Christopher Young 『Sinister』 Joseph Bishara 『Insidious』

ここ最近また映画を借りてきては観まくっていて(カネがないときの一番の娯楽)、特に良かったやつが3本ほど。

『ミヒャエル』は保険会社で働くごくごく普通のおじさん、ミヒャエル氏の小規模な生活を無機質なトーンで淡々と描く映画。しかしこのミヒャエルおじさん、ひとつ秘密を持っていて、それは、さらってきた10歳の少年を自宅の地下室に軟禁している、ということなんですね。
ただそのふたりの関係は不思議なもので、一緒にクリスマスを祝ったり二段ベッドを作ったりする。一方で直接の描写はないけれども、ミヒャエルは明らかに少年に対して性的虐待を行っている…普通のものがちょっと歪んでいるっていうところを静かに描いてて、独特の迫力のある映画でした。

『プロジェクトX』は負け組高校生3人組が誕生日パーティーをクッソ盛り上げてモテてやるぜ!フェイスブックで悪ノリ告知!大当たり!というしょうもない話のモキュメンタリ。しかしこれが異様な程に面白いのです。
何が凄いって全く内容がない。空虚なんだけど、ハメ外しまくってる人たちをゼロ距離で映して、そりゃありえんやろ~というようなキメのシーンをガンガン入れていく、それだけでモノすごいテンションの映像が出来てしまったという。
好きなバンドのライヴとか行ってハイになって絶叫しまくってる状態とかあると思うんですけど、あれを擬似的に作り出すような…麻薬的な映画。

『少年は残酷な弓を射る』、まぁ少年が残酷な弓を射る話で、観ながら、おっ、この少年、残酷な弓を射てるなァ~、と思ってたんですけど。
これはこの手の映画の中でも特殊で、ぜんぜん社会が描かれない。とにかく話が「少年」ケヴィンくんとその母のエヴァさんの二人の関係を描くことだけに終始している。この手の話を個人的なドラマに極端に振るのって結構勇気あるよな~と思っていて、画作りもアヴァンギャルドな色彩が飛びまくっていてまぁ攻めてる映画だなと。
あとケヴィンくんを演じるエズラ・ミラーという役者がすばらしい。あんまりにもディオ顔なのでびっくり。



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てなワケで頭から長々と映画の話をしたんですけど、僕、映画を観るのはまぁ好きなんですけど、もうひとつ、サントラ聴くのもまた趣味なんですよね。
それは映画に限った話ではなくて、例えばアニメでも『青い花』『キルミーベイベー』『ドラゴンクライシス!』とか、往々にして優れた作品には優れたサントラがついてるもので…。直近だと『惡の華』のサントラが来月出るんですけど、これは電子海面という実験即興モジュラーシンセユニットのメンバーによる作品で、本編聴いててもドローン~ノイズ~ダークアンビな音響がちょっとアニメのサントラとしてはない感じ。

ってまた不自然にアニメの話にスライドしつつあるんで話を戻すと、映画のサントラって大きくは二種類あって、
・劇中で使用された既存の楽曲をコンパイルしたもの
・作品のために書きおろされた楽曲をまとめたもの
…ふたつをまとめたものもあるんですけど、僕が好きなのは後者のほう。作品のために作られたということでコンセプチュアルな「アルバム」としてまとまっている場合が多いし、作家の個性なんかを探るのもおもしろい。

そんで僕の好きな映画ってまぁホラーなんですけど、ホラーってこのサントラって部分で近年大きな環境の変化のあったジャンルで。それは何かっていうと勿論、いま実録映像という体で撮影されたフェイクドキュメンタリ風映画、所謂モキュメンタリというのが巨大勢力になってるということですよね。これらの映画の面白いところって、当然ハンディカムなりなんなりで撮影されたナマの映像という体なんで、基本的に音楽がついていない。ないし極端に少ない。
それでこの手の映画の手法って、他のもっとスタンダードなホラーのほうにも輸入されてきちゃっていて、いまホラーで音楽を使うっていうことは、慎重にというか意識的にやらないとダサいということになってしまっている。
ホラーのサントラってここ最近ではその戦いの軌跡みたいになっているところがあると思っていて、ゆえにクセが強くて作品にガッチリ噛んでいて、聴いてて面白いものが多いんですよね。



SinisterSinister
(2012/10/30)
Soundtrack

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で、この『Sinister』、日本では『フッテージ』なるタイトルで公開された映画ですけど、これはもう音楽/音響が抜群にカッコイイ。
既存の楽曲としてもSunn O))) & boris、Ulver、Boards of Canadaといったアーティストが曲を提供しているんだけど、ベテランサントラ作家Christopher Youngがそれらに沿うようにして作った楽曲たちがまた負けず劣らず良い。
で、この盤はそのYoungによる楽曲を集めたもの。

楽曲のベースになっているのは低音盛り盛りのインダストリアルな金属ビート、錆びた質感のディープシンセ。そこに神経症的なドローン、コンクレート・ノイズ、ヴォイスサンプルを散らした作風で、もう完全に前衛な音風景。
リヴァーヴがかったピアノにビートの絡むような曲もあってこのへんはサントラらしい。同じピアノでも演奏をバラバラにカットアップしたような楽曲も並んでいるけど…。
タイトルトラック"Sinister"は、65daysofstaticなんかのデジタルビートが絡むポスト系バンドの楽曲に実験ノイズを継ぎ足したような楽曲で圧巻。
なんだかDave Phillipsに似たようなところも垣間見えつつ、この手のビート+ドローン~ノイズみたいなのって近頃の流行としてShackletonとかHype Williamsみたいなアーティストにも接近しているよねーということでお薦めできる格好いいアルバム。



こっちはまた違った趣向のサントラで…

InsidiousInsidious
(2012/05/22)
Soundtrack

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これを手掛けているJoseph Bisharaという人はバリバリのホラーサントラ作家で、まぁそれに相応しいものを作ってくるよなという。
この『Insidious』インシディアスという映画は、何と言えばいいのかクラシックなところに回帰したような内容のホラー映画で、ある種古典的な内容をいまの最先端クオリティで作りました、というものなんだけど、面白いことにサントラもそれをなぞった内容。
古典的なホラーの音楽として想像されるもので、ストリングスの不協和音がビャ~~~と鳴っているものがあると思うんだけど、まさにあれ。

演奏は全編ストリングス・カルテットとピアノで行われているけど、内容はかなりのアヴァンギャルド具合。
ピアノ弦をかき鳴らす内部奏法に始まり、叩き付けるような激しい打鍵、ストリングスは尾を引いて引きずるノイズを執拗に繰り出し、耳障り極まるトーンクラスターへ。
その中にミニマルで美しいメロディの小品がサラッと入っていたりして、これもまたサントラらしさかな。
パンフの監督インタビューを読むと音楽面ではKrzysztof Penderecki クシシュトフ・ペンデレツキやAngelo Badalamenti アンジェロ・バダラメンティといった作曲家を参考にしたとのことで、前者はバリバリの現代音楽の人、後者は『ツイン・ピークス』なんかのリンチ作品への音楽提供で有名と、なるほどという感じ。

この手のノイジー&アヴァンギャルド室内楽~現代音楽はごく最近の『死霊のはらわた』なんかでも使われてたけど、あっちはもっと確信犯的にクラシック・ホラーの空気を作り出す目的で作ってて、こっちはもっとスマートなつくり。
そんなわけで単体で聴いてもめちゃくちゃ格好よく、文脈的に見ても面白いアルバム。



…というわけでちょっといつもと感じを変えて、サントラについて書いてみました。
ホラー限らずサントラって面白いものが多くて、例えば一番上で少し書いた『少年は残酷な弓を射る』、これはレディへのジョニー・グリーンウッドが楽曲提供して前衛的な一面を覗かせていたり。『かいじゅうたちのいるところ』、おなじみカレン・Oのアルバムとして見てもめちゃくちゃ秀逸なトイ~チャイルディッシュ・ポップな作品だったり(これのメインテーマの"All Is Love"、ガチの名曲でめっちゃめちゃ泣けます)。ヴィンセント・ギャロは自作の映画に音楽もほとんど自分で作ってて、映画用の曲集なんてのを出してたり…。

まぁこのへんの話は尽きないんで、また面白いサントラを見つけたら書くかもしれません。
しかしTortoiseが手掛けた『ラブリー・モリー』サントラや狂ったように低音を盛った超不快ドラムンベース『セルビアン・フィルム』はCD出てないor音源化すらされてないぽいのよね。
想像はつくと思うけど、やっぱサントラって商業的に考えたらなかなか厳しいのね。
優秀な作品はちゃんと形として世に出てほしいなって思いますけどね。
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