生々しく収録されている。"021213"というライヴ録音では金属的ノイズ、自身の呼吸と苦しげな咳き込み~絶叫のヴォイスが中心になっている。

こうして聴いていくと面白いのは、彼の音楽が電子音にほとんど頼らず作られているということ。ノイズ・アーティストと呼ばれる人たちの音楽でこういったものはとても珍しい。
電子音の代わりに用いられているのが人間の音声や生楽器のサンプリングなどの具体音声で、しかもそれらは(ほとんどのノイズ・ミュージックと異なり)ストーリーや文脈を匂わすような形で配置されている。執拗な反復。重く澱む低音。不協和。シリアス。鋭く不快で象徴的。描かれる物語は常に神経症的な不安や静かな暴力を仄めかしているように思える。
アクショニズムとして捉えるなら、人間/動物の声=身体を軸に置きつつ形づくられる具体音楽(ミュージック・コンクレート)、と表現することができる。
そこに暴力を絡めることの意味は何だろう?と考えたときに、見ていて強烈な衝撃を受けた彼のパフォーマンスの映像があって…。

自身の制作した映像の上映をしているんだけど、結構キツい表現もあるので、少し見てみてムリという人は早めのギブアップをお奨めします。ただこれを見られないことには今回の音源を通して聴くのも大変かも。

Dave Phillips at Neon Marshmallow Fest (Day 2, 8/20/10) from Bullart. on Vimeo.



見て何を感じるかは人それぞれなとこあると思うけど、これは彼の表現の一番エッジな部分のひとつを確かに取り出している気がして。ルーツにパンクやポリティックなものがあるという彼が、身体や生命を素材として用いることの理由もここに少しは見つけることができるのではないかな。


彼の音楽自体は去年の春にスーパーデラックスでやったLUFFでライヴで見て興味を持っていたんだけど、いくつか音源を聴いてみたらやっぱり独特すぎる音楽を作っている人だった。一般的(?)なノイズとは毛色が違うけど、世界観、音ともども完成されているなーと。
しかしstrotter inst.やFrancisco Meirinoなど素晴らしいアーティストを沢山知れたLUFFは本当にいいイベントだった。


他に持っている音源のひとつで『They Live』というLPなんだけど、このジャケはちょっと色々とヤバいと思う。
theylive


続きにライヴ映像。
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