Bill Orcutt 『A New Way To Pay Old Debts』 『How The Thing Sings』

新年早々、自由に使える時間を食人の研究に費やしておりました。
遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。


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how the thing sings
New Way to Pay Old Debts
How the Thing Sings

この人の記事、年末に書いたばっかじゃん!って感じだけど、まあ旧作二枚買ったらこれも最高すぎまして、もう本当お願いします聴いてくださいという気持ちで。
しかし前のボブ・マーリーといい、このスティーヴィー・レイ・ヴォーンといいジミヘンといい、この人のジャケはウケ狙いなのか素なのか謎ね…。

『A New Way To Pay Old Debts』と題された作品は2011年に出た編集版で、09年のLPと7インチシングル、未発表録音を合わせたもの。『How The Thing Sings』も同時期に出た、こちらは純然たるアルバム。
前者のクレジットには"Bill Orcutt: 4 String Kay,Voice."とある。Kayというのはアメリカの老舗アコギメーカーで、ヴィンテージのアコギの代名詞でもある。というわけでまたしても不純物の一切ないアコギソロという形式。
後者のクレジットには"Recorded spring 2011 in the living room, San Francisco."とある。つまり、自宅のリビングで録音されたと。
リリースはともにおなじみEditions Megoから。

兎にも角にも『A New Way To~』一曲目の"Lip Rich"。
気合の一声と共に一見乱雑に払われた弦、音はビリビリとノイズまじりに荒々しく散らばっていく。最初の数ストロークを経て不意に訪れた間に、後ろで通りがかりの車のエンジン音が聴こえる。とてもラフな録音。
そして息を鋭く吸うような気配と、放たれる強烈なヴィブラート!これ、開始15秒のこの瞬間で完全にやられてしまった。背骨が震えたよ。驚異としか言いようがない。彼のアコギは一度折れたネックを修理したものに負荷を掛けないよう2本の弦を取り外し、またダウンチューニングを施してある。それにピックアップを取り付けてあるとのこと。しかしそういった改造でいきなりこういう音が出るかというと…自分の弦楽器経験から言わせて貰っても、そういうもんではないだろうな。何より、演奏のニュアンスがぐっと抑制される場面ではその音はそのままのアコギなのだから。しかし本当にアコギとはとても思えないような太くダークで深い響き。
後ろに鳴る電話のベルなんかも生々しく、圧巻の演奏は続く。楽器の持つ限界の音量を引き出そうとするような鬼気迫るカッティング、凄まじいスピードでタッピングも織り交ぜながら全方位へ向けて放たれるブルージーな旋律。叫びであり啜り泣きであり、詩を吟じているようでもある即興の歌。
これは二作両方に言えるんだけど、13年作の『A History Of Every One』と比べて、なにか怒気すら感じさせるような激しく張りつめた演奏。ノイジーでラフな録音もそう思わせるし、ハードコア・ブルース・ギタリストと呼ばれる所以がよく分かる。

ここには嘘がない。詰め込まれた全ての演奏が身震いするほど美しいが白眉は『How The Thing Sings』の最後に収められた約14分に及ぶ演奏"A Line From Ol'Man River"。
時折不安になるような空白があり、そこでオーカットが深く息を吐く音だけが聴こえている。ふいに一音一音と音が継がれ、徐々にスピードも音量も増していく。こうやって瞬間瞬間でギターに全ての感情を流し込もうとする、その合間のどこか打ち捨てられたような響きにすら、次にやって来る旋律の予兆を見て、体が芯からぶるぶる震えてくる。


これほど圧倒的な演奏家に出会うことってそうそうねえなっていう、まぁいくら言葉を連ねてもこれは表現できねえなってのも思うんですが、ただただ凄いと。
聴いてみて下さい。


続きにライヴ映像貼っておきます












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