Perlonex 『Perlonoid』 Joachim Nordwall 『The Ideal Black』

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お世話になっています。

最近もまたいろいろ映画を観ていたのですけど、特に印象に残っているのは『バーニング・オーシャン』ですかね。
2010年に起きたばかりの海上石油採掘施設の事故の話で、『サウルの息子』のときに"地獄の職場体験"という言い方をしましたけど、これもその系譜に連なるエクストリーム仕事ムービーと言えるのでは?
映画の冒頭で主人公の娘さんが親の仕事について発表するという学校の課題をやっていて、そこでこんなことを言うのが印象に残ったな。
お父さんの仕事は怪物を捕まえること。石油は恐竜の化石。石油は怪物なんだ。


あとsteamで夜廻というゲームを買って遊んだのですけど

コレ素晴らしくて。
サイコーの映画を並べてみるとほぼ共通していることのひとつに、最初のシークエンスは絶対外さない、っていうのがあるんだけど、これもまず、導入が完璧で。
ネタバレは絶対しちゃいけないタイプのアレなんですけど、ゲームでないと不可能な、それでいてゲーム慣れしている人ほど意表を突かれる、ゲームルール上のある聖域を暴力的に侵犯することで、プレイヤーを一気にゲームの世界に巻き込んでくる。
それによって主人公への感情移入…というよりは、秘密と責任の共有をムリヤリさせてしまうというところも見事で。
ゲームの雰囲気というか、世界観も良いのですよね。良いというか僕の個人的に持っている世界観にバシッと宛書されたような感覚。
言ってしまうと90年代的な風景…それも後から見たら忘却されていってしまうだろう、陰、の風景…を繊細に切り取っているのですよね。
今みたいなミニマルな建て売りじゃなくて和風の戸建てが並んでる風景、畳まないガラケー、自販機も街の灯もLEDじゃなく蛍光灯でパチパチとノイズをたてている…あるいは、公衆電話、役目を終えた工場、閉鎖してモールになる商店街、宅地になる田んぼ。静かに人が消えること。目の前の明かりと次の明かりの間に降りた深い闇。
そういう景色って、この主人公の女の子、小学生なんですけど、そういう時代にまさに自分が生きて見てきたもので。
きっとここはターミナル駅からバスで20分かそこら行ったような…田舎ではないけどかといって都会ではまずない、そんな狭間の…なんてとこまで想像できる。
ゲームデザイン的にいうとすごく今風だなと思ったのが、ビジュアルとサウンドが非対称にデザインされていること。
カメラ的には斜め上からの見下ろし視点をとっているのだけど、サウンドは一人称という。つまり、画面上の操作キャラクターがオブジェクトに近づいたり遠ざかったりすることによって、それのたてる音もかなり細かく距離感が変わる。ちょっとレトロルックなビジュアルに対して、サウンドデザインは写実的でほぼBGMなしの濃密な環境ノイズというのもまた良い。
そんな感じで褒めるとキリがないのですけど、とてもおすすめです。


あと今やってるアニメで、月がきれい、アトム・ザ・ビギニング、ゼロから始める魔法の書、の三本が非常に良くて毎週楽しみに見ています。
どれも派手さはないけどアニメならではっていうタッチで描かれているのですよね。
特に月がきれいには毎週僕の中の青春厨が殺されています。
中学生の頃電気のスイッチの紐でシャドーボクシングしていた人は必見かと思います。

あとドラマの光のお父さん面白いですね…
かなり高度なMMORPGあるあるみたいなのを深夜帯とはいえ地上波でも流せる時代になったのですね

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そんな感じで前置きがクソ長いのですが

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Perlonex 『Perlonoid』
パラノイド。
例によってart into life屋さんで買えます。
Ignaz Schick - turntable, objects, sine waves, live-electronics, feedback
Jörg Maria Zeger - electric guitars, live-electronics, feedback
Burkhard Beins - drums, percussion, objects, zither
お恥ずかしいことに演奏者も知らなければレーベルも知らんの状態で買ったんだけど、聴いてみたら実に良い。
ライヴエレクトロニクスのユニットと言うにしてはターンテーブル、ギター、ドラムスとゴリゴリの物理編成でもあるところなど、Textile Trioあたり思い起こさせて、良い予感しかしなかったのですけど。
内容としては46分一発録り1トラック。セッション…と言っていいものか、コンセプトはかなり明確に定めたうえで演奏しているなという印象。
冒頭から10分にも渡っての無色の持続音ベースのディープなレイヤードローン。変化は本当に徐々に徐々にといった感じで、もうずっと重くスローな展開。
15分程したところでパーカッションから堰を切った最初の山場があって、ここではターンテーブルの神経症的切り刻みノイズと低域寄りの暗黒の坩堝なカオス音響がドッロドロに溢れる。
テレビがなかなか消えないと思ったら写った井戸から貞子が這い出てきたみたいなところをイメージしてもらうとかなり近い感覚と思います。
再びパーカッションがシンバルを打ち下ろし、唐突な音響的切断。はぁよかった貞子帰った。ま、再びここから重苦しいディープノイズの積み上げが始まるわけですけど。
音の様相を変えつつ展開としては再びの感じで、一番メロ一番サビ二番メロ二番サビみたいなハッキリした構成がコンセプチュアルと感じさせるのかな。
二度目のピークでは今度は耳障り極まりない刺々しいエレクトロニクスノイズの針のムシロのようなサウンド。
なんとも不穏で荒々しく聴き手に忍耐も要求する気難しい音楽ではあるのだけど、この手のじわじわダークなものが好きな人にはタマらん一枚でしょう。



Joachim Nordwall 『The Ideal Black』
盤は入手難しいようだけどブームカットで買える。
先月に出たばかり、5曲40分の内容。まずタイトルが最高っすよね。真黒、究黒、極黒、黒の焦点。黒のイデア。オレも自分でかなり重篤な中二病だと思ってますけど、本当に最高だと思うものが出来ない限りこのタイトルはつけらんないなっていう。
そんな感じでイデアル・レコーディング主宰、ヨアキム・ノルドウォール。
ソロでは初めて聴いたのですけどこれがちょっととんでもない内容。

わりと電子音楽の人という認識でいたんで、まず意表を突かれたのが、とてもライヴ感のあるエアー録りっぽい音響。物理的な音の響き。
ジャケ見ても何をやっているのかイマイチ分からん。
鳴っているのは、スタジオでアンプのフィードバックを受けたスネアの振動音みたいな響きや、どこまでも深い低域の点描ベース音、高温でハウリングするように漂う電子音。大型の機械の稼働音。ミニマルで展開のない、ただ倍音が空間を満たしていくような…。モヤモヤしていて色彩を感じさせない音風景。
これ、解説などを翻訳してみるととても面白いことを試みているのが分かる。
Sunn O)))ばりにスタジオにアンプの壁を作ってそこに無数のトーンジェネレーターを接続、その際のセッティングの肝として共振周波数を設定するような方向で音を作っていると。
いや、全然ナルホドとはならないんだけど、一応言ってることは分かる。ただ、それやろうとして実際にやっちゃう人、絶対いないですよね?という。ヘタするとちょっとじゃなく設備壊れますよね?という。
そんな形で作り上げられた音響は、実際に空気が、空間が、あるいはもっと即物的に演奏スペース(スタジオ・部屋)が振動することによって生み出されるナマの深みに満ちたダークマター。悪酔いしそうなほどの濃い闇だ。
電子音楽、電子音響というものは、とくに部屋リスナーでいると、音という現象が振動、物理の運動であるということを忘れさせてしまうのだけど(イヤホンやヘッドホンの中でだって振動が起きているにもかかわらず…)、この音響の生成という現象をプリミティヴに可視化する音楽は、音楽の暴力性を今一度つまびらかにしてリスナーの脳内に立ち上げる。
頭蓋で反響し脳を揺さぶるがごときサウンドはある種音楽/音響のかなり本質的なところに手を掛けているような感覚すらあり、聴いていてフト怖さを感じるときがある。
こういうタイトルがついているのだから僕もこういう引用をしても許されると思うのだけど、あの言葉を思い出さずにはおれない音楽なのだ。
すなわち、
心せよ。きみが深淵を覗いているとき、深淵もまたきみを覗いているのだ。


暗黒音楽だ


先日亡くなったミカ・ヴァイニオとも一緒に演奏していたのだな。
この人もダークな電子音楽の作り手として大きな存在感のある人だった。今回のことはあまりにも早い。
ご冥福をお祈りします。
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