大友良英 『ギター・ソロ 2015 LEFT』 『Guitar Solo 2015 RIGHT』

ロバート・ゼメキス監督の『ザ・ウォーク』を観て来ました。勿論IMAX3Dで。4列目の、視界いっぱい映画が埋め尽くす席で。
ワールドトレードセンターのツインタワーの間にワイヤーを張り、命綱なしでそれを渡ったフランスの綱渡り師プティを描いた実話映画なんですが。
ゼメキスらしい時代の先端の技術を使った映像は、3D映画、ここに至ったか、という感動があるし、もう文句なしに最高の映画体験。
『ゼロ・グラビティ』なんかと同じく、これを描くためにこの技術が必要だったという必然性のある映像。
ただこれ観て非常に感じたのは、これはやはりワールドトレードセンターの映画だなということなんですよ。
今はああいうことになってしまったツインタワー。それが─馬鹿げて狂って壊れてるかもしれないけど─美しいああいう夢の舞台になったってことを、今語り直しておくことの意味ってあるだろうと。
これだけ書くと苦くてしんみりした話かと思っちゃうけど、それについて、最後にプティが永遠について少し話すのを聴くと、そうでもないというか。
ゼメキスがこれまで撮ってきた『フォレスト・ガンプ』『バック・トゥ・ザ・フューチャー』みたいな映画と同じく、この映画もこれからずっと残ってくのだろうと思うんだけど、そこで描かれてきたテクノロジーとか歴史、未来への楽観、希望がこの『ザ・ウォーク』に繋がってて…つまり、ここで最新技術フル投入して作り上げたワールドトレードセンターを見せてゼメキスが言いたいのは、永遠なんてない、変わらぬものなんてない、なんてことでなく…むしろ逆。永遠はあるよ。映画の中で夢の舞台として、永遠に残る。美しいものはずっと残る。それなのかなと。そういうゼメキスの映画の魔法、美に対する曇りのない真摯な信頼のことを思うと、オレは涙せずにはいられないんですよね。


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guitarsolo.jpg
ギターソロ 2015 LEFT
Guitar Solo 2015 RIGHT

あまちゃんおじさんこと大友良英の、去年の夏と大晦日に出ていたギターソロ作品×2。
この人あれで有名になったと思ったら、やったことがテレビに出てはお茶の間に向けてノイズミュージックを流し、ノイズインプロやってヘラヘラしてるという…すごいっすよね。なんか。
僕も去年一度ライブ見た時はノルウェーのノイズデュオBlack Packersとのライヴで、ほとんど通常の意味でのギター演奏をせずに延々フィードバック出してましたからね。
そんなわけで、かなりおかしなおじさん大友さんの音楽とはいかに。いや僕も近年の大友さんの音楽をあまり聴けてなかったんだけど、ある日テレビでとんでもないノイズギターソロを演奏してる姿を見て、やはりこの人の弾くギターは格好いいなあと思い、そこにこんなのが出るということで。買ってみたと。

ちなみにジャケットになっている使用ギター、'63年製のギブソン175、これは高柳さんが生前使っていたものとの事。


こういうジャケにタイトルなんで同じテーマの内容かと思いきや、全く違うアプローチの作品なんで、別々に…。
まず『LEFT』から。
こっちは大部分で純然たるギターソロとしての大友さんの音が楽しめるアルバム。
高柳さんも演奏したオーネットの"Lonely Woman"の演奏が特にすばらしい。
なにも纏わないギターの素っ気ない単音から始まって、テーマのメロディを追いながら徐々にヴォリュームが増していき、音がひび割れ、フィードバックノイズが立ち上がる…ヴォリュームを上げる程に繊細に演奏の際に生じるノイズを拾い上げるギターの特性、それを反映させるように、ミュートされた弦を擦るピック、指が弦の上を滑る様子まで目の前で展開される音像。
ビキビキと狂おしく鳴きまくる高音のスクラッチノイズ、たっぷりと間を取ったフィードバック、硬質なトーンで多様なノイズ的奏法を組み込みつつ進む即興演奏、ああ、これこれ!これが聴きたかった大友良英だよ、と。やっぱ大友さんの表現形態の中ではギターソロが一番好きかな。
エフェクト使いは基本的にシンプルで歪みだけに聴こえるけど、オリジナル"The Blue Kite"ではディレイ(リヴァーヴ?)使ってまた違う聴かせ方をしていたり。この曲ではロック的な展開から一気に破壊的なインプロに雪崩れ込むとこが非常にかっこいい。
変わり種で"教訓I"は70年代のフォークの曲らしいけど、これはなんと弾き語り。で、これがまた録音がわざとらしくなくていいのですね。ただ偶然弾き語りになって、偶然録った。みたいな。音量バランスとか全然調整してない感じで、適度な距離感があり、歌いかたもつくってない感じ。
ラストの"2020 Tokyo"は1分間で完全放射するノイズソロ。最後に拍手入ってるけど、ライヴ盤だったのかなこれは?
録音のラフな空気の感じがとてもいいけど、そのせい?


そんで『RIGHT』。
こちらは全く違う内容。
62分一曲で、サウンドインスタレーションの様子を音源化したもの。
そのインスタレーションというのが、大友さんによる2~3秒から1分の細切れのギター演奏の断片を音源ファイル化して123個用意し、それらを16チャンネルのスピーカーから、このために制作されたソフトウェアで一定の傾向をもって制御しつつ、ランダムに再生するというもの。
このソフトというのがなかなか巧妙な設計で、同時再生数も1~16の中でランダムに変動するので、音の厚みの濃淡まで出てくるとか。
で、このCDはそれを2チャンネルで聴けるように作り替えたものになる。
で、これが聴いてみると思いの外音楽的で驚く。エフェクト使いのシンプルさのお陰でトーンがおおかた統一されているというのもあるし、奏でられている断片にしてもノイズ的な表現は少なく音楽的な内容というのもあるだろうな。それに勿論、卓越した演奏家の手からは短い断片であっても作家性が出てくる…ってことも。
いくつもフィードバックが重なり合ってハーモニーを生む場面や左右でパチパチとハーモニクスとピッキングのノイズが弾けるような場面は、ランダムで奏でられているということを忘れる。
しかし思い返すと、音楽プレイヤーのランダム再生の采配に驚くことってたまにあるよな。この場面にこの曲、分かってるね~キミ!っていう。これもそういう、頭の中で勝手に文脈を読み取ってるようなことなんだろうか?
全体としてはミニマルな印象で盛り上がりや流れのようなものはないけど、それゆえにいい意味でながら聴きに最適というかな。
ギターソロという形式の実験として面白く、音としても気持ちいい。

ってかこのCD、購入者特典で制作に使われたプログラムと音源ファイルを貰えるんだけど、これはオレもいっちょベースで作ってみるしかないな…と思って立ち上げてみたら、まるで使い方が分からず…。Maxベースなんだけど、そのへんの画面上で何かするやつ滅法弱くてですね…。
物音とか映画のサンプルとかで作ってみるのも楽しい気がする。詳しい人はチャレンジしてみては。


いややっぱ大友さんのギターかっこいいな!(また言ってる)
ごまかしの効かない純粋なソロという形式で心ゆくまで堪能できる『LEFT』のほうが特に好きかな。


ロンリー・ウーマン。


電車の中でノイズギター演奏しながらめっちゃはしゃぐ大友さん。
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