サンボマスター

『エブリバディ・ウォンツ・サム!!』という映画を観たんだけど、これに限らず、リンクレイターという監督は時間をどう扱うかというところに特徴があって。
一晩一緒に歩きながら交わされるとりとめのない会話に男女の関係の様々なフェーズを凝縮して見せたサンセットシリーズであり、12年間の物語を実際に12年使って撮影した6才ボクであり…。
今回もそういった形で、この人が青春映画を撮ったらどうなるかというと…大学野球部の話なのだけど、寮に入ってから大学の授業が始まるまでの空白の3日間、で、最初の授業が始まった瞬間に映画が終了するという。そこに大学生活を凝縮するのかという。
そして全体としては何もない平凡な物語の中に、バラバラの輝く破片のようなエピソード。バカ明るいが切なくもあるうたかたの夢の日々。「今を楽しめ。長くは続かないから」、「人生の終わりに後悔するのは、やらかしたことじゃなくてやり残したこと」。
主人公が毎晩パーティーに繰り出すのだが、カントリー酒場であったりクラブであったりパンクのライブであったり、毎日違うジャンルってのが何かとても良かったな。

あと『この世界の片隅に』。
なんか『君の名は。』がCGギラッギラのピカピカに磨き上げたようなシャープで高解像度な映像だったり『聲の形』がアニメ的にありがちな画づくり徹底的に避けて異様に凝りまくったレイアウトや映画的な隠喩の絵を多用してたりってのを思い出して、それに比べるとこの映画は神作画とか目を見張るような演出とかはないんだよね。
むしろぎこちなかったりもどかしかったりするんだけど、その代わりにアニメのアニメたる、アニメート=命を吹き込むような脈動する生命感が満ちているなと。吹かれた花の種子が散る前にちょっとしぼんでふわあっと広がったりとか、そういう呼吸が気持ちいい。
あとは終始喋ってるのんの演技がすごくて、やっぱ映画はある面役者のものであるなあとか、最初でかかる曲、これはずるいなあ、とか色々思って…劇伴に合わせて演奏するように料理するシーンも良かったなあ。一番好きなのは遊郭のシーンかな。
質素ではあるけど、ああアニメだな、アニメの良さだな、っていう映画だったなあと。


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最初の三枚は実家にある


10年くらい前にサンボマスターのライブを見に行ったとき、あれは3枚目が出た時だから勿論ワンマンでもうかなり人気があったように思うけど、会場に入って驚いた。ステージの上は真っ白であり、アンプとドラムセットとマイクスタンドくらいしか置いてない。
ライブはそのまま始まり、かなりの長丁場のステージだったように思うけど、その間、舞台の上にはバンドと音楽だけだった。

サンボマスターの音楽の中で最も好きな瞬間は、例えば次のような箇所だ。4カウントのハイハットと単一のコードを刻むだけのギターに被せてギター・ヴォーカル山口が喋り始める、僕が今から歌う歌は、"21世紀少年少女"っていう歌なんです、深く息を吸ってだしぬけに絶叫する、アイラブユー、ベイビ、ベイベー、もう一度絶叫するアイラブユー、ベーベ、ベーベ、ベイビベイビベイベー。
サンボマスターにおいてアイラブユーという言葉は叫ばれる。何度も絶叫される。

サンボマスターは何度も同じフレーズやモチーフ、言いまわしを使う。たぶん言いたいことはそんなに多くはない。ただその少ないことを何度も何度も言いたいのだろうという気がする。好きなのは次のようなフレーズ。

"かける言葉なくすほど君が美しいから 何にもコワくなくなったよ"

"誰もが目をそむけて キミのことさびしさでいっぱいにしたろ?
誰にもこれ以上 そんな事はさせないから 僕に少しだけ笑ってくれよ"

"いつかは死ぬと決まっても あなたの事忘れられないの"

その叫びたいことっていうのはやっぱりアイラブユーということであって、しかもそれは疑いなくこの世で一番強いものとなって、死の虚無をすら打ち負かす。

サンボマスターの演奏が好きだ。
特に『きみのためにつよくなりたい』というアルバムが好きで、このアルバムはセルフプロデュースで学生の頃から使っていたスタジオに機材を持ち込み、マイクスタンドから自分たちで立て、演奏はほぼワンテイクで収録、全体のオケを2日で録り終えたとの事。
それで充分というか、それが最高の形と思える。直してなくて足してなくて無駄なものがない。
ドラムがすごく良い。目いっぱい詰め込んだようなバタバタした演奏はカッコよくはないけど好きな演奏スタイルだ。
ベースの余分な弦まで掻いてしまうような腕ずくの演奏が好きだ。
粗暴さの合間に甘いトーンでソロにおいてはジャズ的でありでも最終的には感情に任せてしまうギターが好きだ。
声が好きだ。
"Oh ベイビー"という曲の二番頭のところで、ギターの弦がビリビリとビビって擦れるノイズがしっかり入っている。そういうところが好きだ。
"二人ぼっちの世界"でのひび割れて歪んで潰れてノイズまみれの音が好きだ。"絶望と欲望と男の子と女の子"のベースがでかすぎてモワモワと閉塞したまま爆発するような音が好きだ。

サンボマスターのゴリゴリの音の合間からどうしても溢れ出す甘すぎるメロディが好きだ。

サンボマスターの音楽はたまにソウルであったりヒップホップであったり打ち込みロックであったりするのだが、そういう時いつもどこかうまく出来てなくて、それをめちゃくちゃ演奏したりひたすら叫ぶことによって何とか埋めようとするようなところが好きだ。
演奏のポテンシャルは高いのに別のかたちに合わせることはうまくない。でもサンボマスターのやり方で演奏されていることに比べたらそれはあまり重要なことじゃない。
そしていつも結局ほとんどは笑ってしまうくらい愚直なギターロックなのだ。

サンボマスターは律儀にもアルバムに馴染むようシングル曲をリアレンジして収録する、そのアレンジが好きだ。
たいていの場合、シングルヴァージョンの時点であった余分な装飾が落とされてシンプルなサウンドになっている。
そっちのほうが何倍も楽曲が煌めいている。
MVなんかもいつも余分に感じる。それほど楽曲の強度が強い。

『サンボマスターとキミ』までの中で好きな曲11曲(10曲にしようと思ったんだけどこれ以上はどうしても減らんくなってしまった)。
"さよならベイビー"
"二人ぼっちの世界"
"絶望と欲望と男の子と女の子"
"心音風景"
"君を守って 君を愛して(きみのためにつよくなりたいバージョン)"
"僕の好きな君に"
"きみはともしび"
"very special!!(アルバムバージョン)"
"21世紀少年少女"
"生きたがり"
"私をライブに連れてって"


サンボマスターのルックスが勿論好きだ。


今日、やっと去年出た現時点での最新アルバムの『サンボマスターとキミ』を聴いたんだけど、やや抑え目な『ロックンロールイズノットデッド』、様々な方法論を試している『終わらないミラクルの予感アルバム』から迷いが晴れたような、ストレートにギター鳴りまくり叫びまくりの、それでいて解放感もあり、メリハリの効いたアレンジのすばらしい内容だった。
ラストの"私をライブに連れてって"はこう締めくくられる。

"今夜は宇宙征服するくらい踊ってやる 征服した宇宙はキミがもらってよ"
"どんなにクソみたいな日々が続いても
ダンスフロアは僕の革命を信じている
これ以上かなしみが 続かないように 世界中を爆音で祝福しておくれよ
わたしをライブにつれてって"

基本的に歌いたいことが最初から何も変わってない、15年それを続けていて、サンボマスターを最初聴いたときからたまにはそれがよく分からなくなったこともあったんだけど、結局今は大体が単純明快な正解みたいに思える。
いいバンドだな。
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