Phurpa 『Chöd』

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闇はそこでくり抜かれたかのように一層深く落ち窪んで、虚ろな大口を晒している。
底は見えない。
遥か下から吹き上がる風音が反響しているのか、複雑なうねりを孕んだ遅く重い響きが足元を叩いてくる。
単純な洞が得体の知れない魔力を孕んでいるかのように、深淵に覗かれているなんて言葉が馬鹿らしくなるほどに、意識が闇の奥へ誘われる。
これから君を世界で一番寂しく冷たい場所に連れていく、覚悟はいいか。



2016年作。約45分のトラック×2の二枚組。
Phurpa プルパはAlexei Tegin アレクセイ・テギンを中心とした流動的な編成のパフォーマンスグループ。
テギンは90年代半ばから音楽活動を始め、程なくしてチベットのボン教系の密教の儀式音楽、声明、いわゆるホーメイに興味を持ち、実地でそれを修得し、03年にそうした儀式音楽をベースとしたグループであるPhurpaを立ち上げたようだ。

Phurpaの音楽は徹底している。
10作以上のアルバムをリリースしていて(僕も全部は聴けてないけど、半分ほど聴く限り)すべてパッと聴きの印象は同じ音に聴こえるほど。
こう表現すると伝わるのだろうか?
声のみによるSunn O)))。
ライヴ映像を見ると3人~4人でのパフォーマンスが多いようだ。そしてそのパフォーマンスは、増幅器としてディジュリドゥのような楽器を用いたり、句点のように土着的なパーカッションが用いられたりするが、基本的には徹底して声のみ。
凄まじく低域に寄った複数のホーメイが重なり、きわめて複雑な倍音の揺らぎを纏った極太の低音ドローンをかたち作る。
スティーブン・オマリーのレーベル、イデオロジック・オルガンの第一作目はこのグループの作品で、それは聴けば腑に落ちる。Sunn O)))におけるギターがヴォイスに置き換えられたような、極上の濃密な黒一色へヴィ・ドローンがこのグループの作り出す音響だからだ。

この『Chöd』のボリュームと特異な構成は表現上の必然であるかのように、このグループの核を明快な形で見せている。
ここで聴けるのは音楽アルバムではなくて…、ひとつの儀式の記録であるような、そんな感触。
そしてこの音は基本的に人体から生み出されているということ(そういえば彼らが用いている民族楽器の一部は人間の骨から作られているそうだ)。
そのプリミティヴでシンプルな表現がしかしある種究極の彼岸の光景、虚無の果てにアクセスするような強度を持っていることを、これを魔術的と思わず言いたくなる。
人間の消化器官は全長約9メートルあるって話を思い出していて、そういう、人体とは実は凝縮された巨大な装置であるということも同時に考える。
管は音響を生成する。
この音楽は人体の彼岸でもある。

彼らの音は純粋な圧倒の体験であり、正直語る言葉もないのだが、だからただ聴けと書いておく。
できたら外スピーカーのオーディオシステムで、ぜひ。
そして虚ろな大穴の奥へ一緒に降りていきましょう。


ライヴがめちゃくちゃカッコいいので映像をいくつか貼っておきます


しかし今年はブリンクマン然りデッドCしかり、二枚組ボリュームで独自の世界観で聴き手を圧倒するようなとんでもない作品が多数出ているな

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