Bruce Russell 『Metallic OK』 Siavash Amini 『TAR』 Bill Orcutt 『Why Four Strings?』

最近話題になっている3Dプリンターでお手軽に作れる安楽死マシン、なかなか哲学的な問いを投げかけてくるなあと思っていて。
これの奇妙さは、電気椅子と並べた時に際立ってくる。
刑務所は、圧倒的に低コストで、特別な技術を必要とせず、苦しみのない死をもたらす(らしい)この機材を導入するべきだろうか?
するべきでないというなら、死刑は苦しみの為に行われる…ある種の拷問であるということだろうか?
例えばこれを導入することで「死刑になりたくてやった」タイプの犯罪が増えるというような仮定をしつつも、他方で死刑は拷問であるべきではないというなら、それの存置を支持するのはとても難しくなるように思える。

もうひとつの面白いところはこの機械への抵抗感。ボタンひとつで生命活動を終わらせることへの。
このことは我々が、たとえそれが不必要どころか非効率的だとしても、「生命を取り扱うことは訓練を積んだプロによって何重ものプロセスを経て行われるべきだ」という、宗教めいた…いや、これはもう、はっきりと儀式と言ってしまってもいい気がする。
科学が発展すればするほど、生命を扱うことはもっとプリミティヴで宗教的なものになっていく。
医者や軍人や、あるいは猟奇殺人鬼というものは、すでにぽっかりと空洞になってしまったそれに物語を充填してくれる司祭なんじゃないだろうか?
ロボットが高齢者を介護したり、ドローンでテロリストを殺害することへの抵抗感も同じことなのだろうな。
子どもはセックスによってのみつくられるべきか?同性婚は間違っていると相も変わらず主張するのだろうか?
今回の安楽死マシンはわりとはっきり見える形で現れたそういう分水嶺のひとつの形なのかもと思っている。


あとそういえば最近、2017年のホラーコンテンツを語るうえでこれに触れないのは如何なものか?というお叱りを受けまして、ようやくバイオハザード7やりました。これを機にVR環境も導入して。
いやこれは素晴らしい!悪魔のいけにえVRという体験(まずこれはホラーオタクの夢じゃないですか)を土台にしつつ、死霊のはらわた~ブレアウィッチまでのホラー名作オマージュのフルコース。
探索パートは本当に恐ろしい。VRスゴいなと思ったのが、暗闇が深いのよね。画面の中の闇ってやっぱ言っても黒ベタの平面ではあるんだけど、ちゃんと奥行きのある闇。それって、こんなにも足を踏み入れることを躊躇させるものなんだ、っていう。
それでボス戦となる殺人一家との戦いは一転して一家の振り切れた(チャーミングですらある)キャラクターとシチュエーションのハチャメチャさでメチャ楽しい。このボス戦というのは近作の4~6のバイオでも僕はかなり好きなところで。その空気を継いでるなと。
それで全体はギュッとタイトに、ひとつの邸宅の敷地内に収まっている。ホラーエンタテインメントとして究極の楽しさと怖さを同居させながら、しっかり芯が通っているのですよね。
ホント傑作だと思いますよこれは。


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そんな感じで…もう書くこと書いたなって気持ちになっているのですが…


Bruce Russell 『Metallic OK』

ジャケの解像度が低くてなんか笑ってしまうアルバム
アマゾンで物理でも買える。

グラス・リダックスから今年の秋にひっそり出ていたのはDead C デッド・Cのギタリストブルース・ラッセルのソロ二枚組。
10分~20分ある長いライヴテイク中心に7トラック入っている。
まーこのおじさんも相当困った人なんでとりあえず映像を先に

デッドCよりも更に奔放でメチャクチャなギター。
ライヴトラックに関してはこんな感じなのだが、他に入っているのもギターとアンプ利用したホワイトノイズやフィードバックなどトーンとしては一貫している。
面白いのはどのトラックもデッドCまんまのロウでゴリゴリなサウンドクオリティで録られていることかな。
好きな人向けと思うが演奏内容自体は濃い。
2枚目の最後に入っている"Excerpt from 'Motorboating'"なる21分のトラックが格別に素晴らしい。
デッドC以外の参加作など聴くと特に思わされるが、ギターノイズの制御ということにずっと取り組み続けてきた人ではあるんだよな。


Siavash Amini 『TAR』

物理はライナス屋さんで買えます

個人的にはStrotter inst.のヘヴィな二枚組LPが印象深かったハロウ・グラウンドより出ていた一枚。
このSiavash Aminiという人は今回初めて名前を聴いて、読めないしどこの人だろう?と思ったらイランの人らしい。
イランっつったらこの前観たソニータだなぁ…と思いながら聴いてみると実験音楽としてのクオリティの高さに驚愕。
やっぱわりとこういうものはボーダレスというか、ポッと出的に凄い人が出てくるという感じですかね。
12分、8分、5分、13分と聴き易い4トラック構成。
クラシックのほうをルーツに持つ音楽家とのことだけど、音は濃密で多彩な表情を見せるドローン。
弦楽隊、コーラス、もっとエスニックなアラブ系の音楽、テクノ…といったものが、形が分かる程度の大きさに切られて混ぜ合わせてある。
多様で混沌とした素材の味わいをすべて溶かさずにゴロゴロ残した音響作品という感じか。
美しいチェンバードローンをブリブリの電子低音ベースが蹂躙するようなエグい展開もあり油断できない。
ボーダレスとは書いたが自分の普段聴いてる電子音楽のところからは出てこないような、それこそ中東風なんていうとあらびきすぎるけど、今まで食べたことのない味ではある。
聴きながらゲーム『スペック・オプス:ザ・ライン』や映画の『アメリカン・スナイパー』の砂嵐のシーンを思い出していた。
そこでは砂嵐が現実と幻想を隔てるゲートの役割を果たしていたのだ。


Bill Orcutt 『Why Four Strings?』

最後は今回のチョイスからは少し浮くのだが是非紹介したいのでここで。
お馴染み僕のメチャ推しギタリストのビル・オーカットの09年から17年に至るまでのレア音源のコレクション。
たぶんバンドキャンプ限定リリース。
雑多にしてテンコ盛りの22曲入り。
アコースティックでいつものキレキレなハードコアブルーズをカマすトラックからノイズ的な実験トラックまで、サウンドクオリティ等も含めまるで統一感のない内容ではある。けど、この人だとそれは然程嫌じゃない。
冒頭のロンリー・ウーマンの激シブでクッソカッコいい演奏と、続く"Why Does Everybody Love Free Music But Nobody Loves Free People?"というトラックの激烈なノイズと絶叫のコントラスト。
彼がギターヴォーカルを務めるノイズロックバンドHurry Pussyによる"Nazi USA"のライヴテイクなど意外なチョイスもあり。
イ・オッキョンなどとのセッション音源もあり。
とにかく幅広すぎるので何と表現したらいいか…という感じではあるけど、どれも素晴らしい内容。
自分の中でのベストトラックというか、聴けて嬉しかったのはムーン・リヴァーの演奏かな。
ザ・名曲なのだが、この人の演奏しているものは初めて聴いた。
荒々しい手つきで、しかし慈しむ様にして、曲の持つ最も美しい表情を引き出して見せる、"いつも通りの"、またとない最高の音楽。



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