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最近読んで面白かった本

最近ってか昨年末くらいからの感じだが…


『人はなぜ宇宙人に誘拐されるのか?』 エリエザー・J・スタンバーグ
こんなタイトルだけどオカルトでなく脳研究・神経科学の本。
専門的なところはなく、根気があれば読める。
タイトル通りのアブダクションの話からイメージトレーニングのメカニズム、先天的に盲目の人はどんな夢を見るのか…?等、幅広いトピックに触れながら、意識と無意識、虚偽記憶、脳の奇妙な機能について書いている。
例えば金縛りにあったときに部屋の隅にうずくまる人影が…みたいな話があるけど、そこでなぜ脳が幽霊を要請してくるかっていうことだよね。
この本で述べられているのはある意味不合理で奇妙としか言いようがない理屈なんだけど、結局その合理/非合理みたいな価値判断が実は恣意的なんじゃないか、ってことも考える。
脳について考える本は、迂回しつつもある面で哲学書にならざるを得ないような気がしている。



『第三脳釘怪談』 朱雀門出
ここでは怪談本には触れずにいこうと思っていたけど(キリがなくなるので)、これは書いておこう。
応援したい本だから。
「第三」とある通りシリーズの三冊目になる。前の二冊は紙の本で出ていて、これは著者の自費出版、電子のみ。
300円という破格。
この人は、現代怪談の書き手の頂点の一角だと思っている。
自分の中で、我妻俊樹さんや黒史郎さんに並んで好きな作家さん。
なにか怪談大好きというとおばけ好きなのかと思われるけど、自分の場合、おばけ、幽霊というものに特別な興味はなくて。
説明のつかないこと、世界の歪んだ断面、あるいは、「おばけ」「幽霊」みたいな言葉で切り取られているものの属する全体を想像したときに、その「おばけ好き」の人によって「切り捨てられている部分」のほう、名前のついていない煮凝りのような、茫としたものの中にこそ面白いものがあると信じる。
上で挙げた三名の作家の描いてきているのって、まさにそういうものたちで。
「おばけ」を扱うという話になっても、その枠のない視点から話を掬いあげることで、独特の手触りになっている。
この本に収録されている怪談のタイトルは、"変態するヒトの話"、"ジムル波"、"俺の地獄"、などなど。
内容に触れるなら、「子どもの頃エレベーターの中に身体を折り曲げたサイが詰まっていたのを見た話」とか「まわりに何もない寂れた道路の脇に設置されている、タツノオトシゴを販売している自販機の話」とか。
どうですか?読みたくなりませんか?

同著者の『忌田の枝足』は短編連作の小説で、こちらも生物学的アプローチで語る怪談という実に面白い試み。おすすめ。


『ぽつん風俗に行ってきた!』 子門仁
タイトルの通りで、ベテランライターの著者が「なぜこんな場所に?」という立地の風俗店を訪れていく。
アマゾンレビューにあったけど「風俗版 孤独のグ〇メ」というのが一番簡潔な説明になるように思う。
この手のものってあまり文章が良くないような偏見があるけど、これは実に端正で読みやすい。
アプローチも独特で、風俗店というものを多面的に捉える視点が面白い。
なぜそこに風俗があるか、という点は、地史学的な、アースダイバー的な視線から見えてくるものがあったり。
そうして歴史を知れば、一見突拍子のないように見える奇妙なロケーションの風俗店が、どこか奥行きを持って見えてくる。
必然、僻地のようなところも多く訪れることになり、不思議な旅情もあったり。
ちょっと、いや、かなり変わった旅ルポエッセイとしても実に趣深い一冊。



『昼休み、またピンクサロンに走り出していた』 素童
一見青春小説のように見えるタイトルだけど、よく読むと違うと分かる。よく読まなくても分かる。
いわゆる風俗レポだけど、この著者の文章力には目を見張るものがある。
読んでる間中笑いのツボを痛打され、胸が苦しくなった。
デリヘル店のホームページの嬢の紹介文を自然言語解析ソフトで研究し、その成果をサイトで発表したところタモリ倶楽部に呼ばれて今回の本へと繋がった…っていう著者の経歴に何か感じ入るものがあれば読んでみると良いかと。



『社会学史』 大澤真幸
タイトルから想像する内容だと、たんに教科書的なそれというか、年表があって、順に説明…みたいな。
この本は全くそうなっていなくて、思想と理論を系譜立てて説明する。つまり、この思想とこの思想はこのように繋がっている、という、有機的な接続で思考を刺激するような構成を取っている。
そこに著者の近年の関心、偶有性、資本主義、歴史記述の恣意性、など…を大胆に絡ませた読解を展開する、独特の内容になっている。
ある種、主観的な歴史の捉え方ともいえるけど、だからこそ自分は面白く読めたし、スルスルと入ってくるように感じた。
全体を読み通してみると大きく輪を描くような歴史観を構成しているというのも面白いところで、それって何かヴィルヌーヴの『メッセージ』みたいなんだけど、思えば『革命が過去を救うと猫が言う』のような著者の別著作ではまさにそのような歴史観について述べていた。



『「最前線の映画」を読む』 町山智浩
みんな大好き町山さんの最新映画評集。
2010年代の映画を幅広く取り上げて時代を切り取る、まさに今ここの映画批評集となっている。
特殊なのは、「映画の紹介本」ではないということ。
基本的に、その映画を観たこと前提の解説的批評を集めたものとなっている。
あの描写は、この謎は、どう解釈するのか。
扱っている作品はどれも話題になったものだから、映画館に通い詰めるアクティブな映画好きなら大半は観たことあるはず。
しかしこの人の映画評は読み物として抜群に面白いよな、と改めて思う。
『沈黙 サイレンス』、『イット・フォローズ』の評なんか実にエモーショナル、抒情的でもあって、とくに前者のほうは読んでいて思わず泣いてしまった。



『辺境メシ ヤバそうだから食べてみた』 高野 秀行
さっきまでテレビで「ウルトラハイパーハードボイルドグルメリポート」見ていたんだけど、やっぱ食って面白いね。
つまるところ、生活のかなりの部分ってここから見えてくる。
というわけで本書は、世界中をまわってあらゆるゲテモノを食べてきた著者による「珍食・奇食リポート」。
たとえば、こんな一言が登場する。「脳は、もう飽きた」。
最初のエピソードのタイトルは「ゴリラを食った話」。
虫食系のエピソードはどれも鉄板の面白さ。イタリアのレストランで5年働いたというタイのシェフが作る「虫イタリアン」とか。何してくれるんだよ、っていう。
ソマリ人の大好きな「噛むほど気持ちよくなる草」カートをとにかく食いまくる話など、ヤバいエピソードも次から次へと登場する。
ただただ、ムチャクチャ面白い。
そういえばオレも今までの人生で何度か虫食の経験がある。
カイコ=蛾とか、シロアリ=ゴキブリとかそんな感じ。



『未来のセックス年表 2019-2050年』 坂爪真吾
タイトル通りの思考実験の本。
書いているのは性風俗産業周辺の社会課題解決に取り組むNPOの代表をやっている方。
常に今この社会で起きている問題を出発点にしつつ、テクノロジーや制度がこれからの性愛をどのように変えていくか?ということについて、多様なトピックから検討する。
「パパ活」の行く末、後妻業スレスレの「ジジ活」…だとか、日本で夫婦別姓や同性婚は可能になるか?だとか、VR、ブロックチェーン婚、AIによるマッチングアプリ…。
読んでいて思うのが、性愛という切り口から考えると残酷なほどはっきりするけど、結局いまこの社会って「終わりゆく社会」であって。
よほどの革命が起きない限り、少子高齢化・出生率低下で社会は終わるだろうと。
でもたぶんそれは、性愛が生物機能としてじゃなくて、(もしかしたら「本当に人間らしい」?)完全に快楽のためのそれになるということかもしれなくて。
黄昏ってやつで、たぶんその時間は短いんだけど、なかなか面白い時代になりそうという気もしている。



『ゆるく考える』 東浩紀
おなじみ哲学者のあずまんのエッセイ集。
いくつかのパートに分かれているけど、様々なトピックについて短い文章で綴っている序盤、福島の原発を訪れた際のレポートの終盤が特に面白い。
例えば、育児についてこんなことを書いている。
普段われわれは、「今回ダメなら次の機会に」というような感覚で生きている。
夏に休暇を取れなければ冬に取るし、今年花見に行けなければ来年に行く。
あらゆることに反復可能性…次の機会…があるという前提で生きている。
でも子供は、それは欺瞞だと気付かせる。
三歳の海と四歳の海は違う。小学校の入学式には一度しか出席できない。
人生は短くあらゆる瞬間が唯一のものだということを、子供は思い出させる。
それが子育ての喜びであり辛さでもある、と。



『執念深い貧乏性』 栗原康
これもエッセイ集…ということになるのかな?
著者の栗原さんは政治学者で、専門はアナーキズム。
それだけあって、文章もとにかく破壊的。
酩酊したような独特のグルーヴ感があって、笑うしかないイカれたエピソードもふんだんに仕込まれているのだが、全体通して、権力と自由、支配と被支配、主体性といったことについて、うまいこと思索へ導かれる。
特に好きなのは韓国の大学へシンポジウムで呼ばれた際のエピソード。
友人のDという人が現地にいて、この人もアナーキストなのだが、久しぶりに会ったので、何の仕事で暮らしているのかという意味で"What are you doing?"と訊いた。するとDは答える。
"Nothing."。
ナッシング。すげえ。
このDという人は徴兵制のあとそのまましばらく軍隊に残って特殊部隊に所属していたことがあり、そのおかげでサバイバル能力が異様に高くなったらしい。
家も空き地に勝手に作ったとのこと。
で、この人が今度、山形に映画祭で来るという。手伝ったドキュメンタリー映画が出展されるからと。
で、どこに泊まるのか訊いてみた。
そしたら、こう答えたそうだ。
「土」。


…そんで今は、この本を読んでいる。


『忌み地 怪談社奇聞録』 福澤徹三、糸柳寿昭
お馴染み実話怪談の名手で小説家でもある福澤徹三さんと、実話怪談を題材に怪談ライブを頻繁に行っている「怪談社」の糸柳寿昭さんの本。
怪談社のライブは自分も何度か見ているけど、実に見事な語り。いわゆる稲川的な語りとは異なる、もっと現代的なアプローチの怪談語りというか。
で、この本、面白いのが、実話怪談の取材、というのを題材にしている。
どこに行って・どのような人から・どのように怖い話・不思議な話を聞きだすか。
その取材の過程で、ダークツーリズム×アースダイバーとでもいうのか、土地の暗い・普段語られることのない側面、みたいなものが見えてくる。
怪談を土地というアプローチから考察する、吉田悠軌『怪談現場』シリーズや小野不由美『残穢』あたりと繋げて語れそうな一冊。
めっちゃ面白いっす。


しかしこうしてみると自分は読書に占める小説の割合がかなり少ないというのが分かる。
そっちを掘って良い本を探してみるのもいいかもですね(雑なまとめ)。
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