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Bill Orcutt & Jacob Felix Heule 『Colonial Donuts』 Bill Orcutt 『A History Of Every One』

今回はギタリストBill Orcutt ビル・オーカットについて。
ドラム×ギターの即興ものを今年出していて、僕こういうドラム×○○の即興みたいなのが大好きなんで、その流れで聴いてみて、そっからソロにも手を出してみた。

オーカットのギターにはこうしたいまどきの前衛/即興ギタリストとしては唯一無二の個性がある。それはブルースであるということ。


こういう領域でのギター演奏は、デレク・ベイリーの昔から、調とかリズム、メロディ、意味からいかに距離を置いていくか?という部分があるんだけど、この人の演奏はそういう問題設定が一周したあとのところにあるというか。
もはや、意味とか感情とかを、その場ですべて表現していくことに対して、躊躇いも怖れもないんだよね。それは即興演奏の初学者が手探りにそういうことをやるのとは全く違って、確信を持って鳴らされている。そしてそういう表現をここまでの高いレベルで追及する人というのは、他にはちょっと思いつかない。




ボブ・マーリーの顔がいくつも並ぶジャケがファンキーすぎるデュオ盤『Colonial Donuts』はオーカットのそういったカラーが反映されて、即興ブルースロックといったような内容になっている。
1分から2分台中心の細切れになった演奏が13並んでいて、弾きまくるフリーキーなギターソロとフリーフォームのドラムスがぶつかるものもあれば、ゴリゴリの土臭いリフが軸になったものもある。ライヴ盤のようなラフな録音、後ろに聴こえるグレン・グールドのスキャットのような意味不明な歌、それにトラックがかなり乱雑にバサバサと切られているのもあって、なんとも生々しいアルバム。
即興の中で感情を隠しもせずギターに叩き付けまくる様がむちゃくちゃ格好いい。新鮮というか、前衛ギターどっぷりで聴いてたからこそ盲点のような音。
ドラムを叩いているJacob Felix Heule ジェイコブ・フェリックス・ヒューで合ってるかな?…は00年代後半から活動を始めた若いプレイヤーらしい。実際僕もここで初めて名前を聞いた。オーカットはクリス・コルサノとのデュオもやっているけど、そっちと比べるともっとカラッとしておおらかなノリで演奏するタイプかな。オーカットの自由極まりない斬新なリズム感覚にうまい距離感で付き合っていて、このへん相方として認められるだけはあるなと。



上の聴いて、これはもっと聴いてみたいなと思い調べてみると、オーカットの活動の中心はアコースティックギターによるソロ演奏。
アコギのソロってあまり聴いたりしないんで、どんなものかな?と思いつつ注文入れてみたのが2013年ソロ作『History Of Every One』。
実験系の名門Editions Megoから。
で、これが…。
何だろうなこれは。
こういう音楽を前にしたとき悔しいって感じる。
音楽をいいって思ったときに何かそれをうまいこと書き残しておきたくてこうブログを書いてみるけど、なんかもう何もない、ただの「良さ」しかない、美しいとしか言えないものってやっぱりある、それは何千枚もアルバムを聴くうちにそう思ったんだけど。
ピッキングめちゃくちゃうまいなあ、ダイナミクス、音のスピード、出音の瞬間から音の消える瞬間まで気が行き渡っているなあ、ニュアンスが瞬間瞬間で絶妙にコントロールされているなあ、楽器のもたらすノイズまでも演奏のなかに組み込まれているなあ、こう、それらしい言葉を重ねることはできるけど、それはどれも本質じゃないな。
ギターから出る音をすべてあらかじめ知っているようにぴったりと同期して発せられる歌、声を聴いてると思わされる。究極的に修練を重ねて楽器が自分の身体の延長になる位習熟したときにこういう表現が生まれるんじゃないか?
例えばそれはCの音を出そうと思ってCのポジションを押弦して弦をはじいていく、それが逆に身体のほうに帰っていく、つまり笑うとか泣くとかそういう操作がギターに対して入力されるような現象、感情が発音されるということ…こうしたらちょっとは言えてるのかな。

そんなパッと聴きで分かるような他にない音・演奏ってものではないし、音だって単にギターと声だけがあるというもので、単純で、ありふれていて…なにしろ、白い盤に収められた"When You Wish upon A Star""White Christmas"、クリスマスアルバムなのだ、これは…、でも具体としてはそれは他のどこにもないものとして現れる。
呼吸、息づかいのところまで収められた録音も見事なもので、これ以上ないシンプルなジャケットもこの音にはふさわしい。
トーンを落として一音一音愛おしむ様に発せられる演奏"Onward Christian Soldiers"について何か書こうと思って、結局言葉が出てこなかった。
ただこうして事故のように美がそこにあることに感謝しよう。


youtubeにいい映像がたくさんあがってるけど、それは各自調べてもらうとして、これだけ貼らせてくれ。
オーカットのアコースティックギターソロによる演奏、アメリカ国歌"星条旗"。
政治とかそういうのは別によくてさ、これを見たときただボロボロボロと涙が溢れてどうしようもなくなったんだよね。


ちなみにジミヘンのこの曲の演奏が"星条旗よ永遠なれ"で紹介されるので勘違いされるけど、"stars and stripes forever"って別の曲がちゃんとあるらしいな。っていうのはちょっとさっき調べて知りました。
あと上で書かなかったけどオーカットはこんな感じで4弦と5弦のないアコギでの演奏をずっとやっているらしい。なのにこういう、ギターって楽器が本来こうあるべきだったというような演奏をしてるのって、なんかズルいな…。
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