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Eryck Abecassis 『Ilumen』

ヴィクトリアという映画を観たのですけどとんでもない作品でしたねこれが。
普通、2時間の映画というのはカット数にして1000カット以上あるものなんですが、この映画は134分1カットという無茶無理無謀を成し遂げてしまっています。
それでひとつの部屋で人が会話するだけとかならまだ分からなくはないものの、この映画はバリバリ車やチャリも駆使して街中を走り回ってます。
で、更に驚くべきことに、脚本も12ページのアウトライン的なものしかないと。会話などほとんどが即興なのですね。で、どんどん撮影に不測の事態が起きていくのだけど、役者たちが物語に食らいつくように即興で映画を回していく。
これで実験的とかそういうんでなく普通に映画として見て完成度が高いと来てるんで…。
何だろう、全く見たことがない、狂った映画だけど、ひとつの究極的な表現でもありますよね。
これは観たほうがいいですよ、単純にスクリーンでこんなとんでもないもん見られるのって10年20年に一度あるのかなっていうそういう作品なので。


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ilumen_.jpg

art into lifeさんで再入荷と品切れを行ったり来たりしてるけど要望出したらまた入荷してくれるんじゃないですかね

実験電子音響~ロウなテクノで近頃人気のEntr'ateよりカタログ189番、2015年のリリース。
Eryck Abecassis エリック・アベカッシスは現代音楽~電子音楽~大規模なインスタレーションまで手掛ける音楽家で、演奏者としては特にベースギターやモジュラーシンセ、ラップトップを組み合わせたシステムを扱う。
この辺りの機材構成からピンと来るかもしれないけど、うちで何度か取り上げてるKasper T. Torplitz カスパー・T・ト―プリッツの門下であり、彼の主宰するベースギターのみのノイズアンサンブルSleaze Artにも参加する。


こんな感じ

このアルバムもベースギター・モジュラーシンセ・ラップトップのセットで制作されているとのこと。
まあト―プリッツ門下だけあってベースギターの要素は正直全くない。
タイトルのIlumenってのは何を表しているのだろう。I-lumenって想像すると、ルーメンは電球の光量の単位だから、音の質感と結びつく部分もある。
てなわけで音聴いていきましょう。


残念ながら僕はモジュラーシンセを本格的に触ったことはないけど、この手のツマミが沢山ついたアナログなシンセというのはそこそこうちにある。で、色々いじっていて思うのは、この手のものというのは多かれ少なかれシーケンス単位で音を作ることを前提にしている部分がある、ということ。
小さな単位でループを作ってそれを少しづつ加工していくとか、そういうことを得意としている。モジュラーシンセが今流行っている中で、基本テクノ方面で利用されているのもそういう部分なのかなと思ってて。
骨格を作り、肉付けして、色を乗せ、そういう使い方をするのが自然な機材なんじゃないか。
なんでこういうことを書くかというと、このアルバムを聴いてて、シンセの音だけどシンセの曲作りじゃないって感じたからなんだよね。

7曲40分というコンパクトな尺からも分かる通り、この人はあんまりじっくり曲を展開させるようなことはしていない。
むしろ、曲を構成する気がないような身振りでもって…何というか…幹が、中心が取り外されているように感じるのだよな。
心臓も肺もなくて、ただスケール感の狂った手足が付いているような。そこまで多くの層を持たない単純な構造の中で、ひとつひとつのノイズの持つ質感に対してフェティッシュにフォーカスしていく、その結果として、盛り上がりであるとか、拡がりであるとかいった、楽曲をそれたらしめるような一貫した連続性が消えている。前向性健忘のシンセサイザー。
音楽的なものを注意深く避けながら、絶えず前景を否定していく、そういう運動の記録という感じがする。
しかもカットアップのように音が途切れるわけではなくて、厚塗りをするように像を更新していくから、歪な濁りがあってこれがまたアナログでダークな響きをつくっているんだよね。

やはりクライマックスの"partout, zero, nulle part"を聴いてもらうのが手っ取り早いと思うんだけど、ここではばらばらの刺々しいノイズの破片がいくつもあって、しかしそれらが曲のフレームの中で統合される気配がまるでない。こう、今日はここまでぜんぜん曲という単位で話をしてないんだけど、何かこの人の音は曲という単位にすら普段の否定の慣性が働いているという風に思ってて。つまり、曲としてこれがどんな曲だったか?ってイメージがまるで浮かばない。ただ、細かな断片断片で刺激的な音像があって、それらのイメージがいくつもばらばらと思い出される。

シンセのトーンへのフェティッシュな拘りとか、例えばCarlos Giffoniのソロ音源に感触としては近いものがある。
ただ、あっちが(一貫しすぎているほどに)一貫性のある内容なのに比べて、この人はもっとミクロな単位での音それぞれのディティールにしか興味がないような印象。
そしてそれを細かなノイズエレクトロニクスやもっとオーガニックな機材でなく、モジュラーシンセ中心ってことでやっているから面白い。
シンセとの静かな戦いの記録みたいにも思えるのだ。いかに道を反らすか?いかに意図から外れていくか?怪物を抑えつけるような手振りで、実はシンセと仲悪いんじゃないか?とすら思わせる、でもその無理矢理抑えつけられもがき唸り硬質でビリビリとえぐるような耳障りなトーンこそが狙いなのかもしれないな。



続きにライヴ映像
この人本当にいろんなスタイルの音楽をやっていて面白い




最新プロジェクトはガムラン+モジュラーシンセ



Eryck ABECASSIS - UNDER DESERT - Atelier de l'Etoile Besançon - 9 Avril 2016 from Eryck Abecassis on Vimeo.


モジュラーシンセソロ。むちゃくちゃカッコいい。
francisco meirinoとかに近い使い方という印象



SAFETY FIRST - Festival Reims Scènes d'Europe - 30/11/2013 Comédie de Reims - excerpt1 from Eryck Abecassis on Vimeo.


ノイズ・オペラ。プログレ



巨大なアンサンブルをモジュールのように切り分けて広い会場の様々な場所に配置して演奏させているんだけど、全体としてひとつの音楽でありながら、移動するに従って聴こえている音の響きがどんどん変わっていくという面白い試み
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