川下直広カルテット 『初戀』

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初戀

完全即興じゃない、通常のジャズのフォーマットで演奏されるものを聴くときは、いわゆるスタンダード集が好きだ。
曲を演奏するタイプのフリージャズでもそうで、その意味では、ライトニングボルトとかホワイトストライプスとかを演奏するシングのアルバムもスタンダードとして聴いている。
それは自分が音楽を聴くときにアレンジの部分ばかりを聴いてしまうのと関係している気がする。
自分でバンドでジャズを演奏していたときも、ある定番の演り方というのが決まっている曲をいかにめちゃくちゃにしていくか?みたいなことが好きだった。





この曲もそのときにやったな。
で、まあこの映像、たまたま見つけて、スゲーカッコいいなと。
で調べてみたらこの編成+ピアノのカルテットで録音されたスタンダード集が今年出てるというので。買ってみた。

地底レコードより16年作。
8曲1時間。

川下直広 - tenor sax
山口コーイチ - piano
不破大輔 - bass
岡村太 - drums

演奏している面々の事全然知らない中で、奇跡的にドラム叩いてる岡村さんだけ名前知ってる&ライヴも何度か見ているのだけど、
何で見てたかっていうとこの人は現行の非常階段のドラムですねはい


川下直広のサックス、それに尽きる。
この人のサックスは何かというと、歌だ。過剰な歌だ。
口ずさみ呟いて囁いて泣き怒り叫びをあげるような、感情直結演奏、譜面に落とし込めないニュアンスだけで演奏が構成されている。
特に常識の範疇を越えて常に揺れ続けるヴィブラートっぷりは、ちょっと他では聴いたことがない。
これを聴いていると、やっぱサックスは呼吸の楽器だなぁというのを改めて感じる。

アルバムの中の半分を占めるバラードの演奏で、音符と音符の合間に様々な響きを込めていく川下の個性がよく発揮されている。
特にバカラックの"Alfie"の演奏での歌いっぷりは男臭くも清々しい。こういうバラードの多いアルバムで、演奏が全然お洒落でなく、むしろ汗臭い男臭いっていうのはめちゃくちゃいいよな。

一方で激しく熱量のある演奏もアルバム中に差し込まれるようにあって、"不屈の民"として知られる"El Pueblo Unido, Jamas Sera Vencid!"ではバンド渾然一体となってフリーフォームの絨毯爆撃めいた演奏を展開する。
演奏のテンションが頂点に達するのは13分越えの"Things Have Got To Change"で、ラテンのリズムパターンに煮えたような音を叩き込みまくり、空を割るような咆哮を轟かす川下筆頭に、各楽器、圧巻のソロを披露している。

ノスタルジックでリラックスした空気の"The End Of The World"を挟み、やはりアルバムはバラードに終わる。
その最終曲は尾崎豊の"I Love You"。
あまりにも素晴らしい。
ソロもなく、曲の形に忠実に演奏されているのだけど、それがあるべき姿として鳴っている、つまり、無数の歌い手によって歌われてきたそれと同じように、ここでも川下の独特な歌いまわしによって、必要な表現はすべて為されている。
演奏の合間の呼吸の音が特によく聴き取れる録音で、やはりここで演奏は歌と捉えられているのだと感じる。
それ以上に必要なものはもう何もない。

てかこの曲大好きなのですよね。
聴きながら口ずさんでしまって、やっぱホントいい歌だよなみたいな。
"悲しい歌に愛がしらけてしまわぬ様に"って。
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