John Wiese 『Escaped Language』 Sissy Spacek 『Slow Move』 White Gold 『White Gold 2』

最近いろいろ観た中で是非観てもらいたい映画は二本あって、まず『女神の見えざる手』。
アメリカで銃規制法案を通すという無茶を打つ女性ロビイストの話。
と聞くとウェットである種政治的なメッセージを含んだ内容を想像するんだけど(この前の最悪の乱射事件もあり)、実際にはきわめてソリッドかつロジカルな知的闘争の話になっている。情報の密度と速度が凄まじくはじめは圧倒されるものの、段々意識がそこにチューニングされてきて気持ちよくなってくるという映画体験。
銃規制という、今の(アメリカ)社会にあって正しい事なんだけどにもかかわらずどうしても通らないこと、それを通すためにあらゆるダーティな手段…敵の急所を容赦なく打ち、味方をすら欺き、自分自身を壊し…ということが描かれるバランス感覚。主人公がもう本当に人間としては壊れているんだけど、その為にある局面において人間離れした強さを発揮する。
ロジックで戦う女性としてジェシカ・チャスティンの磨き抜かれた鉄仮面のような美貌のマッチさも凄いし、マックス・リヒターの基本ミニマル/ドローンでありつつある一点だけに起伏を温存した音楽使いも素晴らしく。

もう一本『ソニータ』。
イランの女性監督の撮ったドキュメンタリーで、アフガンからイランへ戦火を逃れてきた難民の18歳の少女ソニータを撮っている。
ソニータはラッパーになりたいのだが、家賃もスタジオ代も払えず、女が歌を歌うなんて駄目だと言われ、挙句実の親から結納金目当てで嫁にと売りに出されそうになる。
まあそういう単に意識の高いだけの映画なら大して面白いとも思わないが、この映画の凄いところは、映画が進むにつれある種ドキュメンタリーの限界を超えていくような展開を見せるところにある。
通常、被写体の現実のありのままの姿を捉えることが、客観性が常に確保されていることが、ドキュメンタリーの条件だと考えられている。ところがこの映画の監督は、(スタッフと客観性についての議論をしながらも)ソニータのあまりの境遇にキレてしまい、積極的に彼女の人生に介入していくことになる。
掟破りだがスリリングでしかも実に痛快なものがある。つまり、映画は世界を変えられる。現実を変えられる。
ソニータのラップの切れ味も鋭く抉ってくるもののある内容ですばらしい。


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今回はJohn Wiese ジョン・ウィーズ関連新作三枚を。


個人名義新作はライヴ盤片面LP。
20分1トラック、昨年のパリでのパフォーマンスを収めたもの。
以前の来日の際にもこうしたセットで演奏していたけど、内容はアルバム『Deviate From Balance』を凝縮してひとつの流れの中に封じ込めたようなものになっている。
アンビエント~金属質なドローン~物理音っぽいコラージュ~テープをめちゃくちゃに切り刻んだようなスピードの早いノイズとかなり幅の広い展開を見せつつ、全体のトーンとしては、ああ、これはウィーズだな、と思わせる一貫性がある。
近年に至ってこの人は本当に他の誰にも似ていない自分のサウンドというものの強度を上げきるとこまで上げたよなと感じる。
最早それは単純にノイズと言い表せるものではないような、むしろその棚に収めたときにこぼれ落ちてしまうものが沢山あるような…しかし同時に通常の音楽から絶えず疎外されているようなもの、ノイズ、と表現せざるを得ないものでもあって、つまりはノイズを内側から食い破って拡張するような音。
言葉本来の意味でのノイズ、つまり外-音楽、言葉で括ろうとしたときに逃れていくもの。だからこれはエスケイプド・ランゲージと名付けられているのではないだろうか?


DSC_0016.jpg

Sissy Spacek 『Slow Move』
White Gold 『White Gold 2』
この二枚は同じもののふたつの側面と捉えていいと思う。
ホワイト・ゴールドというのはウィーズとPhil Blankenship フィル・ブランケンシップ = Cherry Point チェリー・ポイントのノイズユニットで、また今回のシシー・スペイセックの編成は近年のウィーズ/ムンマにブランケンシップが加わったものとなっているので。
シシー・スペイセックのほうはこの名義らしく毛羽立ちまくったロウな音質で荒ぶるノイズで、今回はエレクトロニクス中心に制作されているのか、洪水のような雑音と叩き付けるメタルジャンクのバキバキのサウンドをぶちまけたもの。
ホワイト・ゴールドはもっとラディカルなハーシュノイズ。ライヴ音源とスタジオ音源の2曲で構成されていて各20分ほどの長さ。
軋むような物理音を多用する硬めのノイズというのがこの二人の共通項で、このユニットもまさにそういう音になっている。様々な音が攪拌されているのが聴き取れる内容で、多層的な音作りの巧妙さはさすがといったところ。
と書いてみたものの二作ともかなりハードなノイズであることには間違いなく、ある意味こういうユニットのところでゴリゴリな表現をしているからこそ個人名義ではもっとディープで繊細な音になっているのかなという気もする。
この音の幅自体がウィーズの今のアーティストとしての充実ぶりを表していると言いますか。







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