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ボーダーライン ソルジャーズ・デイ、ア・ゴースト・ストーリー、イット・カムズ・アット・ナイト、へレディタリ― 継承、ディザスター・アーティスト

今日は新作オンリーで
ただ一作事情があって劇場ではなく配信になっています

『ボーダーライン ソルジャーズ・デイ』
デイ・オブ・ザ・ソルダードって原題クッソカッコ良くないっすか。
これ、前作がメチャ良かったゆえに監督交代がどう作用するか心配だったけど、杞憂。
素晴らしいっす。
監督のステファノ・ソッリマはイタリア出身で、かの国と言えばのマフィア映画で頭角を現した人らしい。
なるほどという感じなんだよね、暴力を扱う手つきが。
物語を聞く構えで行ったらいきなり銃床でぶん殴られるような導入部から、もうそれ。
引きの画なら引きの画のまま、カットも割らずに、前触れもなく突如として破壊的な暴力が到来する。
ハネケとかあの辺にあるような客観的なカメラ・演出+超暴力。
ストーリーも、最悪の暴力には最悪の暴力で対抗するという構図。
そこに脚本は続投のテイラー・シェリダンならではの、境界において世界から遺棄された人々の話と。
そしてラスト。
「羊を追い立てる牧羊犬」に対してアレハンドロはこう聞くわけ。
「狼になりたいのか」と。
そして故ヨハン・ヨハンソンによるメインテーマ…。
前作とガチっと重なるような。
これは理想の続編のありかたと言えるような作品かと。


『ア・ゴースト・ストーリー』
死んだ男がオバケになって奥さんをずっと見守っているって話。
なんだけど、独特なトリックを用いて斬新なストーリーテリングを行っている。
それはつまり、終わりが無い存在にとって時間というのはどう認識されるのだろうか、という問い。
その時間の中で、ある思い出だけが、自分を世界に繋ぎとめているとしたらどうだろう?
さらにその変容した時間のあり方を描くにあたっては、独自の映画文法を導入している。
映画って基本的には横方向に時間が動いていくもので、それはシネスコという形態からの要請であると考えたとき、その時間を断ち切るためにまずどこに手を入れるか。
というわけで、この映画は全編が角を切り取られた独特の正方形スクリーンで進む。
そして、移動は基本的に横方向でなく手前奥方向に行われる。
映画で登場人物が奥手前に動くときって、位置の移動というよりは、意識、意志の動きを現してる場合が多い。
それに加え、随所で登場する超長回し。
これも映画的時間、空間的時間から内的時間、心的時間にフォーカスする手法。
なんかこれは、ゴースト・ストーリーというタイトルではあるんだけど、勿論ラブ・ストーリーだし、更にはシネマ・ストーリーでもあるだろうと思ったんだよね。
この映画の中で描かれていることは、まさに映画を観るということに似ている。
同じ映画を繰り返し見て泣くことは、偽物の感情なんだろうか。複製できる体験は。何度もやってくる思い出は。
悲しみは時だけが癒すって、時間の外側(それは果てしなく自分の内側だということだ)からそのことをどう思えばいいんだろうか。


『イット・カムズ・アット・ナイト』
森の奥に何かがいて、それは死の病を伴って来る。
だから日が暮れたら、絶対にドアを開けちゃいけないよ。
という話。
近年の「恐怖の対象が名指しできなくなったホラー」ということについて、何度も何度もしつこく語ってると思うんだけど、ペニーワイズじゃない、この「イット(それ)」は、まさにそれそのものだ。
先に書いてしまうと、この物語はある種の「ゴドー」で。ゴドー形式の映画ってそろそろ一冊のムービーガイドになりそうなくらい増えてきたけど。
「それ」はただ、生い茂る森の木々の奥、あるいは真っ暗闇の向こう側としてだけ描写されている。
その描き方が表現するものって何かな?と考えたとき、私事であれだけど、沖縄のガマを見学したときのことを思い出したのね。
ガマは天然の洞窟を使っていて、中には灯りはない。開けた場所に出たとき、案内の人がふいに懐中電灯を消すわけ。
「これが本物の暗闇ですよ」。
するとどうなるかっていうと、不思議なことに、目が閉じてるのか開いてるのか分からなくなる。
自分の肉体で、自分で制御しているのに。その制御って、確かなのか?と。
次に、自分の体の内側と外側の境目が分からなくなる。
世界が内面に侵入してくるし、内面が世界に溶け出していくような。
身体感覚ってそんだけ曖昧だよということでもあるけど。まぁ普通に生きてて完全な暗闇ってのを体験できる場面はないんで。
映画の話に戻ると、森は、暗闇は、劇場は、その中のスクリーンは、映画は、ホラーは、たぶん世界に内面を投影するということのメタファーだったり、現れだったりするのではないかな。


『へレディタリー 継承』
これ、メッチャ褒められてるじゃん。
「現代ホラーの頂点」とかいって。
だからもうバカにしてやろうと思って。「全然怖くなかったですね」って。
すんません。スゲー怖かったです。それ以上に、最高に面白かったです。
設定とか話の運びはまさに王道のホラーといったところ。新鮮味はとくにない。
冒頭のある印象的なカットの引用元を考えると、「この映画はこういう過去の遺産をフル活用していきますよ」という宣言でもあるのだろうな。
それでまぁ起こることも「そうなるな」てな感じなんだけど、事態の捉え方、解釈、それを画面に演出として還元するということにおいて、この映画の感性は圧倒的。すべてを恐怖に奉仕させるということに、迷いなく振り切っている。ある流れの中で、絶対に描かれて欲しくない事へと、躊躇なくカメラを向けていく。事態への登場人物の反応も実にリアルだけど、ゆえに盲点みたいなところを突いてくる。だからこそ恐怖が伝わる。
凄まじいと思うのは、ケチのつけどころがない映画だということ。
ホラーって、何か瑕疵があっても一点突き抜けていることによって傑作足り得ている、みたいな作品を多く持つジャンルで。
ただ、模範解答的な、間違いがないということによって満点になっている作品ってそうない。で、これがそれ。
ゆえに、スレたホラーオタクじゃなくただ怖いものが見たいだけの普通の人にたくさん見て欲しいなって思った。
ホラーのイメージ変わる。
あと言及したいのが音楽。
なんと、当ブログでも何度か取り上げているコリン・ステットソンが担当している。
非常にマッチしているし、バス・サックスの圧倒的な低音が座席を揺らして映画内の震動を観客にまで伝えてくるような箇所もあり、素晴らしい。


『ディザスター・アーティスト』
これは配信のみのためアマゾンビデオで鑑賞。
本国アメリカではかなりの高評価を得た作品なのだが、なぜ配信スルーかというと、恐らくふたつほど理由がある。
ひとつは、本作はこちらも日本未公開の『The Room』という03年の映画にまつわる実話ベースの物語であること。二本セットで公開するとなるとかなりハードルが上がってくる。
もうひとつは、監督・製作・主演を兼任したジェームズ・フランコが、丁度この映画が波に乗ったところで(近年の流れの中の)セクハラ騒動でケチがついてしまったこと。
さて、映画の内容は上にも書いた『The Room』をつくった二人の男の話。監督・脚本・製作総指揮・主演を務めた謎のおっさんトミー。ひょんなことから彼と深く関わることになった俳優志望のグレッグ。肝心の映画の内容はというと、これが酷い演技・支離滅裂な脚本・寒すぎる演出で初週末の興収1800ドルを叩き出すポンコツっぷり。ところがそのダメさが逆に愛されてカルト化、今でも上映が続いているというもの。
この『ディザスター・アーティスト』という映画の面白さの核は、映画自体が『The Room』に重なるようなつくりをしているという構造じゃないかな。
つまり、上に書いたのを見れば分かる通り、フランコのトミーのコピーっぷりは映画製作手法それ自体にまで及んでいる。中央集権ワンマン体制。出演している役者を見てみれば、セス・ローゲンやザック・エフロンといった友達ばかり(しかも苦笑いで何でも付き合ってくれそうな「絶対イイ奴」って感じの人ばっかだ)。
こういう想像をする。
フランコは本当にトミーのことを好きだったんじゃないか。(笑)抜きで。もしかしたらトミーになりたかったのかもしれない。
だって映画を作るって簡単なことじゃない、どころか、狂気の沙汰みたいなところがある…ってこれもまた二本の映画の間に重ね合わせにされた問いだ。
エキセントリックな「お騒がせ役者」としても知られるフランコだから、その孤独がトミーの姿に重なる。
映画のクライマックス、プレミア上映のシーンでそのことを一層強く思う。
客席に笑いの飛び交うのに耐えられなくなり、席を立ち劇場を出ていくトミー。追いかけてきたグレッグがこう声をかける。
「ヒッチコックはウケたか?」
それでトミーは席に戻っていく。
欲しかったのはこれじゃない、それでも今愛されてる、ほろ苦い多幸感…とても表現したくなる味わいはちょっと他にない。






そういえば今日取り上げた映画、最初の一本除く4本がA24という配給会社の映画で。
ここ凄まじくて、他にもグッド・タイムとかフロリダ・プロジェクトとか、大当たりを連発している。
注目しておくと良い映画が見られるかも。
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