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Benjamin Nelson 『First』 Tasos Stamou 『Koura』

最近タブレットを買って、電子書籍を導入した。
本なり漫画が生活スペースを激しく侵してくるっていうのを前から思ってて、電子書籍自体もリリースのタイムラグも減り出る量自体も増え便利になってきたな…というのもあり。
物理スペースでいうなら音楽のほうが全然問題だろうという説もありますけど、これは多分電子化は一番最後になるかな。
なんか自分の場合、音楽が入ってる媒体そのものとか、物理的に音楽が積み上がってるのが好きというのもあって。
あとはインディーズレーベルも続々バンドキャンプ始めてるとはいえまだ物理でしか手に入らないものが多すぎるというのもある。

そんな感じで折角導入したので電子書籍いろいろ見てたら結構おもしろいやつありました。
忌録』という本で、心霊ルポという体裁のものなんだけど、内容が電子書籍ならではで…。
ひとつの読み物として構成される以前の一次資料…取材メモ、画像、メールログ、ブログ、動画リンク等が詰め込まれている。
それらから勿論オカルト的な物語を読み込むことはできるんだけど、ちょっとそれを保留して、資料を並べ替えてみる。
別の解釈を探ってみると、途端に読むのがおもしろくなる。なかなか内容の濃い読書体験をさせてくれる。
ネット怪談以降の感覚を上手に消化してもいて、例えばお馴染みの自己責任系のギミック(閲覧は自己責任でお願いします)を仕込んだ話があるのだが、これは読んでなるほどなと思ったな。
この手のギミックって、話のリアリティに強度がないとうまく駆動しないと考えがちだけど、そうでもないのかなと。やっぱ、踏み絵ってイエスの絵を踏ませたわけじゃない、それは我々からするとちょっと荒唐無稽な話に思えたりもするけど、実際には一番有効な方法だったのかもしれないと。


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最近手に入ったやつで持続音系の二名のアーティストのアルバムがどちらもとても良かったため紹介


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First
今回紹介する二枚はどちらもArt Into Life屋さんで買えるようになっております

ラッセ・マーハウグのレーベルPica Diskからリリースされたタイトル通りのファーストフル。
Benjamin Nelson ベンジャミン・ネルソンは米国メリーランド出身で、現在はノルウェーのオスロに住み活動をしているアーティスト。
音源制作やライヴのほか、サウンドインスタレーションも多く手掛けているようだ。ライヴの際にはモジュラーシンセ中心に、細々としたエレクトロニクスも用いる模様。
今回の作品の内容はというと、恐ろしいことに65分一曲の持続音。

音響彫刻なんて言い方があるけど、そう呼ばれるものでも、大抵の彫刻は動いている。本当にそこに存在しているだけのものっていうのはほぼない。
それは音楽が時間芸術であるゆえのことで、当たり前でもあるのだが、この音楽家は、無謀にもフル一枚目にして、そこに向かって彫りはじめているようだ。
ここに聴かれるサウンドは、信仰めいた意志を感じる程、禁欲的、スタティックであり、ただそこで放たれ続ける。カルロス・ジッフォーニあたりのサウンドに近いものも感じるが、比べるとこちらのほうが音に具体的な芯を設けていないように感じる。動いていない。
彫刻は動かないから、その鑑賞にあたっては、鑑賞者が周囲を動くことになる。これもそれで、楽曲に展開をもたらす前のフランシスコ・メイリノがループし続けるような無機質な駆動音はしかし、音量を上げて音に意識を寄せると思いのほかディープだ。
特に低音域において蠕動するくぐもったうねりは、音量を上げる程立ち昇ってきてクラクラするような甘いトリップ感を催させる。
そうやって聴いていて、時間が流れ続けるのに停止している、この特異な感触がいったい何を指向しているのか、分かったように感じられたのは…外でこれを聴いていて、音が終わった瞬間。重なり合った無表情な機械音がほつれるようにしてフェードアウトしていくクライマックス、それまで自分は動き続けていたのに・それだけが停止していた耳からの情報・雑多な環境音が・入れ換わるようにして・耳に流れ込んでくる。

思うに彫刻という停止の芸術の意味はそれなんじゃないか。世界は動いているということ。動いている世界に抗うということ。
音楽をもってそれを行うというのは、相当にねじれた、しかしラディカルなアートであると思える。



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Koura

羊の毛刈りの様子を大型の縦長スリーブに収めた印象的なアートワークのアルバムは、ロンドンベースに活動する実験音楽家Tasos Stamou(名前の読み方が全然わからん)の『Koura』。
Kouraというのはギリシャのクレタ島で伝統的に行われている羊の毛刈りの儀式で、そのときは日がな一日羊の毛を刈ったりするようだ。

アルバムにはそれぞれ20分前後の楽曲が二曲収められていて、"Zither Drone"、"Chord Organ Drone"とこれ以上ないほどシンプルなタイトルがつけられている。
曲の内容もタイトル通りの、それぞれのアコースティックな楽器を用いた持続音…なんだけど、この人はそれらの素材を自作のエレクトロニクスのシステムの中に組み込んで、何とも独特な響きのドローンを生成する。
ちなみにそのシステムはラップトップのようなスマートなものでなくて、細かなアナログ機器が雑然と絡み合ったようなプリミティヴなものだ。

それらの機材からするとちょっと意外なほど、繊細で音楽的で、重層的な構造を持った音楽らしい音楽を聴かせてくるのが面白い所。
"Zither Drone"ではタイトルにもなっているツィター(ヨーロッパで用いられる琴の一種で、小ぶりながら30~40本もの弦をもつ)のものと思われるつま弾くアコースティック弦のアルペジオと、それからアタックを奪って溶解させたようなドロドロの持続音が重なり合って波打っていく。この波のように変化する持続音と上のわりと明瞭な弦のサウンドがそれぞれゆったりと変化していくというのがこの曲。
ドローンは過剰に濁ることなく重たくも心地いい響きを保って、弦はときにピアノの内部奏法のような響き、あるいはエフェクトされた電子音のような音まで伴い、ゆっくりではあるけど終始変化している。
続く"Chord Organ Drone"はいわゆるオルガン・ドローンで、よりシンプルな持続系のサウンド。なんだけども、困ったことにこれが結構普通にいい曲でもあったりする。アンビエントというほど透明な音楽ではないけど、ドローンとしてはなかなか豊かな表情を持っている。
延々なり続けるオルガンのトーンがそれなりに計算されたような響きでもって重なっていき、サイケデリックで上昇感のある音響のヴェールを作り出す。巨大な氷塊を抱いくつも抱えた流氷が大きな川を流れていて、それをスローモーションで眺めている。そんなイメージ。
中盤には電子加工されて少しひび割れたようなトーンも加わり、この手の曲としては珍しいほど色彩豊かに迫ってくる音の壁。

ネルソンの音源もこちらも持続音系の作品ではあるけど、真逆なような印象を与えてくるのが面白いなと。
方や長尺一曲のストイックな音響一発勝負、方や聴きやすい尺×二曲で豊かな響きを持った器用な音。
で、どっちもいいな、ってか、気持ちいい、こういう音やっぱ好きだなオレはって思いました。


続きにライヴ映像など




ネルソンは映像見つからなかったのでサンクラのサンプルを置いとく



tasos stamou 後半は他の演奏者とのコラボの様子などもあり


ガラクタ演奏名人アダム・ボーマンとの共演も面白い
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