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Lee Ranaldo 『Ambient Loop For Vancouver』






もう何万年も会っていないような、そんな気がするよ。

違うか。

この話をどう始めたらいいいのかな。
手紙は書きだしが一番難しいなんて言うけど、15年前はそんなこと考えもしなかった。手紙が理由が必要なものになってしまったということなのか、あるいはそうなったのは僕たちの関係のほうか?とにかく、思いついたことから書いていくから、少しの間辛抱してほしい。

先日のことがあってから、何度か空港のゲートに足を運んだ。
特に用があったわけじゃない、ただ、あの映画の冒頭で言っていたことを思い出したから(君はやっぱり今年のクリスマスもあれを観るのかな)。映画の言う通り、ゲートではいつも同じ光景が繰り広げられている。親子。老夫婦。アラブ人も、ゲイのカップルもいる。出ていく人もやって来る人もいる。そしてみんな同じことをする。
誰かを待ったり、しばらくの別れを惜しむことを、そういう当たり前のことの重要さを、最近は僕も少し分かるんだよ。
だから手紙の理由のひとつはそれだ。馬鹿げてるって思うかもしれないけど…。

この前家の近くを歩いていたとき、不思議な店を見つけた。
そこは世界中のお菓子を集めた輸入土産の店みたいに見えるんだけど、違うんだ。売っているのはお菓子の空き缶だけ。空き缶ばかりを集めてあるんだよ。ビスケットも、ナッツの詰め合わせも、書いてあるのがどこの国の言葉か想像もつかないようなものも、ピクサーの映画のキャラクター柄のものもある。そのどれにも、中身は入ってないんだ。
そういえば僕の母は、保険の手帳や何かを使い古しのお菓子の缶に入れて保管する人だった。で、実は僕も今そうしている。怪獣と少年の出てくるあの絵本の柄の缶に。
それで面白いのが、ここで売っている缶はどれも、中身が入っていた頃よりわずかに高い値段が付けられているということなんだよ。単に中身がなくなったのではなくて、入れ替わりにそこに何かが入ったのかもしれない、なんて言うとまた笑われるかな。

このあたりだけで飲めるペールエールというのがあって、これが絶品なんだ。
その土地その土地の空気と混ざってビールの香りは豊かになる。
あるいは木のテーブルや、そこここから聞こえてくる何でもない話。

仕事で一緒になった男が、こんな話をした。
ある街で百年近くも使っていた多目的ホールを建て替えるというので、その解体を手伝っていたときのこと。そこは冠婚葬祭から老人の社交ダンス、学生バンドのライヴまで、何でもやる場所なんだけど、備え付けのものというのはあまりない。
ただ、角の塗装の削れた、古いピアノが鎮座している。
もうしばらく調律もしていないし、これも撤去してしまおうということになった。傷だらけの足ががっしりと床に固定されていて、動かすのはひと仕事だろう。状態を見ようとピアノの下に入ってみた。
すると、ピアノの裏には、相合傘や別れの言葉、歌のワンフレーズ、再会の約束、あるいは単に名前と日づけ、というだけのものまで…無数に彫ってあったそうだ。それが傷に混じって、足の方にまで続いていた。
結局ホールは同じ場所に建て替えられたけど、ピアノは同じ場所に残っているんだとか。

そういえばこの手紙の封筒、一緒に黒い箱のCDが入っていただろう。
リー・ラナルド。そう。ソニック・ユースの。ギタリストのアラン・リクト。ターンテーブルのクリスチャン・マークレイ。ドラマーのウィリアム・フッカー。彼がそうした友人たちと作ったプライベートな音楽で、10年以上も前に作られたものが、今こうして聴けるようになっている。切り取られてばらばらになった音楽の断片をパッチワークして、星空の柄のブランケットに縫い合わせる。老朽化したプラネタリウムとか、一緒に過ごしたいくつかの街の夜の風景。それから、それらの街を離れる時、飛行機の窓から見る沢山の灯り…そういう想像をする。
そう、今いるこの街の夜景は悪くない。だからこれを聴きながら、想像してみるんだよ。そっちはどうかな。行き場のないギターのハーモニクスや、引き延ばされた古いサウンドトラック、散らばったチャイムやベルの合間に、やっぱり似たような景色を見るのかな。だとしたら嬉しいな。
まあとにかく、そんなわけで、自分勝手なプレゼントが手紙の理由だって言ったら、納得してもらえるだろうか?
本当にすてきなものだから、僕のことはついでと思ってくれていい。どうかこの音楽を君が気に入りますように。
そしておやすみ、今日はゆっくり眠るんだよ。
メリー・クリスマス。

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