アイ、トーニャ、君の名前で僕を呼んで、モリ―ズ・ゲーム、孤狼の血、フロリダ・プロジェクト

本日の昼食にと購入したシーザーサラダに入っていたのがクルトンでなく「焼いてもない普通のパンを小さなダイス状にカットしたもの」だったので少し気落ちしています。
先月末あたりから観たい映画がドッと公開されてきていて、これがまたどれも面白い。その話を。


アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル
当たり続きのアスリート/スポーツ絡みの実話もの。
アメリカ女子フィギュアスケート史上初めてのトリプルアクセルをキメたトーニャ・ハーディングの物語。
DQNプリンセスとでも呼びたい(まぁ本人はこの若さで自身のプロダクションも運営してたり知性派なのだが)独特のキャラクターを確立しているマーゴット・ロビーが演じている。
てか初めて知ったのだが、世界で初めてトリプルアクセルをやった選手って日本人なのですね。スポーツに疎いもので全然知らず。
で、このトーニャの話。
これがムチャクチャ面白い。いや、ムチャクチャすぎて面白い。
フィギュアって華美をきわめた世界のように思えるけど、この人は貧乏な田舎娘で、ただ子供の頃から圧倒的な才能がある。
その一方で立ち振る舞いとか言動で審査する側からの心証がめちゃくちゃ悪いと。
まずね、フィギュアの選手ってリンク外での待機時間に毛皮のコートを着たりしてるけど、あれがカネなくて買えないんで、自作するってエピソードが出てくる。
家の近所の森に狩りに行って、自分でサバいたウサギの皮使ってコートを作るというアマゾネスぶり。演技のときの衣装もずっと自作。
他にも、学がなくてクラシックを全然知らないんで、ハードロックのZZトップを自由曲にして踊るとかね。
言葉遣いも凄くて、とにかくもうこんなにFワードを乱射する映画ってそうそう無いよという感じ。F五段活用かよという勢い。
で、まあサブタイトルの通り、ある事件をきっかけにこの人はアメリカアスリート界最大のヒールへと転じていくわけなのだが…。
「アメリカって国は、大切な仲間と憎むべき敵を必要としてるの」。
それがあたしよ。
ただ、この言葉の裏側にあったものが透けてくるから人間の悲しさの話にもなっている。
暴力母と暴力夫の間で、何を願っていたか?っていう。
でもそれだけじゃない。
クライマックスに待つ展開はただ突拍子もないとしか言い様がないのだが、だから実話って凄いんだよね。
こんなんムチャクチャでしょ、って言われても、いや、これが事実ですから、って話だからさ。そこに至って話の印象も人間の強さというところに転じてくる。
ブラックで破天荒、キレッキレの編集と第四の壁もぶっ叩くような演出の妙味でグルーヴする何ともロックな映画。


君の名前で僕を呼んで
この映画、観るのに結構苦労して。
最初は朝イチの回で映画館に行くと予約で満席。
観られた回も満席で。パンフも売切れてて、公開館数が突然拡大したりもしていて、想定外のヒットだったのかなというのを感じさせる。
観てみると、とても普遍的な青春映画というか。もうクラシックな手法を丁寧に洗い直してるなという感じ。
『リズと青い鳥』にしろ、これにしろ、そういう特別視ということじゃなくて、普遍的な話として語ろうっていう優しい目線が良いよね。
で、途中に出てくるユダヤの星のエピソード辺りからも察せられるけど、このタイトルの意味。
きみは美しい、っていう事に対して、こう応答することの意味はシンプルで。
きみはきみを見くびらないで。貶めないで。
サンボマスターの"ビューティフル"って曲は"君が安らかに夜を過ごすそんな日が来たなら / それこそ願いが 僕の願いがかなう日なのさ"と始まって、"いったい誰が何のために / 君のこと苦しめるこんな時代を作ったの"と嘆きながらも、僕は必ず君のもとに駆けつけるから、と言って、こう続ける。"だからもう信じておくれ/君が美しいってこと"。
それだよね。この言葉の意味は。
終盤のお父さんが主人公に向けて語り掛ける内容も素晴らしくて。感情を祝福しようっていう。
ラストはとても印象的な長回しで終わる。これがまた良い。


モリ―ズ・ゲーム
こちらもアスリート実話ものの亜種と言えるのかな。
オリンピックに王手を賭けたモーグル選手が事故で滑れなくなるのだが、それをきっかけにこの人は別方向のとんでもない才覚を顕していく。
なんとポーカーの裏賭場のオーナーとして超金持ちのセレブ相手に勝負しながらのし上がっていくという話。
早いテンポで凄まじい情報量を流し込んでくる語り口(主人公のモリー・ブルームは全編に渡って早口でナレーションを喋り続ける)、モリーの弁護士を演じるイドリス・エルバや父親のケビン・コスナーといった脇を支える名優の演技にも圧倒されるのだが、何と言ってもモリーその人を演じるジェシカ・チャスティン。
美術館とか世界遺産とか、美しいものにお金を払うのなら、この人を二時間スクリーンで鑑賞させて頂く為に今1800円払うというのはちょっと安すぎるようにすら思う。
作中で言い寄ってくる男を片っ端から振っていくのだが、そのときにこう言う。
キルケーって知ってる?
酒と蜜で男を騙して豚に変える女神のことだよ、と。


孤狼の血
ある意味4DX感を味わえるのでは?と思い歌舞伎町の劇場に行ったのだが、当局の介入があったのか(?)まさかの公開なし。仕方なく近い新宿バルト9で鑑賞。
前々作『彼女がその名を知らない鳥たち』は素晴らしかったものの前作『サニー/32』は(多作過ぎなこともあるし)少し休んだほうがいいんじゃないかな…思わせる出来になってしまっていた白石和彌監督、本作ではやってくれた。
映像が入る前の音の導入がまず、豚小屋にひしめく豚の鳴き声。むせ返るような空気すら伝える生々しいその音に先導されて入って来る異常なバイオレンスシーンにのっけから圧倒される。
あえてガサついた質感に仕上げた映像の切れ味も鋭い。
邦画の強みである役者の力を十二分に使って、各アクトが素晴らしい演技を見せている。
大好きな『渇き。』の昭和おじさん直系のブチギレモードの役所さんは勿論最高。
松坂桃李の凄さは本作で初めて気づいた。最初と最後で顔つきも歩き方も目も全く変わる。この人の、リズと青い鳥ならぬサツの青い犬が豚の糞の中這い回りながら黒い狼に変わるようなシーンは本作の白眉とも言うべき箇所。
でもこの映画は何と言っても言葉。やっぱり。胸に打ち込まれて熱くなるような血の通った本物の美しい日本語。虹色の罵詈雑言。この映画の脚本を国語の教科書に載せて欲しい。ここまで会話が気持ちいいと思った邦画は久々。
ナレーションまでいくと演出はやり過ぎの感もあるのだが、とにかく今年スクリーンで観ている邦画の中ではぶっちぎりに気炎を吐いている映画のように思う。
トレーニング・デイでもありセッションでもある。
R15だけど15歳になったみんなにまずこれを観てほしいと思う。
こういう、映画館を出た次の一歩目から歩き方も変わるような映画がいいよ。


フロリダ・プロジェクト
フロリダのディズニーワールドの外周に広がっている地域が舞台になっている。
そこは夢の残滓が漏れ出すようにしてド派手なパステルカラーの店やモーテルが立ち並んでいるのだが、そのモーテル群には、サブプライムのあおりを受けて家を失った最底辺の人々があえぐようにして暮らしている。
そんな夢の国と現実の荒野の重ね合わせになった上で生きる母娘の話。
6歳の娘の方の目線が主になっていて、彼女を追うカメラの目線は低く眼差しは優しい。映画のトーンは基本的にポップでファンタジックな色合いだけど、それだけに時折覗く容赦ない現実が苦しい。それでも母親やモーテルの支配人は子供に楽しい世界を見せようと四苦八苦していて、それが観ているこちらには伝わってくる。終盤、そんな母親の側に視点がうつるシーンがある。この人が見ていたのはこれだけだった、という、意外なでも当たり前なそのことに胸を突かれる。
そしてラスト。
このラストはゲリラ撮影になっているのだが、それだけに本物の奇跡が起きている。二重の意味で夢と現実が重なるような、抱きしめながら打ちのめすような。その地点でこそ…最も美しく映画的なその場面でこそ…映画と現実の境界が越境されているということもまた驚異的だ。
このラストシーンとそこに至る流れにはただ圧倒される。
幾ら言葉を重ねてもその時に感じたことの芯を捉えられている気がしないのだけど、だから映画って映画なんだろうな。

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