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空の下屋根の中

空の下屋根の中 (1) (まんがタイムKRコミックス)空の下屋根の中 (1) (まんがタイムKRコミックス)
(2009/07/27)
双見 酔

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この表紙で、帯にはでかでかと「今日もやることがない」。帯の裏には職なし資格なし昼夜逆転ネット三昧自宅警備家事手伝い…との言葉が踊り、もうニートマンガであることのみを前面に出した売り方をしている本なわけですが、読み終わるってみるとこのことを不安に思う内容でした。
このお話は語り尽くされた感のあるニートものなんかではなくて、もっと新しく実りも奥行きもある、そういうものだったからです。


主人公のかなえが特にアテもないまま高校を卒業してニートになるところから物語は始まります。
例えばここで、vip的なニートネタを無造作に繰り出していく何の面白味もない4コママンガにしてしまうという方法があったと思うんですね。エロゲー制作のお話とか同人誌刷るお話とかだってウケるくらいなので、そういった内輪ネタ系作品の需要もあるように思います。
ところがかなえは、単行本も半ばに進んだところで働き始めるんですね。アルバイトではありますが。もうこの時点でニートではない。というか彼女は2話めの時点で就労の意志を持って就活を始めていて、厳密な定義に則って言えばもうこの時点でニートマンガではなかったりします。ニートなのは1話だけ。
というわけでマンガを読み進めてみると、一巻の内容はほとんどが就活あるある&働き始めあるある。
このあるあるネタは面白くて。

end
自分のことを思い出してしまうんですけど、僕は求人の落ち込んでいるときにダメな就活をダラダラと長くやっていた人でして。
始めたばっかの頃ってなんかエントリーしたし今日はいいかとか電話したし今日は終わりとか履歴書書いたし今日はあとフリーとか、そんな感じでしたよ。ありすぎて困る。

就活のバカヤロー
あっちもプロなんで、なんか人事の人の話とかいっぱい聴いてるとそれなりに楽しいんすよね。
そんでまぁ、ふと振り返るとその無軌道な活動が何もいい方向に転がってないことに気付くわけですが。

働くということ
で、働き始めると驚くのがこれ。
休みの日に7時8時で起床とか、自然にしてしまうわけですよ。何なんだと。学生時代とかヘタしたら平日でも11時起きとかしてた人間が、一ヶ月でですよ。これから働くという人は、朝起きれるかなってことに関してはマジで心配する必要ないと思いますよ。人間って実は結構すげえから。


こうしたギャグ的な面での満足度はかなり高くて、だからニートものということを前面に押し出す必要はないということでもあるんですが、それとは別に結構切実なお話でもあるんですね。

何ができる
陳腐なモノローグに思えるかもしれないんですが、それなりの就活の経験がある人ならこれは笑えないんじゃないかな。多分こういうことをぐるぐると考えて何となく地に足の着いたような答えを出す、というようなことって実に就活的と言えると思うんですよね。
ちょっと込み入った話に入るんですけど。
いま放送してるアニメの『かなめも』の一話めを見たときに気になったシーンがあって。浪人生のひなたが新聞の配達中に予備校の前を通りかかるところ。「ボクもそろそろ頑張らなくちゃな」って言うんですね。何気ないモノローグに思えて、実はきらら系に代表されるような日常系作品ではこういった言葉ってなかなか出てこなかったりします。というか、喪失の問題や働くことの問題など、『かなめも』って温室系の日常作品とは食い合わせの悪い要素がたくさん絡んでいるかなり異質な作品だったりしますが。
「時間が流れない(あるいは限りなくスローな)中で終わりのない日常をまったりと過ごす」というようなノリを作るのって実は結構いろんな条件が必要で、ひとつにはキャラクターは無闇には成長するべきではないと。自分を変えようとかここから出て行こうとかそういうのもマズイ。お話が動くということは終わりに向かっていくということで、その力学が生まれてくると同時に必ずある種の切実さもそこに宿ってしまうわけですよ。
限りなく続く日常が限りある日常に変わったときに、それを以前と同じようにダラダラと過ごすことは難しくなってくる。大学生活とか、最後の夏休みが来たあたりから「え!?終わるの!?」みたいな感じが急にリアリティを持って迫ってきたりね。
ただ難しいのは、その段になって急に日常が価値を持ってくる、というか、取り返しのつかないものとして現れてくるということです。あるいは、価値あるものにしないとヤバイ!みたいな気がしてくる。
『空の下屋根の中』が特殊なのはその切実さを明確に意識的に作品に埋め込んでいることだと思って。
これはあまり長く続くお話ではなくて、多分もう終わりも見えてるんじゃないかなという気がします。タイトルももう意味のないものになっていますし。こんなにも明確な終わりを意識して描かれたきらら系の4コマって『花と泳ぐ』以来じゃないでしょうか。で、それが主人公の成長に向かってるっていうのが何だか古くて新しい。


start
かなえが普通に働き出したときはかなり驚いたんですが、同時にこのときにこのお話はひとつの作品になったんだと思います。かなえはどんどん変わっていく。しかもその変化は日常の中にしっかりとあって、地に足の着いたものですよね。何というか、意味のあるお話だと思います。
『花と奥たん』を読んでからですが、日常をフツーに苦労してフツーに頑張ってんでフツーに楽しく過ごしていく、みたいなお話に何かを読み取れそうな気がしていて、そういう意味でも興味深く読みました。


過去記事:花と泳ぐ
過去記事:花と奥たん
あ、花と花だ。
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